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どこで何を間違えたのかなんて分からない【殺人鬼フジコの衝動/真梨幸子】

¦はじめに

なんとなくnoteを見ていたら【 #わたしの本棚 】というタグを見つけたので、ほぼ見切り発車で書いています。

¦殺人鬼フジコの衝動【真梨幸子/徳間文庫】


この本との出会いは私が中学生のとき。国語の授業で自分の好きな本を紹介する機会があり、教師が手本としてこの本を紹介していました。
今思えば、中学生が読むにはなかなかハードな内容の本だったな…と思わず唸ってしまいます。

概要はこんな感じです。

一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?
精緻に織り上げられた謎のタペストリ。最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する…。

「BOOK」データベースより


主人公のフジコは絵に描いたような悲劇のヒロインで、その一生がとても痛々しく、生々しく綴られています。
人によっては途中で読むのをリタイアしてしまうらしく、私も若干の心地悪さを感じながら読破しました。
私のグロ耐性はこれで付いたのかも。胸糞耐性も。


¦不幸の連鎖

フジコは何を選んでも幸せになれなくて、何を手にしても壊してしまいます。
概要にもある通り、惨殺事件によりフジコの家族は物語序盤に亡くなってしまいます。
自分だけ生き残ってしまったフジコ、その後は叔母に引き取られ新たな人生をスタートさせます。

しかしこの惨殺事件はただのオーバーチュアであり、不幸の皮切りでしかないのです。
清々しいほどの胸糞が次から次へと襲い、読者の感情がぐちゃぐちゃにされます。

物語の終盤でフジコが「私の人生どこで間違えたの?」的なことを言うのですが…
不思議なことに、フジコがどこで何を間違えたのか私にも分からない。
全章通して彼女の生涯を追想しても、どれが決定打となったのか断言できない。
強いて言うのならば、そうなる運命だった…としか言いようがありません。業は廻り続ける。


¦思春期の心にぶっ刺さる

当時の私は、この転落劇にある種のカタルシスを感じました。
世の中の最底辺を見て恐ろしいような、安心するような…相反する感情を抱えながらも「ざまぁ見ろ」と思ってしまうような。
中学生の私はそれが「抱いてはいけない感情」だと思い込んでしまい、この気持ちは誰にも知られないようにしなきゃ…と葛藤していました。

読破後は、大きな衝撃と喪失感に苛まれました。
この作品の受け売りである「衝撃のラストに戦慄する」はまさしくその通りで、一歩間違えれば自分もこうなってしまうのではないか?という、せん妄に近しい不安感でいっぱいになりました。数か月間は引きずっていた気がする…

結果的に、良い意味で私の人生設計や価値観に影響を与えてくれた一冊でした。
生きるって難しいね。

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