見出し画像

【短編小説】駄菓子屋と子供

ワイワイと、学校がない土日に小学生達がやってくる
「いらっしゃ〜い」
そう声をかけるが、子供たちは駄菓子に夢中だ
田舎の駄菓子屋は、もっぱら子供相手が多い
「今日は何を買いに来たんだ?」
レジから俺は聞いてみた
「おれはこれ!くるくる棒ゼリー!」
と元気いっぱいの半袖の男の子は意外なものを
「私はプチプチ占いチョコ」
オカルト好きな女の子は、その趣味と同じものを
「ぼくはきなこ棒にするよ」
眼鏡をかけていて大人しめの男の子は、マイナーでありながらその美味しさで今も愛されてるものを
「あたしはやっぱりこれよね、ポテトフライじゃが塩バター味!」
駄菓子の中でも定番の一つを、ポニーテールが似合う活発な女の子が選んだ
「やっぱりみんな違うんだなー」
「にいちゃんは何が好きなの!?」
唐突に聞かれたが、俺はこう答える
「俺?俺はなー、森永製菓のラムネ、ほら、この顔みたいに見えるパッケージのやつ」
常備しているラムネをみんなに見せる
「え、これ好きなの?あたしこれなんか苦手なんだよね…」
「おれこれ結構好きだぜ!シュワシュワしてて美味しいよな!」
笑顔で肯定してくれるのありがたいな
「ぼくも、嫌いじゃないよそれ…」
「お、ほんとうか?嬉しいこと言ってくれるな。お礼に2人には俺がお菓子を一つ奢ってやろう。」
嬉しくなって思わず奢る宣言をしてしまった
「まじ!?いいの!?」
「え、いいよ別に。おにいさんお金なくなるでしょ?」
なんだこいつらかわいいな?
「きみは?えっと…、ミナちゃんだっけ?」
「え、あ、はい…」
オカルト好きの子は、ラムネに何も言わなかったし、聞いておこう
「え、あたしは!?」
「んー、きみは素直に言ってくれたし、苦手なものを苦手って言うのはすごい勇気いるから、そんな勇気を出した子にもお菓子を一つ奢ってあげよう。」
「やった!」
縛り上げてるポニーテールが大きく揺れるほど喜んでくれた
店としては既に赤字だが、喜んでる姿を見るのは好きだ
「わたしは、ラムネ、普通…」
「そっか…。まあ、一人だけ無しってわけにもいかないし、きみも好きなの一つ選んで。」
「いいんですか?」
「いいよ。」
子供の喜ぶ姿しか、この駄菓子屋での楽しみないからな

「さー、みんな何を選んだかなー?」
半袖くんはその子らしくブタメンのタン塩を選んだ
オカルトちゃんはやっぱりプチプチ占いラムネ
眼鏡くんはチョコ大福の大パック…
この子、できる…!!
ポニーテールちゃんはヤングドーナツで、なんだかぽいなと思ってしまった
「あ、今選んだのとさっきのやつは別々だからな?」
ちゃんと言わないと全て俺が払うことになりそうで怖かった
「わかってるって!」
「ちゃんとワキマエ?てるからね」
えっへん!と言わんばかりの半袖くんとポニテちゃんの言葉に、眼鏡くんとオカルトちゃんは頷いてる
良かった、安心した
「それじゃあ、先にみんなが買うやつからかな?」
「「おねがいします!!」」
元気がいいって羨ましい…
それぞれ会計をしてお釣りを渡していく
眼鏡くんはちゃんと計算してお釣り出ないようにしてるの素晴らしいな
未来では主夫やりそう
「さて、今度は俺がみんなのお菓子を買う番だな。」
ちなみに、俺の生活費が俺の生活費に入るだけだからそんなに痛手ではないが、店の経営としては赤字覚悟の行動である
そんなワクワクした目で見つめないでくれ、なんかやりづらくなる
「よし、これで完了!どうぞ」
そう言って俺はみんなに配る
500円って高いんだよな、子供からしたら
俺も高く感じたけど
でもまあ、こんだけ喜んでくれるんなら、赤字覚悟でもたまにはやるかな
「にいちゃんありがとう!」
「あたし少しづつ食べようかな、でも早く食べなきゃだし…」
「今度はぼくにおごらせてくださいね?」
「おにいさんの占い、こんどしてあげます。」
みんな反応がかわいい
赤字だが得はした

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?