見出し画像

嫌な弱音7/2昼


カフェでバイトを始めた。

理由は至って普通で「生活苦」と「将来使える簡単な技能の習得」だ。
正直後者の方を重要視していたため、バイトに行く日・働いてる間は
言われるがままに動いて、その時間に金銭が発生しているという実感が、
今までの仕事に比べてあまりにも薄かった。
いや、なかったと言ってもいい。
だから初めて給料が入った日は突然口座にお金が降ってきたのかと思った。反応の悪いアプリの数字を見てもイマイチお金をもらった実感が湧かず、220円の手数料を払って口座に降ってきたお金を全額出してみたが、
その行為そのものと薄い紙切れに空虚さを覚え、
どうせなら今全部使ってしまおうなどと思ったりした。
ついに就労〜給料出金の全工程を終えた状態でも、
「働いた」という実感を得ることはできなかった。

まぁ、それだけなら別に良いだろう。
この皿を運んでいる間に金銭が発生していると自分に言い聞かせれば、
「実感」はないが、騙し騙しタイムカードを切って
高齢者にパンケーキの説明を続けることもできたと思う。
だが、問題となったのは「実感」の有無などという高尚な悩みではなく、
シンプルに仕事が向いてなさすぎるということだ。
それはもう、「今までやったことの中で一番退屈で難しい」
と断言しても良いくらいには向いていなかった。
この2ヶ月ほどはなんとか目を回しながら働いていたが、
ふと就業中に冷静になると、もう自分は今何をしているかわからなくなる。

ご存じの通り私は知的障害を持つと診断された障害者だ。
ご存知ないならきっと貴方は大学以降で知り合った人だろう。
これから私は惨めにもつらつらと知的障害を言い訳に、
自分の能力の低さを棚に上げて弱音を吐くなどするわけだ。

一番不快で難しい事と言えば、感覚の多くが塞がれる事。
入口や空いた皿を目視、ぶつからないように目の前にも気配り、
インカムからガビガビの音声で何を言ってるのかもわからない声、
ポケットで振動する呼び出しを知らせるチャチな端末、
これらによって五感のうち3つは塞がれる。

卑屈なことを言えば、おそらく健常者ならこれくらいの感覚のマルチタスクは容易くこなせるのだろう、そうでなければうちの時給が980円なことに納得がいかない。
だが私にはどうだ、始めたばかりとはいえ、これはあまりにも難しすぎる。


何をしているかもよくわからないのに、その行為の為に感覚を塞がれ、

全盲のまま体だけを動かして高齢者にパンケーキの説明をしている。
そんな自分に嫌気が差さないように、いつも適当な事だけを脳内で反芻させていた。
言わずとも、実際嫌気が差してるから今こんなことばかり書いているのはわかってる。

今の所バイトを辞める連絡をするほどの元気はない。
だからこの話を書いたからって別に何が変わるって訳じゃない。今までもこういうことばかりしてきたからそれでいいと思っている。
だが、人生初のバイトで得られたものがガス代程度の日銭と、私が普通の人間より劣っているという実感だけだったのは、少し寂しいと感じた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?