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私の中の悪魔

(✳︎今回は課金はありません)

そんな生活が数ヶ月と続いた頃、私はこのままじゃいけないと不意に思い立つようになる。

楽はできるが、自分には他に何かするべきことがあるように感じたのだ。

そして、やはり自分で稼いで行くべきだと考え、派遣の仕事を探し、大手のメーカーで勤め始めることにした。

新卒で失敗した私は、普通に就職することは難しく、第二新卒で就職しようとしてもやはり上手くいかなかった。

そもそも何をしたいのかが明確ではなく、書類では通るが面接でぼんやりとした回答しかできずに、結局落とされてしまうのだった。

派遣ならばある程度のスキルがあった私はすぐに就職できた。


実際に働き始めると、そこには、私の知らなかった世界が広がっていた。

同じような歳の子たちが、自分の趣味や仕事を楽しみ、飲み会や色んな集まりで楽しんでいた。

私はカルチャーショックを受けた。

同じ歳なのに、きちんと会社員として働き、ボーナスまで貰って、一人で生きている。

すでに結婚、子育てしながら働いている女性もいた。 

レールから弾き落とされた私から見ると、みんなキラキラと輝いていた。

と同時に、自分はこういった人たちの仲間に入ることはできないのだという現実に、大きなショックを受けた。

派遣社員は、期限が決まっており、それが切れたらまた別のところを探さなくてはならない。

何の保障もなく、綱渡り状態。要は使い捨てなのだから仕方ない。

そんなことを痛烈に感じた私は、ある暴挙に出る。

男性職員を誘惑し、あわよくば結婚することでそちら側の世界に入りたいと考えたのだ。

それはもはや、女の嫌な習性が無意識に滲み出たようなものだった。

男を踏み台にしてのし上がろうというような姑息な考えが自分の中にもあることに、私はびっくりした。

そして私は本当に自然とその行為を成し遂げた。

大企業の内部を動かしている、とある部の部長を、まんまと手に入れたのである。


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