DAY 4
忘れたい人を思い出させる曲

幻/泉まくら

私の人生に忘れたい人なんて1人もいない。
いたらきっともう記憶から消しているから、これから先もずっと思い出すことはない。
だからこの曲は、忘れたい人じゃなくて忘れていた感情を思い出させる曲。

昨日の夏を思い出させる曲で書いた彼は、結婚していて子供もいたから、世間一般でいう交際相手という訳ではない。
常に結婚相手とは別のパートナーがいるような人だった。
もちろん私もそれを知っていて付き合っていたし、その距離感が心地良いとすら思っていた。
付き合い始めは明確に分からなかったのに、別れははっきりとした形でやってくる。
何度か繰り返した別れ話の数回目の頃に、ふと聴いたこの曲にグサグサと容赦なく刺された。

あなたが褒めてくれたすべては あなたが育てた私の心
あなたが叱ったすべては あなたに出会うまでのあやまち

あなたもそう願ってるなんて思えないよ都合よく
呼んでくれたならすぐに行けるのに
知らんぷりで行かないでよ遠く
奪うなら最後まで奪って 私の希望まで全部奪って
あなたなしで かろうじて生きていくなんて

ダメだった部分は叱って、変われた部分は褒めてくれた。
でも突然突き放されてやっと、この人に頼っていたから変われたんだと気が付いてしまった。
人に依存するような体質ではなかったのに、頼ってくれと言われるがままに依存していた自分が怖くなった。
頑張れって言ってくれても、頑張り方は教えてくれなかった。
今までとは違う自分での頑張り方なんて知らないのに。
お互いを分かろうとしてしまったからこそ、絶対に分かり合えないことが分かってしまった。

数年経った今ではもう自分で自分をコントロールできるようになったけれど、当時は常に感情が暴走していた。
今でもこの曲を聴くとなんだか息苦しくなるので未だに聴けず、シャッフルで流れてくるとすぐに飛ばしてしまう。

あの頃と比べて強くなりすぎてしまった今の自分には抱けない感情がこの曲に詰まっている。
それも受け入れられるくらいもっと強くなればこの曲を聴けるようになるだろうか。