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101.詩| わたしたちは静かに暮らそう


わたしたちは静かに暮らそう
もう これからは

びっしりと埋まったスケジュールも いらないし
お誕生日だけ盛り上がるコメント欄も いらないし

疲れていて さえないわたしの目の下のくまを
かわいいと思わない恋人だって いらない


コーヒーもちょっと飲みすぎだ
ほんとうは お水だっておいしいし

毎晩おそくまで残業していたけれど
わたしたちは とっとと帰ろう
もう これからは

誰にもなにもいわないで
(せめて「おつかれさま」くらいはね)
さっと軽やかに 明るい足音で去っていく

そしてあまり混んでいない電車に乗って
地元の駅の小さな本屋さんに寄る

ベストセラーの棚のむこうの
むこうのむこうの
そのまたむこうの壁ぎわに
ひっそりとあるコーナーに行く

(すこしほこりっぽい「詩集」や「写真集」があるでしょう?)

字の感じ 絵の感じ 表紙の感じ
そっと持ち上げたときの 手の感じを感じたら
お気に入りの一冊を選んで
うちに帰ろう

いつもより あかりは少なめにともす
音楽も 小さくかける
好きなところに座ったら

本を ぱらぱらとめくってみる

きっとあなたは びっくりする

こんなに静かな夜のすき間に
胸の真ん中から
しゅわしゅわと泡のように湧きあがってくる

静かな なにかに びっくりする

それにいつまでも いつまでも
耳をすませていたくなる

静かな暮らしの中にある
小さな 金色の 泡の音が聴こえたら

それは
自分だけの喜びの音だから


自分だけの静かな暮らしの中にある
金の色 と 泡の音


わたしたちは静かに暮らそう
もう これからは



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