ちゅうやん

旅を広めたいなんて、これっぽっちも思っていなかった

「旅で世界を、もっと素敵に」

こんなビジョンを掲げているTABIPPOで私は今働いている。このビジョンには、旅がもっと広まれば世界はもっと素敵になるはず。という世界を旅してきた創業メンバーの想いが込められている。

働くきっかけになったのは世界一周の夢を叶えて帰国してからだった。TABIPPOが展開する旅のモノづくりブランド「PAS-POL」へ写真の提供から始まり、トラベルライターを経てTABIPPOの社員になった。

でも、もともとこの仕事をしたいと思っていたわけではない。だって、旅を広めたいだなんて微塵も思っていなかったのだから。

5年前、「世界の絶景をこの目で見たい!」という気持ちだけで旅に出たわたしに待ち受けていたのは、様々な価値観、生き方、日本の在り方、選択肢。そして旅が終わるに連れて感じたのは「日本はいろんな意味で恵まれている」ということだった。

「わたしたちは世界一周したくてもできないんだ」ラオスで出会った中国人の女の子から聞いた一言にハッとさせられた。ビザを取得するのが難しいらしい。最強のパスポートがあり海外にも自由に行くことができる日本。見たこともない景色や旅先での出会い、文化の違いに触れることで自分の価値観や選択肢も広がっていくのが旅の魅力だ。

けれど海外は怖い・不安、お金がない、時間がないという理由で諦めている人がとても多いんじゃないか。それって絶対にもったいない。だから自分が見てきた世界や経験を少しでも多くの人に伝えて、海外や旅に興味を持ってもらいたい。旅を広めたい。帰国した頃にはそんな考え方に変わっていったのだ。

心配性のわたしにだって、世界一周できた。この記事が不安を抱えてる人の背中を少しでも押すことを願って、書き綴ります。

考えなくてもいいことまで心配してしまう過度の心配性。方向音痴。語学力はゼロ。枕が変わったら眠れない。階段をのぼっただけで息切れしてしまう体力。こんなステータスで世界一周したと言うと「本当によく行ったよね」と言われるし、自分でもよく行ったなと思う。

世界一周に出たのは30歳になった年。出発前夜まで枕を持っていくかどうか心配していたバックパッカー初心者。7年半働いていた会社を退職して、9ヵ月間の旅に出た。世界一周に憧れを持ったのはある本を手に取った大学1年のときだ。

しかし夢は頭の片隅に居座り、いつの間にか20代後半になっていた。 合わせて勝手に女性の旅はハードルが高いと思っていた。生理のときは?荷物増えない?レイプ事件もよく聞くし...。心配性な性格は次から次へと不安要素を生み出していく 。ずっと「決定的な何か」を探していたような気がする 。後押しする何かを。

「決定的な何か」の一つは、深夜のネットサーフィンで見つけたウユニ塩湖の写真だった。こんな場所があるなんて知らなかった。そしてもう一つは、世界一周中の人のブログを読んでいると、案外女性が多かったことに衝撃を受けたことだ。「女性もこんなに世界一周してるんだ!」もう、決断のときだった。 

逆に心配性でよかったのかもしれない。女性は世界中にいるから生理用品は手に入るし、ブログを読み漁れば持ち物はわかるし夜は出歩かなければいい、予防接種も人より多めに打っていこう。事前に起こりそうなことを予測して徹底的に準備した。

1ヵ国目のカナダに向かう飛行機に乗った瞬間、不安から来ていると思っていたドキドキは一気に期待へと早変わりした。イエローナイフで 、次から次へと発生するオーロラを見上げてはため息をついた。N.Y.のタイムズ・スクエアでは、最高にハッピーな年越しを迎えた 。

「 オラ!」と「グラシアス!」しかわからないままスペイン語圏へ突入。宝石のような町グアナファ トに心を奪われた。見てみたい世界遺産ナンバー1のマチュピチュを見下ろしたあと、ついに念願のウユニ塩湖までやってきた。

グループで4WDに乗り込む。1時間ほど走り続けて目指すのは、奇跡の絶景。「車の屋根に上がってもいいよ」。ドライバーが言うやいなや、心配性なわたしはどこへいったのかすぐにはしごをのぼっていた。見えたのは薄っすらと水が張っている光景 。まだ、鏡張りじゃない。でも 、待ち焦がれていた景色がどんどん近づいてくる。そして数分後、ついにその景色が現れた。

「これ...だ......。ずっと... 夢見ていた景色だ!」 

「すごいきれい最高」。そんな陳腐な言葉しか発せなかったけれど、景色を見て泣いたのはこれが生まれて初めてだった。夢が叶ったんだ。日本の裏側で、 車の上に乗りながら!

そのあともずっと旅は続いた。不安だったことは 山ほどある。旅のことも、帰国後の仕事も、お金のことも。けれど「行きたい」という強い気持ちが「心配性」の壁を超えたのだ。心配性はネガティブなことじゃない。むしろそのおかげなのか大きなトラブルに一切遭うことなく9ヵ月の旅を終えることができた 。

世界はあたたかく、美しい色であふれていた。少しでも迷っている人がいたら、好奇心の赴くまま旅に出てほしいと強く思う。心配性のわたしだって、世界一周できたのだから。

最後に、ある一冊の本が私に「世界一周」という大きな夢を与えてくれたように、きっとこの本も誰かの何かきっかけになるんだと思ってる。

「この世界で死ぬまでにしたいこと2000」

せっかくこの地球に生まれたのだから、思う存分世界を遊びつくして欲しい。やりたいことをやって欲しい。夢を叶えて欲しい。そんな想いを込めて作った一冊だ。

この本には絶景はもちろん、体験したいアクティビティ、食べてみたいもの、秘境などが2000個ずらりと並んでいる。きっとページをめくるとワクワクが止まらないはず。(一年かけて作ってきたけれど未だにワクワクする)おかげさまで4刷目が決まり、今日も誰かがこの本を手に取って笑顔を浮かべていることを想像すると嬉しくて仕方がない。

書店でガイドブックを眺めながら世界一周を夢見ていたあの頃のわたし。数年後、その棚に自分が携わった本が並ぶだなんて想像すらしていなかったね。

旅に出てわたしの人生は変わった。旅を広めたいなんて、これっぽっちも思っていなかったのに。

ありがとうございます!これからも旅先や日常で感じたことを綴っていきたいと思います。旅で世界を、もっと素敵に。