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鎌倉ほのぼの散歩 二十番「千手院」/十七番「補陀洛寺」/十六番「九品寺」

前回「蓮乗院」からの続きです。2019年残暑の某日。空ちゃんと私は鎌倉材木座方面におります。材木座、というのは、由比ヶ浜に続いている海に面した地域です。かつて鎌倉後期から室町時代に、材木商人の「座」が作られていたことから、この名前になったそうです。さて、現在の地点、光明寺と蓮乗院。そこを出て、これから千手院、補陀洛寺、九品寺、向福寺、来迎寺を目指すところです。

 千手院も、光明寺の分院になります。蓮乗院は、光明寺の境内右手にありましたが、千手院は光明寺の山門を出て左手すぐ。

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 かつては学僧の僧房だったそうですが、江戸中期には寺子屋になったとか。赤い門をくぐると中は結構広く、細い道が続いています。江戸時代、ここに通った子供たちがいたのでしょうか。松尾芭蕉の句碑があります。まだ青々とした静かな緑の庭で憩いつつ、御朱印を待ちました。

 さ。ここまでちょっとのんびりしてしまったので、先を急ぎます。

 先を急ぎ……あれ?

 このあたりから、頼りのナビ子がどうも怪しくなってきます。補陀洛寺さんは住宅街の中の結構入り組んだ場所にあるのですが、とはいえ道はそこまで複雑ではないはず。ブワーっとまっすぐ行って、何本目かの道をくぃーっと右に折れればよいはず。なのですが。

 つ、着かない。

 ナビ子が言う通りに歩いたのに、行き過ぎだと言われ、戻ると戻りすぎだと言う。何度か行ったり来たりした後、空ちゃんが見当をつけた細い道で「ここで曲がろう」と言いました。「もうここだよ。ここしかない」。

 行ってみるとその通りでした。どうしてナビ子がそこの道を嫌ったのかわかりません。謎に包まれつつ、ようやく補陀洛寺に到着。

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 実は補陀洛寺さんは、思い出深いお寺です。

 御朱印をいただくところが、民家のような門構えになっているお寺さんも数多くあり、補陀洛寺さんもそのひとつ。普通の家(っぽい)のインターフォンを鳴らすのは、結構勇気が必要です。中から出ていらしたのはかりゆしに身を包んだご住職さん。私たちがおそるおそる「鎌倉三十三観音の御朱印を……」と言ったとたん、少し空気がピリッとしました。

「三十三観音、ではなく三十三観音”様”ですよ。みなさん、よくそうやって呼び捨てにされますが、少し敬意が足りないのではないでしょうか」

 これまで指摘されたことがなかったことに、ハッとして、すみません、と言い直しました。そう、以前お話しした、ご注意をいただいたお寺はこちらでした。ちょっとドギマギしてしまったのですが、知らずに不敬をしていたことを指摘していただくのはありがたいこと。次からは気をつけよう、と、お礼を言ってお寺を出ました。お庭の百日紅の花が満開でした。

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 次の九品寺は、バス通りの大通りに面しているので比較的わかりやすいはず、と歩き始めましたが、意外と距離があります。

 今回の材木座は、沢山回るためにいつもより少し早めに家を出ていて、しかも空ちゃんはあまり朝ごはんを食べていないということで、ここらへんで休憩することに。

 ちょうど、素敵なカフェを見つけました。「ミルコーヒー&スタンド」さん。すぐそこが材木座海岸で、海岸ではサーファーがサーフィンをしています。なんか、ザ・湘南の素敵カフェ。

 しっかりランチ、というわけではないので、またランチどころを見つけたら、ということで、軽く軽食やカフェオレをいただきました。

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  ここからは、九品寺はそう遠くはありません。

 九品寺は、新田義貞の鎌倉攻めの際、前々回に登場した「成就院」「極楽寺」のある極楽寺切通しを突破できなかった新田義貞が、材木座に到達し海から攻めあがるために本陣を構えた場所です。義貞が北条の戦死者の霊を慰めるために建立したといわれています。

 山門と本堂に掲げられている額の「内裏山」と「九品寺」の文字は、義貞の筆を写し取ったものだとか。直筆と伝えられる額は本堂に保存されているそうです。達筆です…!

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 ちなみに「九品くほん」とは、浄土宗における 仏教の品位を表す等級だそうで、上品上生じょうぼんじょうしょう・上品中生・上品下生・中品上生・中品中生・中品下生・下品上生・下品中生・下品下生の九種の階位をいうそうです。これは生前積んだ功徳の違いで、現代で私たちが使う「上品」「下品」などの、人間の品性を表す言葉とは少し意味合いが違うようです。まあでも、天使にも階級がありますし、どこの世界でも結局ランキングかぁ、なんて思ってしまいます(またしても不敬なことを)。お釈迦様としては、善人も悪人も同じだと言うと悪い人が慢心してしまうから、その戒めとしてこのお話をした、ということのようですが。確かに、頑張って修行しても凶悪犯と同じでは、納得がいかないのも道理です。

 さて、九品寺にたどり着くと、中は広く立派な建物。後で「御朱印はお電話を」とサイトに書いてあるのを知ったのですが、その日は突然伺ったのにも関わらず、快く御朱印を書いていただけました。この時は間違いなく「三十三観音様」と言った私と空ちゃんです。しかも「暑い中、ご苦労様です」と声をかけていただいて、その優しさが身に沁みました。御朱印をいただいて帰るときにも「暑いから、気をつけてくださいね」と声をかけてくださいました。

 確かにこの日は、かなりの暑さでした。さっき少しカフェでまったりしてしまったせいか、ちょっと動きが鈍くなってきました。

 しかし本日の目標のお寺は、あとふたつ。

 果たして、いかに。

 つづく。

  次はこちら。






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