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国際財務報告基準(IFRS)のメリット


国際財務報告基準(IFRS)は、以下に従って会計情報を提供します。

・原則主義
・資産負債アプローチ
・注記による情報開示
・公正価値重視

IFRSは会計原則やフレームワークだけを定め、実際の判断は会社と会計監査人に委ねる「原則主義」を採用しています。会社それぞれの状況をふまえて、監査人と協議しながら、根拠に基づいて会計処理の説明責任を果たすのが狙いです。

詳細なルールがなくても原則に従い、的確に社会に対して説明しなければなりません。決算の数字情報のみならず、財政状態や投資した有価証券や経営成績に関する自社の分析やリスク情報など、幅広く財務報告することが求められます。

IFRSは、会社価値のベースとなる貸借対照表の純資産を直近の時価で知りたい投資家のニーズに応えるため、資産や負債を時価で求める「公正価値重視」という特徴もあります。

【IFRSのメリット】
IFRSのメリットは、海外に子会社を多く持つグローバルな会社にとって「連結経営管理の透明化」や「ガバナンス強化」ができることです。

親会社が日本基準の場合、(IFRSを適用する海外子会社で一部の修正項目を除いて)そのまま子会社の決算書を連結することになります。日本とアジアと欧州に製造子会社がある場合、製造設備の減価償却方法や償却年数は、各国のルールによって違ってきます。

親会社に業績をよく見せたい子会社を持つ親会社は、共通のモノサシがないと各子会社の業績や生産性を客観的に評価することが難しくなります。IFRSでは、同様の設備や使用環境の場合、原則として連結ベースで統一された会計処理します。共通の基準で客観的に業績を記載できます。

日本よりも外国の方が製造設備の生産性が良いなどの課題が早期に発見できることも連結経営のメリットです。他にも、IFRSは日本基準に比べて、ガバナンス(企業統治)を強化するにあたり、以下のメリットがあります。

・ 海外投資家への説明
 ・資金調達の円滑化
 ・業績の適切な反映

海外で資金調達を目指す日本の会社には、海外投資家に対し日本基準の決算書からIFRSの決算書に準じた修正を求められることもあります。
しかし、IFRSであれば、海外の競合他社と同様の会計基準を採用しているので、海外の投資家には透明性があります。

【IFRSのデメリット】
IFRSにはデメリットもあります。

・有価証券報告書に注記開示項目が増える
・帳簿管理が複雑になる
・資産や負債の時価評価のためのコストや時間などの実務負担が増える
・対応できる英語力と会計スキルを持つ人材が必要になる

【のれん】
日本の会社にとって実務上の影響が大きい項目は、「のれん」です。「のれん」とは、「買収対象企業の純資産」と「買収金額」の差額としてBSに計上される無形資産のことです。

例えば買収対象企業の純資産が二〇〇〇億円で、それより高い三〇〇〇億円で買収したとき、差額一〇〇〇億円が「買収プレミアム(上乗せ幅)」として認識されます。

のれんの本質は、純資産には反映されていない買収対象企業が持つ、将来にわたる収益獲得力やブランド力などを表したものです。IFRSを適用すれば、のれんの毎期の償却負担はなくなります。そのため、多額ののれんが発生する企業買収(M&A)に積極的な会社は、利益を出しやすくなるためIFRS導入を選択するメリットがあります。IFRSでは、のれんを償却せずに(毎期末に価格下落が認められれば)減損処理します。

例えば日本基準を採用する企業が一〇〇〇億円ののれんをBSに計上する場合、二〇年償却とするなら、のれん償却によってPLの利益は、毎年五〇億円ずつ少なくなります。

IFRSではのれんは非償却のために、減損さえ出さなければ、すぐに利益が目減りするということはありません。のれんの非償却は、IFRSを適用する大きなインセンティブになります。





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