見出し画像

世論の動向(2021年1月)

⭐内閣支持率・不支持率

20210125安倍・菅内閣

 これは昨年3月以降の安倍内閣と菅内閣について、内閣支持率と不支持率を表示したグラフです。世論調査には誤差があるうえ、高めの内閣支持率を発表しがちなところや低めの内閣支持率を発表しがちなところなど、各社が固有の傾向を持っています。そこで、こうした傾向を検出したあとで打ち消す補正をかけ、さらに平均をとることで精度を上げています。

 菅内閣が発足したのは昨年の9月でした(グラフが途切れているところです)。当初は65%の支持率があったものの、昨年11月中旬から急落し、12月には支持と不支持の逆転が起きています。

 上のグラフからは、現在の菅内閣の支持率が安倍内閣末期の最低ラインとおおむね一致することも読み取れます。その最低ラインはかつて安倍内閣の「岩盤支持層」と言われたこともありますが、菅内閣の基盤に固いものがあるかは不明瞭なところです。

⭐新型コロナウイルス 政府対応の評価

20210125コロナ

 11月中旬からの内閣支持率の急落と連動しているのが、新型コロナウイルスの政府対応の評価の急落です。

 平時の場合、政権に求める政策としては「年金・医療・福祉などの社会保障」や「景気・雇用・経済」が多く、政権の評価はこうした政策が基盤になっています。しかし直近では「新型コロナウイルス対策」を望む割合が非常に高い水準にあり、コロナ対策が政権の評価を左右していることがうかがえます。

 (ちなみに直近の日経新聞世論調査の「首相に処理してほしい政策課題」の質問で「新型コロナウイルス対策」は71%となりましたが、これは1987年に日経の調査が始まって以来の数字です。バブル崩壊の時よりも、リーマンショックの時よりも、東日本大震災や原発事故の時よりも高くなっています)

⭐政党支持率

20210125政党1

 自民党の支持率は、昨年9月の総裁選の際に伸び、その後、新型コロナウイルス対策への批判が高まるにつれて下落傾向となっています。

 野党と公明党の支持率はすべて10%未満の領域にあります。これを見ていると、自民党が圧倒的に強い印象を受けるかもしれませんが、もともと与党第一党の支持率は選挙での実力と比べて高めに出る傾向を持っています(より正確にいうと、国政選挙の得票率と比べて過剰に高く出る傾向があります)。

 その理由としては、与党第一党はニュースでの露出が多いことや、単純に世論調査の選択肢の最初に並んでいることなどが考えられそうです(多くの場合は国会の議席数順なのです)。民主党政権時には民主党の、自民党政権の時には自民党の支持率が高めに出てきました。なので政党支持率は数値の大小よりも、変化を見ることが大切です。

⭐政党支持率(10%未満拡大)

20210125政党2

 上の図は、野党と公明党の支持率を見やすくするために、10%未満を拡大したものです。各社世論調査の点のばらつきの大きさからは、野党や公明党の支持率の増減について確かなことをいうのが難しいことがうかがえます。一つの世論調査を見て「支持率が上がった」「下がった」と騒がれることがありますが、それは誤差によるばらつきを言っているのに過ぎないことが少なくありません。

 このグラフでは、昨年9月に旧国民民主党が立憲民主党に合流したタイミングで、旧国民の支持層の一部が立憲に移動したことがとらえられているように見えますが、基本的にはまだ劇的な動きはないというふうに読むのがよさそうです。

 この中で大きく動いているのは日本維新の会で、昨年3月から6月頃にかけて支持率の上昇が起こりました。これは、維新が大阪という大都市の地盤をもっており、新型コロナ対策をするうえで、「我々はこう考える」、「我々はこう動く」ということを打ち出していき、それが報じられるというサイクルを作れたことがあげられるように思います。世論調査であらわれる支持率には、その政党に対する単純な「認知度」という側面もあります。

 しかしその後、維新の支持率は7月から陰りが見え、大阪市廃止・特別区設置住民投票(2020年11月1日)の際もわずかしか盛り上がりが見られませんでした。テレビにも多く露出し十分に認知されている状況下でありながら、ここ最近の支持率がそれに反応しなくなっているのは苦しいかもしれません。

⭐比例投票先

20210125比例長期A

「仮に今、衆議院選挙の投票をするとしたら、比例区ではどの政党に投票したいと思いますか」といった質問に対する回答をまとめたのが比例投票先のグラフです。世論調査で必ず聞かれる内閣支持率や政党支持率とは違い、比例投票先は毎回質問されているわけではありません。そのため比例投票先の更新は不定期で行っています。また、グラフの解像度も荒くなります。

 上の図では、2020年7月頃に未定・不明(灰色の線)の減少が見られます。普通、このように未定・不明が大きく減少するのは国政選挙の際ですが、この時はそうではなく、単に一つの世論調査で非常に低い値がでたことが影響しただけだと考えられます。(グラフの解像度が荒くなるので、こういうことが起きています。頻繁に調査される内閣支持率や政党支持率を計算するための仕組みに比例投票先のデータを入れているだけなので、もともとこうした状況は想定していませんでした。今後改善する予定です)

 上の図からまず読めるのは、大きく見て自民の山があり、そのピークが2020年9月の自民党総裁選の頃にあることです。この時期は、菅政権が発足し、自民党の支持率も高かったのでした。それが直近にかけて下落傾向になっています。その下落に伴って「未定・不明」や立憲が増えてきていますね。

⭐比例投票先(15%未満拡大)

20210125長期比例

 このグラフはやや重要なように思います。政党支持率を見るかぎり立憲は横ばいに近い状態ですが、この比例投票先のグラフは増加傾向になっています。これは新型コロナ対策などをめぐって与党への批判が強まる中、「立憲を支持するわけではないが、自民に対抗する投票先として立憲を選ぶ」という観点から、選択肢として浮上しつつあるということかもしれません。

 野党がそのような層を取り込んでいけるかは、衆院選の大きな鍵となるように思います。

Twitter : 三春充希(はる)Mitsuki MIHARU
Facebook : 三春充希(みらい選挙プロジェクト)
note: みらい選挙プロジェクト情勢分析ノート