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過剰マネーと株価の行方

(出典:世界の株価と日経平均先物)

日経平均株価は、3月7日に史上最高値の4万円を更新しました。3月13日の終値は38,696円へ下落しています。

上記チャートは、日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)です。日経225オプション価格から算出されています。

日経平均株価の現在価格だけを見ると、それが高いのか安いのかの判断はできません。30年前のバブルの時と同じ金額を回復したのが高いのか、安いのか。30年という時間を考えると、まだ安いという気もする。しかし、リーマンショック後の7,000円を割り込んだ時と比べると、40,000円は5.7倍ですから高いともいえる。

そこで価格変動に関して注目されるのがVI(ボラティリティー・インデックス)です。計算には日経225オプション価格が用いられ、日本経済新聞社によりリアルタイムで算出・公表されています。

現在の日経平均VIは22%です。例えば、現在の日経平均株価が4万円だとすると、今後1ヶ月の日経平均が「4万円±22%(8,800円)=3万1200円から4万8800円になる確率が95%(2シグマ)と示します。

上記チャートの突出してVIが上昇しているのは、リーマンショックとコロナパンデミック時です。現在は、暴落するようなサインは見られません。ただ、22%は若干高い。コンスタントに上がるのは20%を切ったあたりです。

高値から3%強下落した日経平均株価は今後、どうなるでしょうか。私自身は長期で見ると、日経平均株価はかなり上昇すると考えています。ただし、現状からは下がると考えています。

少し、考えてみます。

3月半ばにさしかかった下落の原因についてメディアで報道されるのは、物価目標2%の定着と、マイナス金利解除の予測です。

日銀総裁、政策修正「総合的に判断」 物価2%台は定着

「(日本経済は)デフレではなくインフレの状態だ」。植田総裁は2月22日の衆院予算委員会では国内経済がデフレではなくなり、インフレ状態にあるとの見解を示していた。2024年以降の物価も23年と同じように右肩上がりの動きが続くとの見方を示していた。

(出典:日経新聞2024年3月12日)

日銀、マイナス金利解除議論へ 賃上げ集計見極め判断

日銀は18〜19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除するか議論する。2024年の賃上げ率は昨年を上回る見通しで、2%の物価目標を安定的に達成できる確度が高まったとみているためだ。日銀内には容認論が広がっており、連合が15日にまとめる春季労使交渉の集計結果を見極めて最終判断する。

(出典:日経新聞2024年3月14日)

日銀が政策金利を上げると、市場の金利も上がり、「円買い/ドル売り」が増えて、円高に向かう可能性が高く、円高なら日経平均は売り、日経平均は下落という図式です。

ただ、考えておかなければならないのは、なぜ、わずかな金利上昇で大きく株価が変動してしまうのか、です。

仮にマイナス金利が解除され、4月に0.1%の政策金利になったとします。それでもー0.1%が+0.1%になるだけですから、0.2%しか上昇しません。問題は、この程度の金利予想の違いで株価が下がるくらい、過剰流動性相場(マネー量が多すぎる)です。

(出典:TRADING ECONOMICS/日本マネーストックM2)

現在の相場は、コロナ後の赤字財政拡大と量的緩和が重なった、特殊な時期であることを認識しておく必要があります。

現在の米国の政策金利が5.25%、日本がマイナス0.1%でその差は5.35%です。仮にこれが5.15%の差になったとしても、わずかな差です。しかし、それでも金利差によって買われてきたドル買い(同額の円売り)は減り、マネーの国際的な流れが、「レバレッジ」で変わる状況です。1ドル150円が147円は、わずか0.2%の金利差の予測によってもたらされた結果です。

本質的に2020年のコロナ以降、財政拡大と中央銀行のマネー増発により、国際的に動くマネー(円、ドル、ユーロ)が過剰になっています。金融相場の株価はわずかな金利差で国際的に動きます。中央銀行が増やした過剰なマネーがもたらしているのが、2023年~2024年の株価バブルの本質です。

日銀が利上げすると、約5.35%の金利差が5.15%へとなり、「円買い/ドル売り」が増えます。円買いが進んで円高になると投資家は予想します。ドル高で上がる米国株と逆に、円高では日本株の売りが増えます。

図式で言えば、「米国のインフレ率低下→一方、日本の2%インフレは定着→FRBは金利引き下げ/日銀は利上げ→日米金利差の縮小→円高/ドル安の傾向→日経平均は売りが増えて下落」ということです。

日経平均株価ではこのマネーの動きに加えて、2024年は日米共にインフレで企業売上が増え、その上に、増えた自社株買いもあって、1株当たりの次期企業純益(EPS)が高まっています。

EPSとは、「Earings Per Shere」の略で、1株当たり純利益です。企業を評価する際に使われる指標の一つで、1株当たりの利益がどれだけあるのかを示すものです。EPSは、当期純利益÷発行済株式数の計算式で求められます。

EPSが高まると、予想PERが下がります。PERとは、「Price Earnings Ratio」の略で、「株価収益率」と表されます。株価がEPS(1株当たり純利益)の何倍の価値になっているかを示すものです。現在の株価と比べて、割高か割安かを判断するのに使われる指標です。

PERは、株価÷EPSの計算式で求められます。そのため、EPSが高まれば、PERは下がります。

PERが下がるということは、株価は割安と判断されますので、株価は上がると判断している報道が多い。

米国の生成AIとNVIDIAなどの半導体関連企業の業績が、この見方を支えています。

NVIDIA時価総額275兆円 アルファベット超え、世界4位

米エヌビディアの時価総額が14日、米グーグルの親会社アルファベットを抜いて世界の時価総額ランキングで4位となった。

(出典:日経新聞2024年2月15日)
(出典:日経新聞2024年2月15日

NVIDIAの時価総額は2.19兆ドル(300兆円)、トヨタの5倍です。PERは75.36倍です。米国の場合は20倍程度が割高、割安の基準と言われているので、75.36倍は高い。(日本は15倍程度)

(出典:ブルームバーグ)

過大評価されているとみられるNVIDIAの株価。NVIDIA株が下がる時が米国バブルの終わりではないかと考えます。

新NISAが始まり、米国株やオルカン(オールカントリー/世界株)への投資ブームは高まっています。アナリスト予想でも、①物価上昇と失業率の低下期待、②下がる金利の予想、③上がる企業純益の予想、④半導体とAIブームから、2024年の株価を期待する向きが強い。

個人も米国株投資、そして、日経平均株価への投資は増加しているでしょう。

もう一つ重要な要素は東証の株の売買は65%は海外投資ファンドです。したがって、金利差によって動く国際マネーが最も大きな売買要因となります。国際マネーと言っても、その大半が米ヘッジファンド。

それらは、米国株にも日本株にも投資をしています。金利差、EPS、PBRで動くわけですが、最も大きな要素は、生成AIブームの終焉の時でしょう。その時、日米株価は同時に下落すると思われます。

プロの海外投資ファンドが売り越しとなった時、日本の個人投資家と機関投資、企業法人を合わせた購入主体では、それを支えることはできません。

過剰に膨れ上がったマネー量がバブルを形成していると思われます。米国の景気がきっかけか、金利が市場予測のように下がらないことがきっかけか、半導体・AIブームがバブルと判断されるときか、いずれにせよ、バブルは弾けるでしょう。その時は、日米、共に下落する。

過剰マネーバブルが弾けたとき、米国を中心とした金融システムが大きく変わる時かもしれません。米ドルを基軸通貨とした金融システム、信用通貨が膨らませた過剰マネーに対して、台頭するBRICSは資源を裏付けとした、特に金を裏付けとした通貨の準備を進めています。

長期で見れば、日本の株は上昇すると思います。それは、米国の金融経済の衰退、欧州の衰退、そして、中国のバブル崩壊によって、マネーは安全な市場である日本にしか行先が無いと考えるからです。

しかし、その前には、米ドルに連動して過剰マネーで膨らみ切った日本の資産バブルも一度は弾けることになるでしょう。

信用通貨の反対に位置する金(ゴールド)は、安全資産として、持っておいて損はないと思います。

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