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【お題】クローンでないことの証明


エッセイのテーマを広げるためにお題箱を使うことにしました。

いただいた文章にそって想像を膨らませ、斜にかまえた考えをだらだらと展開したいなあ、っちゅう魂胆です。

正直をさらけ出すと、エッセイのお題を考える脳機能が低下してきたのも理由の1つです。老いですね。

初回はお試しに、無差別に投稿されていたお題を1つ取り上げてみようと思います。


お題

「私はクローンではありません」

と言いたいところですが、たしかに確証はありません。自分の記憶だけでは「クローンではありません」という結論を導くには不十分です。

さて、僕は僕がクローンでないことを確かめられるのでしょうか。


まずは「クローンである」ということはどういうことでしょうか。

学術的な定義はさておき、ここでは「おなじ形質や遺伝情報を有する別の個体がこの世にいる、あるいはいたことがある」と定義します。

主張したいのは「見た目が同じかどうかはクローンかどうかに関係ない」ということです。

ドッペルゲンガーやものまねタレント、たまたま顔が似ている方はクローンに含めません。それらは単なる「そっくりさん」です。福士蒼汰さんと中川大志さんはクローンではありません。

また逆に、クローンが容貌を変えたとしてもその個体は依然としてクローンです。クローン羊のドリーは羊毛を刈られてもやはりクローンです。


では次に、「自分がクローンではないこと」を証明するためにはどんな条件が必要か考えてみます。

定義に照らせば「自分のほかにおなじ形質や遺伝情報を有する個体がいないこと」を証明すればいいはずです。

しかし、これはお察しのとおり超難題です。自分以外の人間の遺伝情報をくまなく調べなければなりません。いわゆる悪魔の証明というものです。

定義でも述べたとおり、見た目からはクローンであるかどうかは判定できません。なので世界中のすべての人間に検査を行い、自分と一致しないことを確かめる必要があります。気が遠くなりますね。

さらにいうと、真偽を証明するには今生きている人間を調べるだけでは不十分です。

漫画「刃牙道」においても、宮本武蔵の没後に彼のクローンが誕生していましたね。いま生きている人たちが自身のクローンでないことがわかっても、自分が歴史の偉人のクローンでないことは証明できません。

ゆえに完璧に証明するには、自分と同じ遺伝情報を持った人間がいなかったことを過去にまでさかのぼって調べる必要があります。

そして調べようにも、亡くなった人の組成がこの世に残っていなければそもそも検査自体ができません。

つまり「自分がクローンでない」ことを厳密に証明することは、残念ながら事実上不可能という結論が導かれます。


と、いうことで「私はクローンでない」ことを立証する術は原理的に存在しないことがわかりました。

私は自分が誰かのクローンではないと信じていますが、それを立証することはできません。これは神の存在に関する議論と構造は同じです。

たとえば「神はいます。ただ神を信じない人間には一切の痕跡を残さないだけなのです。」という主張には反論できません。神様がいないことを立証しようとしても、存在の根拠がないこと自体が先回りして主張に内包されているからです。


まとめると、今回の「クローンの証明」は、「クローンではないということを証明する術が存在しない」という意味で神や霊魂の存在の類いと構造が同じです。

ゆえに私のお題に対する回答はこう。

「あなたが神様の存在を信じているかどうかと同じです」


~FIN~




こんな感じで、お題にたいして思いつきをつらつらと述べてみたいと思っています。どんなお題でも、文章じゃなくて単語ですらよいので、ぜひ投げてみてください。


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