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農業のデータ活用 ~センサーは適切に設置しよう!~

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。前回の記事では「農業でのデータ活用」についてお話いたしました。安定品質・安定収量を実現し、再現性のある農業を行っていくことがこれからの農業に求められることですし、経営面からみても必須になります。IT技術はドンドン進化しているので、その恩恵を農業にも取り入れてより効率的で確実な農業経営をしていかなければなりません。そのために「データの活用」というのは非常に重要です。

しかしシステムを導入してもしっかりと使いこなす必要があります。そのためにもシステムのことを理解することが大事です。とりわけよくある課題としてセンサーの取り付けが適切でないことが多いということです。
一般的な天気予報などの気温も百葉箱という測定環境が決まっており、センサーに直接日射が当たらない、風通しが良いようになっています。(小学校にありましたよね!)

百葉箱

同様にハウス内のセンサーも適切な環境で正しくデータを取得する必要があります。センサーを適切に取りつけないと正しいデータが取得できず、誤ったデータをもとに栽培環境を見てしまうとかえって不適切な栽培環境を作り上げてしまうことになります。そこでセンサーの適切な設置方法について見ていきたいと思います。

〇センサーは適切に設置しよう!
温度、湿度、CO2濃度などのハウス内環境を測定して知ることは農業でのデータ活用の第一歩として非常に重要です。しかし、生産者のハウスを訪問してみるとセンサーが適切な場所に設置されていない場合があります。これでは正確な環境を知ることができません。また新設のハウスでもハウスメーカーが正しくセンサーを設置していないケースもよくあります。

環境データを測定する際、センサーの設置する方法が重要です。まず少なくとも温度と湿度センサーには日よけカバーをつけることが必要です。ファンがついた強制通風式ならより正確に測定できます。ハウス内は外気と比べ 風が弱く温湿度変化も激しい状態になっているため空気を動かさないと(風通しが悪いと)空気が澱んで温度ムラが発生したりしてしまいます。強制通風式にすることで常に空気が流れるのでハウス内の正確な環境を測定することができます。(※強制通風式とはセンサーBOXにファンがついているものです)

単にハウス内に設置しただけの自然通風式センサーは強制通風式センサーと比べて日中は3℃くらい高くなり、夜間は3℃くらい低くなることもあるといわれています。

プロファインダーセンサーボックス(右に通風口)

〇センサーをたくさん設置する必要はない!
センサーは適切な場所への設置が大切です。まず設置場所はハウスの中心である通路や谷部のカーテンした換気窓の直下は避けましょう。谷換気や肩高の低いハウスでは換気窓とセンサーの距離が近いと換気時の冷気を直接的に感知してしまう。
夜間にカーテンを数%開けて除湿する場合はカーテンの開口部の直下への設置も避けたほうが良いです。カーテンを開けた時にカーテン上の冷気が落ちてきて温度が下がって湿度が高く表示されてしまいます。

〇測りたいのは植物の温度!
さらにセンサーは畝間ではなく条間の群落内に設置したほうが良いです。本来測定したいのは、葉面の環境であって気温を測るのはその代わりだからです。そのためセンサーは植物体のなるべく近くに設置するのが基本です。
植物の近いところと離れたところとでは蒸散による冷却効果による温度差が生じます。トマトなどのハウスの場合、通路は暑いけれど畝に入ると涼しいと感じることがあります。逆にハイワイヤー栽培では台車に乗って吊りおろしをすると暑く感じたりします。春の晴天日なら日中の成長点付近と収穫果実付近では5℃程度もの差があります。

センサーはトマトのように背丈が高くなる作物の場合、最も光合成が盛んな葉の付近に設置するのが良いです。ただし成長点の上に露出しないよう成長点から50cm 程度下に設置するようにしましょう。

〇ハウス内に1つでOK
3,000㎡程度のトマトハウスならばセンサーを設置するのは基本的に1か所で十分です。もちろん同じハウス内でも場所によって必ず環境に違いがあります。しかしその違い まで測定しようとすると大量のセンサーを設置しなければならなくなり投資コストが多額になってしまいます。そんなことはできないので継続的に測定する時はその差を考慮した上で 1か所の環境を測定すれば良いです。
私は新しいハウスを建設した際には、最初にハウスメーカーなどに温度計をたくさん借りて、ハウスの中心、東・西・南・北、上・下などの温度差を測定しておきます。そして中心部と比較してどれくらい温度差が生じているかを把握します。その後は借りた温度計は返却し、中心部にのみセンサーを設置し継続的に図るようにしています。温度だけでなく湿度やCO2濃度、日射量もそのようにすれば十分かと思います。

同じハウス内でも温度にムラが生じる。

データ収集の間隔はなるべく短い方が適しています。外気より環境変化が激しいハウス内では10~15分程度に1回の測定では正確な環境は把握できないので、1分に1回程度の測定をして記録するようにした方が良いです。

〇日射センサーは目的に応じて設置場所を変える。
日射センサーなどの取り付け場所は温湿度センサーなどとは取り付け場所が異なります。日射センサーは従来はハウス外に設置するのが一般的でした。最近では目的に応じて設置場所が異なってきています。
複合環境制御などを目的とした場合は、遮光カーテン開閉の際には「屋外」日射量の変化を基に判断する必要があることなどから「屋外」に設置するのが一般的です。屋外の日陰にならないところに設置しましょう。
日射比例潅水のためだけに日射センサーを設置する場合は屋外設置でもよいのですが、その場合、ハウス内に入ってくる光量を考慮して潅水量・タイミングに反映させる必要が出てきますので、より正確に行うためには、ハウス内設置がよいといわれています。

日射センサー

〇センサーは定期的に校正を!
センサーは初めは適切な数値を記録しますが、使っているうちに誤差が生じてきます。そのため定期的にその誤差を修正することが必要です。このセンサーの誤差を修正することを校正といいます。どれくらいの頻度で校正がひつようであるかはセンサーごとに違いますので、センサーごとに適切なタイミングで校正をするように心がけてください。そうしないと栽培環境が適切に維持できなくなるし、せっかくデータを蓄積していても、徐々に誤差が広がっていき、時系列的なデータ分析もできなくなります。

このようにセンサーを適切に設置することで正しいデータを取得でき、そのデータに基づき栽培環境を作っていくことで安定品質・安定収量で再現性のある農業を実現していけるようになります。
また、農家仲間と勉強会などでデータを共有する際にも、正しいデータであることが必要です。

既にセンサーを設置している人はぜひ適切な設置方法になっているか今一度確認してみてください。


【問い合わせ】
TEL 080-3396-5399
MAIL t.ogawa19720117@gmail.com


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