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【クリスマス絵本】戦争をやめた人たち~1914年のクリスマス休戦~

12月に入ったのでクリスマスの絵本を紹介します。約100年前、第一次世界大戦中に本当にあった「クリスマス休戦」のことが描かれています。
(興味がある方は「クリスマス休戦」について調べてみてくださいね。『SEKAI NO OWARI』の『 Dragon Night 』のモチーフになっていたりもします)

1914年7月から始まった第一次世界大戦。この戦争が始まった5か月後、ドイツ軍とイギリス軍との最前線で、12月24日の夜におこったことです。
イギリス軍の兵士たちが一日中続いたドイツ軍との戦いの後、疲れ果て、”ざんごう”で休んでいます。そこで聞こえてきたのはドイツ語の「きよしこのよる」。その歌を聞いたイギリス軍の兵士も、「ドイツにもクリスマスがあるんだなあ」「こっちも、歌おうか」と歌い始めます。そのあとも、お互いの国の言葉でクリスマスの歌を歌う兵士たち。
翌日のクリスマスの日の朝、戦争を中断した戦場で何が起こるのか…。

作者は「せんろはつづく」や、最近では「あるヘラジカの物語」など様々なジャンルの絵本を描かれている絵本作家すずきまもるさん。

この絵本の、あとがきの絵を描いているときに、ロシアがウクライナに侵攻を始めました。また戦争をはじめる人間がいる現実に愕然としつつ、戦争することよりも強い、人の優しさと想像力が描きたくて、絵を完成させました。
≪後略≫

鈴木まもる「戦争をやめた人たちーー1914年のクリスマス休戦ーー」巻末の『制作ノート』より

この絵本は今年(2022年)の5月に発行されましたが、もし昨年発行され、昨年のクリスマスシーズンに読んでいれば、昔の話として「過去にはこういうことがあったんだね」というような感想だったと思うんです。
でもこの絵本に限らず、今年に入ってから戦争に関する絵本を読むと「過去の話ではなく、今も世界ではこのような戦場があるんだ」と思い浮かべます。まだ世の中では現在進行形で戦争が存在する思うと悲しくなりますが、
だからこそ、今読むべき絵本なのかなとも思います。

何百、何千、何万人が亡くなった戦争ですが、その中にいた一人一人は奥さんや子どもの写真を大事に持っていたり、早く帰ってサッカーがしたいなと思っていたりする普通の人たちでした。
子どもはゲームやフィクションの世界では”敵を倒す”体験を簡単にやっていますが、実際に命の危険があるわけではないし、戦争で戦っている人たちがどんな人たちなのかということまで想像力を働かせることはなかなかないと思います。
でも、現実世界においては権力者が戦争を始め、実際に前線で戦って犠牲になっているのは普通の若者だったりします。戦争をしている国の人は戦いたくて戦っているわけではないのかもしれない、本当は平和を望んでいるのかもしれない。そんなことを考えさせられます。

戦争のお話といっても、人が死んだりするような残酷なシーンや悲しいシーンは出てこないですし、小さいお子さんにも何か伝わる絵本じゃないかな、と思います。

≪前略≫
信じる宗教や考えかたがどんなにちがっても、
ふるさとの自然や、家族、
子どもをたいせつに思う気もちはおなじです。
ほかの命のことを思う想像力と行動する勇気があれば、
戦争をやめることはできると思います。

鈴木まもる「戦争をやめた人たちーー1914年のクリスマス休戦ーー」あとがきより

残念ながら、このクリスマス休戦の後も戦争は続き、たくさんの人が亡くなりました。今も世界では戦争があります。
戦争のない世界になるように…という願いは、サンタさんに頼むだけでは叶えることはできないかもしれませんが、人間が想像力と勇気を持てば、きっと叶うはず。

サンタクロースもトナカイもプレゼントも出てこないクリスマス絵本ですが、この時期にぴったりの作品ですよ。

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