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ミラツナ会議から提案「地域おこし協力隊インターン企画」

「ミライツナガル会議」(以下、ミラツナ会議)とは、若者世代の意見を取り入れ、町民参加のまちづくりを目指す福島県柳津町の取り組みです。これまでミラツナ会議の中で、多くの施策提案が出されていく中で「誰が担っていくのか」という議題も出されてきました。さまざまな可能性がある中で、地域おこし協力隊との連携も一つの手法であると検討されてきました。
そこで今回は、検討プロセスの中の一つとして、ミラツナ会議メンバーの藤田明愛から行われた「地域おこし協力隊インターン企画」と、同じくメンバーの目黒照枝から提案された「中間支援組織ミラツナラボ(仮)設立とその活動イメージ」について紹介します。


■矢部良一副町長のミラツナ会議の期待

20・30代の声を私たちはなかなか聞く機会はありません。ミラツナ会議は、若い世代の意見を聞くことができる貴重な機会だと感じています。そして、私たちの世代が意識的に若い世代の意見を聴きに行くという姿勢も大切だと考えています。

さらに、ミラツナ会議は町の中で何が優先的な課題なのかということを見極めていく上でも重要な場だと感じています。

出された提案を実施しようと考えた時には、役場の中で複数の部署にまたがっており、連携が必要となるケースが多いでしょう。そこには一定のハードルがありますが、実行できるところから、どんどんやっていくということが重要だと考えています。皆様から出されている提案をいかにしてまとめていくかということが、私たちの役割でしょう。

私たちが考えていることは、「どうしたら町民が幸せに暮らせるか」ということです。ミラツナ会議で出されたことを実現するにはどうしたらいいか、可能性を探っていきたいと考えています。

■「地域おこし協力隊インターン企画」

「やれるところから、どんどんやっていく」という大前提から、ミラツナ会議メンバーの藤田明愛から「地域おこし協力隊インターン企画」についての企画提案がなされました。

柳津町の地域おこし協力隊の実情

地域おこし協力隊の運用の改善につなげてもらえればと思い、メンバーと話し合って一案として企画を立ててみました。

まず、柳津町の地域おこし協力隊はのべ14名。その中で、3年未満の退任が2名、卒隊後の定住人数は2名でした。これは総務省が発表している定住率65%よりも、かなり低い水準になっています。

その背景には、田舎暮らしにおける想像以上の不便さや地域住民とのコミュニケーションの希薄さなどがあるのではないでしょうか。つまり、協力隊員の期待やビジョンとの相違が課題となっていると考えられます。

そこで、田舎暮らしを実際に体験してもらえるよう、インターン企画を検討しました。この期間に、ビジョンのすり合わせを行ったり、地域住民とスムーズにコミュニケーションを取れるようにサポートしていくことができます。結果的に、町の魅力を知ってもらえることにつながり、地域おこし協力隊の定着だけでなく、IターンやUターンにもつながっていくと考えています。

他エリアの事例を検証していくと、協力隊と地域住民との衝突により、トラブルが生じているケースが少なくないようです。どちらかに非があるということだけでなく、自治体から協力隊と地域住民への報告・連絡・相談不足が多いということも特徴のようです。間に入る自治体が、双方の意見を聞き、調整し、目標をすり合わせることができれば、結果は異なっていたのかもしれません。自治体の中で細かな支援をしていくことは簡単ではないと思いますので、中間支援組織を設置し、活かしていく方法も有効ではないでしょうか。

【短期コース】地域おこし協力隊おためしインターン

実際に住んで柳津町を知ってもらう機会として、お手軽な短期でインターンを実施する企画を考えました。期間としては2泊3日ほど。時期は夏の暑い時期である7月〜8月、とても寒い冬の時期の1月〜3月がよいのではないかと考えています。逆に秋や春は柳津町は過ごしやすいので、厳しい時期の柳津町を体験してもらうことがイメージのギャップを減らすポイントではないかと考えています。

内容としては、観光施設などを巡りながら、名物の食べ歩きをしていくことができると思います。また、私の家が寺なので、月光寺本堂で写経や瞑想体験を実施することで、他自治体との差別化を図ることもできるでしょう。他にも、柳津町ならではの赤べこ絵付け体験やあわまんじゅう作りなども魅力につながると思っています。

また、2日目は現協力隊員や地域住民との意見交換や懇親会を実施していきたいと考えています。3日目はきちんとインターン生へのヒアリングを実施し、振り返りを行っていきたいと考えています。それを次の企画に活かしていけるとよいでしょう

また、インターン募集前に協力可能な事業者を探しておき、インターン生にはあらかじめどの事業者のもとで体験を積みたいか検討しておいてもらうステップにしたいと考えています。具体的な役割を明確化しておくことで、有意義な体験にしていくことができます。

【長期コース】地域おこし協力隊おためしインターン

続いて、地域おこし協力隊おためしインターンの長期コースについてお伝えします。期間は2週間から3ヶ月ほどと考えていて、基本的に空き家を活用していくことを検討しています。時期は短期コースと同様に、7月〜8月と1月〜3月がよいと思っています。

短期インターンと同様に柳津町を体験してもらいつつ、2日目から早速地域おこし協力隊の業務に入ってもらいます。長期間であればあるほど、途中のヒアリングが重要だと考えています。インターン生に対しても、受け入れている事業者に対しても、少なくとも週に1回程度はヒアリングを挟んでいきます。こうしたプロセスを大切にすることで、期待値のズレを生じにくくしていくことができるのではないでしょうか。

また、除雪ボランティアなどにも参加してもらいながら地域住民と触れ合ってもらうような機会を設けるのもよいでしょう。また、柳津町の未来を考えるミラツナ会議にも参加してほしいと考えています。

※総務省 地域おこし協力隊インターン制度

出典:総務省HP https://www.soumu.go.jp/main_content/000745990.pdf

■ミラツナラボの設立中間支援組織ミラツナラボ(仮)設立とその活動イメージ

ミラツナ会議メンバーの目黒照枝から、「中間支援組織ミラツナラボ(仮)設立とその活動イメージ」について提案がなされました。

これまでは地域おこし協力隊を行政が直接受け入れていく体制が多かったのですが、通常業務に加えて育成や地域への順応を促す困難さにより、総務省から中間支援組織の設立やインターンシップの実施を促しています。そこで、藤田さんのインターンシップ企画に続き、私からは中間支援組織「ミラツナラボ(仮)」の設立を提案し、具体的な事業イメージもセットで説明をします。

また、客観的な立場や視点を持ち合わせた団体イメージになっていきたいという方向性から「ミラツナラボ(仮)」という名称も併せて検討しました。

中間支援組織「ミラツナラボ(仮)」設立後、地域おこし協力隊のインターンシップ受け入れをスタートします。これは総務省の地域おこし協力隊のインターンシップ制度を活用して、柳津町内の商工事業者の活性化を図る事業を実施できるのではないかと考えています。

一案として、柳津町の「パティスリー塔之坊」でのインターンを考えています。こちらのインターンシップを「柳津町の隠れた銘品推し活プロジェクト」とタイトル付して、具体的な企画に落とし込みました。

「パティスリー塔之坊」は、柳津町のあずま屋旅館のパティシエ東久美子さんの開くスイーツ工房です。東久美子さんは、世界的コンクールで優勝後、柳津町へUターンし、旅館の業務などを担っています。

その後、「パティスリー塔之坊」をオープンさせましたが、旅館とパティシエ業務、そして3人の子育てと多忙なため、世界レベルのスイーツ作りにリソースをさけない状態が続いています。私は彼女のスイーツは柳津町の財産だと考えています。そこで、彼女がパティシエとして活躍できる環境を整えることが、柳津町を押し上げる一助になると考えます。

目標として、「インターン生による『パティスリー塔之坊』のスイーツの安定供給・販売・売上向上」を掲げ、具体的な企画を検討しました。

具体策としては、人気商品マカロンの安定製造できるようにし、さらに冷凍保存し解凍しても味が落ちないことから、通販事業を構想。現在、こちらのマカロンは柳津町のふるさと納税の返礼品に登録されています。

「パティスリー塔之坊」でインターン生を受け入れて、通販サイトの立ち上げや発送などの仕組みを構築できないかと考えています。なお、ケーキなどのスイーツは輸送には不向きのため、それらを楽しむイベントなども企画できないかと考えています。

通信販売とイベントで、柳津町の財産である「パティスリー塔之坊」のスイーツを楽しむ機会を増やすことができないかと考えています。

以上の企画を勘案してインターン計画を作成すると、モチベーションの維持や得意不得意の分担などを視野に入れて、2名の募集をします。インターン期間は3ヶ月程度と考えています。

この3ヶ月間で、「パティスリー塔之坊」における研修・仕事体験からスタートし、段階的に通販サイトの設立や仕組みの設計、スイーツイベントの開催などを進めていきます。また、インターン卒業後、自力で通販ができなくなることは問題なので、自走できる体制の構築こそが重要だと考えています。

滞在期間は秋にイベントを実施したいので、7月〜9月や8月〜10月頃がよいのではないかと考えています。すごく忙しい花火大会の時期を一緒に乗り越えていきながら、馴染んでいってもらえるとよいと考えています。この「パティスリー塔之坊」における募集人材は、地域活性化に興味があり、スイーツ好きの方がよいのではないかと思っています。

こうした事業は「パティスリー塔之坊」だけでなく、他の事業者にも応用できるモデルです。他にこうしたインターンを受けてみたいという事業者の声を拾い上げて、事業承継などにもつなげていくことができるとよいのではないでしょうか。

役場とともに、次年度から地域おこし協力隊のインターンに向けた事業の具体化と予算の確保の検討を進めていきたいと思っています。

■まとめ

ミラツナ会議メンバー藤田明愛と目黒照枝からの提案を受けて、青森大学准教授石井重成先生からコメントがなされました。

今回出されたような提案を、ミラツナ会議やみらい創生課だけでとどめるのではなく、町内全体で話をして、実行するか、実現をしていくにはどうしたらいいかを協議していけるといいでしょう。

まだ荒削りの部分もある提案ですが、私としては筋のいい企画ではないかと思っています。地域おこし協力隊を中間支援組織で受け入れて関係性を育てていくというプランであり、なおかつ、それを「やりたい」という意志を持っているメンバーがいるということもポイントでしょう。

中間支援の法人がミラツナ会議で出された事業を実施していく団体にもなりうるでしょうし、まずは地域おこし協力隊を受け入れる組織として機能させていくこともできるでしょう。

いずれにしろ、中間支援組織ができてはじめて柔軟かつ量を狙えるような取り組みができるといえるでしょう。

今回は「パティスリー塔之坊」を例に挙げてお話をいただきましたが、こうした潜在的な悩みを持っている方はたくさんいるのではないかと思います。それを発掘するために、「人」や「機能」が必要ですし、受け入れをしてみたいという人が手挙げをできてるようになっていけるといいのではないかとも考えています。


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