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【レポ】2024年2月17日 中瀬智哉ピアノリサイタル@佐川文庫

2024年2月17日 
佐川文庫 サロンコンサート
~若手ピアニスト・シリーズ~
中瀬智哉 ピアノ・リサイタル

【プログラム】
J.S.バッハ:平均律 第2巻 第2番 BWV871 ハ短調
シューマン:謝肉祭 op.9
ベートーヴェン:ピアノソナタ 第8番 ハ短調「悲愴」
リスト:伝説 S.175 R.17


茨城県水戸市にある佐川文庫さん。
クラシックファンなら一度は訪れたい場所。
図書館も好きな私、いつか行けたらと思っていたら機会がやってきました。

のどかな立地、気品がありながらも敷居の高さを感じさせない、居心地のいい場所。

一番乗りで会場に。

リサイタルのため午後からお休みとのことで、お庭のベンチに座っていたのですが、職員さんが中へ案内してくださいました。

入ると小澤征爾さんが指揮する水戸室内管弦楽団の映像が流れていました。

書架にずらりと並ぶ蔵書の背表紙を見るだけでも心が落ち着きます。楽譜や音楽雑誌なども並び、音楽関係の書籍は見たこともないくらいの数。

庭に向かって並べられたデスクにはひざ掛けも用意され、心遣いにあふれています。

クラシックCDは古いものから最新のものまで、レンタルショップ顔負けのコレクション。

これまで演奏されたかたのサインや写真。中村紘子先生、鈴木弘尚先生、藤田真央くん、他にもたくさん。

木の枝で作ったラフマニノフの手だったりオーケストラだったり、目に入るのは魅力的なものばかり。

近くに住んでたなら毎日でも通いたいくらい贅沢でワクワクする空間。

リサイタル会場となるホールは図書館の裏手。図書館経由でも直接でも会場に入ることが出来ます。

この季節、周辺では梅があちこちで咲いていました。いいお天気。和みます。


リサイタルは去年の5月以来。

個人的にいろいろあったし能登半島地震があったこともあり、無事に聴きに来られてほっとしました。

親密な空間にお客様がぎっしり詰まったホール。

ステージにはスタインウェイと桜と梅。


平均律から始まったリサイタル。

プログラムの最初にバッハがあるのはいいですね。

バッハは心が整えられる感じ。

ざわついた心を穏やかにしてくれます。


シューマン謝肉祭。一音一音が濃く色付けされ、音たちが楽しそう。ストーリーが鮮明に伝わってきます。ささやくように歌う弱音が最高。ピアノが柔らかく響いてくるのは心地いいです。


休憩を挟んでのベートーヴェン悲愴。

約2年前、ハーフリサイタルで聴いて心を奪われた思い入れのある曲。あの時は第1楽章の冒頭で心を掴まれてしまいました。会場の空気が一瞬で変って。

今回のリサイタルでは、中瀬くんが最初の和音を弾いた瞬間、ステージに飾られたお花、花びらが1枚ひらり舞い落ちたそうです。なんてドラマティック。

この曲がプログラムに入ってるのを知り、本当に嬉しくて楽しみで。

特に第2楽章。自分が弾いてることもあり、世界的に有名な方の演奏だったりピアニストによるレッスン動画など、たくさん見ました。

それでもやっぱり中瀬くんの演奏が好きだと再確認。深く心に響きました。

全身から絞り出すように弾く音が心をヒリヒリさせます。

先日の地震のこと、自分のこと、思い巡らせつつ耳に届く音を受け止め、身動きも出来ず、息も出来ず、ただ静かに涙するだけ。

胸がギュッとなったまま、気づいたら第3楽章が終わっていました。

ソナタ8番、またいつか聴きたいって、強く強く思いました。

続くリスト伝説。

第1曲「小鳥に語るアッシジの聖フランチェスコ」

悲愴から世界がガラリと一変します。

美しく繊細に紡がれる高音トリルとトレモロ。
冒頭から惹きつけられます。

ハープのように美しい音。
美しいのは小鳥の声?
それともピアノ?

ステージ上の花の枝に小鳥たちがふわりと降り立ちおしゃべりしている姿が見えました。

中瀬くんの紡ぐ美音が最大限に生かされた曲ではなかったでしょうか。夢と現実の狭間にいるよう。
これもまたどこかで聴けるかな…。


第2曲「波を渡るパオラの聖フランチェスコ」

今度は海へ。
波を表す低音。
冬の荒波。

ここへ来る前に見た日本海が目の前に広がりました。

どこかドビュッシー的なこの2曲。こんな素敵な曲を聴けることをリストに感謝してしまいました。


中瀬くんの挨拶と佐川文庫さんからの花束贈呈のあとはアンコール。

シューマンのアラベスク。

柔らかな音を機織りしているみたい。糸がふわっと絡み合いながら客席を包みこんでくれて、あたたかく穏やかにリサイタルを締めくくりました。


開場の際、入口にはサイン会の告知が。サイン会は初ではないでしょうか?

栞のチケットと同じく、丁寧に作られたプログラムを手に、座席を立ったお客さまたちが次々並んでいました。


またいつか、ここでリサイタルを聴けたら。

もう一度、何処かであの曲を聴けたら。

これから先がもっと楽しみになった今回の公演でした。

佐川文庫さん。あたたかく対応していただき感謝申し上げます。

中瀬くん、素敵な演奏ありがとうございました。

またいつか何処かで。

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