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【日経新聞をより深く】IMF専務理事「世界の3分の1が景気後退」 経済見通し~世界の分断か協力か~

1.IMF専務理事「世界の3分の1が景気後退」

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は6日の講演で「世界経済の3分の1が来年までに(景気後退を示す)2四半期連続のマイナス成長に陥る」と話した。年次総会に合わせて近く公表する世界経済見通しを下方修正すると明らかにした。「さらに悪くなる可能性のほうが高い」とも強調した。
「無意味な戦争を含む複数のショックが、経済の様相を一変させた」とロシアによるウクライナ侵攻を批判し、エネルギーや食料の価格高騰や中央銀行による金融引き締めが経済減速を招くと指摘した。世界経済が2026年までに失う国内総生産(GDP)が4兆ドル(約580兆円)と「ドイツ経済に相当する規模になる」と話した。
各国が取り組むべき対策として、インフレの抑制を第一にあげた。金融引き締めを徹底すると同時に、低所得層に対象を絞った支援が必要だと指摘。規模の大きな財政出動はインフレの長期化につながるため避けるべきだと戒めた。
ドル高や金利上昇で借り入れ負担の上昇に苦しむ新興国に対し、国際協調が必要だと呼びかけた。「今後3 四半期の間に新興国から資本が流出する確率は40% まで上昇している」と分析した。
講演後のイベントでは経済危機に陥ったスリランカについて「主要な貸し手である中国、インド、日本はどうすればスリランカを助けられるかを考える責任がある」と指摘した。

(出典:日経新聞2022年10月7日)

IMFのゲオルギエバ専務理事はIMFとして公式に明日、世界経済の景気後退発表する講演でスピーチをしました。

世界的な景気後退はもはや避けられない状況が鮮明になってきています。ただ、日経新聞の報道は、少し意図的な点があると感じます。

それは、引用した記事の中の「ロシアによるウクライナ侵攻を批判し」という点です。IMFの日本語訳をされた文を見ると、「無意味な戦争」とは言っていますが、「ロシアを批判する」ことはしていないように感じます。

さらに、英文を確認しましたが、「a senseless war」「Russia’s invasion of Ukraine」(「意味のない戦争」「ロシアのウクライナ侵攻」とは発言していますが、それがロシアを批判しているという内容ではないと感じるのは私だけでしょうか。

ロシアを批判するというよりは、インフレを懸念しており、中央銀行により金利コントロールの難しさを語っています。

日経新聞は「ロシアを批判する」ことを印象付けようとしているように感じます。この講演はロシアを批判する内容ではなく、世界経済に対する深い懸念を表面した講演なので、政治的な話ではないと感じています。

2.世界経済におけるリスク

今回のIMFのゲオルギエバ専務理事の講演の中で、財政が脆弱な国への懸念が語られています。これは非常に重要な問題です。

特に食料の問題と財政の問題です。

More than a quarter of emerging economies have either defaulted or had bonds trading at distressed levels; and over 60 percent of low-income-countries are in—or at high risk of—debt distress.
新興経済国の4分の1以上が債務不履行に陥っているか、債券が苦境に陥った水準で取引されている。また、低所得国の60%以上が債務危機に陥っている(またはそのリスクが高い)。

(出典:IMF・HP

We need to step up our efforts to counter acute food insecurity—which is now affecting a staggering number of people: 345 million.
私たちは、現在、3億4,500万人という驚異的な数の人々に影響を及ぼしている深刻な食糧不安に対抗する取り組みを強化する必要があります。

(出典:IMF・HP

IMFはこれらの問題を支援をしていくと語っています。しかし、現在の世界経済のリスクはここにあるのではないでしょうか。

確かに先進国経済が深刻な状況になることは大変な問題です。しかし、途上国や低所得国では、食糧危機が起こり、政府の財政破綻が現実化するのです。

これは、不況で語られるレベルではなく、命の危機になります。現在の不確実化し、分断された世界で起こる経済危機は、大量の食糧危機に瀕する人たちを生み出し、多くの財政破綻国を生み出す可能性があります。

しかし、世界はインフレです。このインフレを抑えることが何よりも大切だとIMFも言っています。インフレを抑えるためには金利の上昇が不可欠であり、金利の上昇は、債務が多い国の経済を圧迫し、脆弱な財政の国の通貨を弱体化させます。したがって、財政の厳しい国を破壊していく手段でもあるのです。

だからこそ、世界は協力しなければならないというのがIMFのゲオルギエバ専務理事の主張です。

3.世界は協力できるのか

世界は協力できるのでしょうか。私は極めて難しいと思います。それは、ロシアのプーチン大統領の演説内容を知ると、強く思います。

例えば、国連憲章第1条には民族の平等な権利と自決の原則が決められている。ウクライナとロシアは1千年の歴史を共通にしている91年にソ連のエリートの代表が一般市民の意思を聞くことなくソ連崩壊を決定し、人々は一夜にして祖国から切り離された。西側諸国は、ロシアを含めて世界は永遠に自分たちの命令に我慢しなければならないと決めた。これは彼らの新植民地主義であり、彼らにとってはすべての国が米国のために主権を放棄することが決定的に重要である。NATOの東方不拡大への約束は破られ、彼らは二重基準、三重基準を使って世界を支配している。しかし、ロシアは千年王国、文明の国であり、不正なインチキルールで生きるつもりはない。米国は世界で唯一核兵器を2回使い、日本の広島と長崎を壊滅させた。日独韓は同盟国と言いながら国の指導者がスパイされ、国家元首のオフィスだけでなく自宅まで盗聴されていることは世界が知っている。米国の独裁の本質はどんなに飾っても結局、武力・拳法。欧米の覇権に挑戦できる国はすべて自動的に彼らの敵に分類される。

(出典:プーチン大統領演説/ロシア語全トランスクリプトの日本語訳

さらに続けて

そしてここで、西洋が20世紀初頭の矛盾から第一次世界大戦を経て出現したことを思い起こすに値する。第二次世界大戦の結果、アメリカは世界恐慌を克服し、世界最大の経済大国となり、世界の基軸通貨としてドルの力を地球上に印象づけることができたのである。西側諸国は、最後に崩壊し、バラバラになったソ連の遺産と資源を流用することで、80年代の危機をほぼ克服し、危機は悪化したのである。それが事実である。今、矛盾のもつれから抜け出すためには、他人の富をさらに収奪し、その代償として穴を塞ぐために、主導的発展の道を選ぶロシアやその他の国家を、ぜひとも打ち砕く必要がある。もしそうなれなければ、彼らはシステムを崩壊させ、すべてをそのせいにしようとするだろうし、最悪の場合、よく知られている「戦争がすべてを帳消しにする」という公式を使うことになるだろうことを私は否定しない。ロシアは国際社会における自らの責任を理解しており、このような熱血漢を正気に戻すためにあらゆる手段を講じるつもりである。現在の新植民主義モデルが長期的には破壊的であることも明らかである。でも、本当の主人は最後までそれにしがみつくであろう。彼らは単に、同じ略奪とゆすりのシステムを継続する以外、世界に何も提供しないのだ。要するに、何十億もの人と、人類のほとんどの人々が持つ、自由と正義、そして自分たちの未来を決めるという当然の権利につばを吐いているのである。彼は今、道徳、宗教、家庭を徹底的に否定する方向に進んでいる。

(出典:プーチン大統領演説/ロシア語全トランスクリプトの日本語訳

そして、この演説では、今回の特別軍事作戦に際して、世界のほとんどの国がロシアと協力したことは、世界のほとんどの国が欧米に反抗したということであり、これは西側が予想していなかったことだと言っています。

プーチン大統領には、(西側の価値感として良いか悪いかは別にして)信念を感じます。そして、この演説の中でウクライナのことは批判していません。というより、眼中にないという感じです。それよりも欧米、特に米国の横暴を徹底的に非難しています。

そして、次のようにも語っています。
「世界は革命的な変革期を迎えており、それは基本的なことだ。新しい開発拠点が形成されつつある。彼らはマジョリティを代表している。- 彼らは多極化の中に、自国の主権を強化する機会を見出し、それによって真の自由、歴史的展望、独立した創造的で独特な発展への権利、調和のとれたプロセスを獲得しようとする。

欧米をはじめ、世界中に志を同じくする人たちがいて、その支持を実感している。一極集中の覇権主義に対する解放・反植民地運動が、さまざまな国や社会で展開されている。その主観は増すばかりである。この力こそが、今後の地政学的な現実を決定するのである。」

プーチン大統領の言うように、世界が一極集中から多極化へと移行しているとすると、欧米エリートが求める経済安定と金融システムの安定を世界が協力して行うことは無いということになります。

それよりも世界が一極集中から多極化の時代に入り、各国が主権を持って国家運営をし、主権を持った国々の連携は新しいシステム、新しい秩序を必要とします。

トランプ前大統領の「Make America Great Again」の方針も実は、身勝手な政策ではなく、プーチン大統領の話と根は同じで、各国が主権を持って、民族の伝統を大切にした多極化時代の政策であったのです。

世界経済は、後退から深刻な危機へと向かうでしょう。それは、新秩序、新システムを生み出すための一過程となるはずです。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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