どうして「抜け感」はもてはやされるのか?

「抜け感」という言葉がファッショントレンドとして君臨するようになってどれくらい経つだろう?

++そもそも抜け感コーデとは?

一説によれば、ロン・ハーマンが2009年に日本に出店したあたりから西海岸系のリラックスした着こなしが流行り始め、やがて「抜け感」というキーワードとともに定着したようだ。

でも、今の日本で「抜け感スタイル」として取り上げられるような着こなし方は、必ずしも西海岸スタイルではない。
例えば、抜け感コーデとしてパッと思いつくこういうスタイル。
(PAGEBOYのプレス、ひねちさん。かっこいい!)

抜け感コーデといえば、マストアイテムとしてオーバーサイズのシャツ。
袖をまくって手首を見せて(最新バージョンではまくらず、肘の下までグイっと引っ張る感じ)、襟は浴衣のように抜き襟になるように後ろに引っ張る。
今季は更に、インナーにノースリーブやキャミを着て、肩をちらっと見せたり、シアーな素材で肌をうっすらと透けさせるのがトレンドだ。

毎年微妙にアップデートしつつも、ファッショントレンドとしては異例の長さで支持されている「抜け感」。
ファッション誌では抜け感コーデに「チラッと肌見せで女子度アップ!」とか「気取らないスタイルでオシャレ度アップ!」みたいなコピーがついたりして、とにかく何か抜かないとオシャレじゃないみたいな気すらしてくる。

こんなに人気の抜け感コーデだけど、抜き襟とか肩のチラ見せは海外ではそんなに流行ってない。
ところが、日本では猫も杓子も抜け感、抜け感。
単なるトレンドの流れなのかな?と思ってたけど…。

++「いき」と「抜け感」は似ている

ここ数日、たまたま読み始めたこちら。

この中で取り上げられている九鬼周造の『「いき」の構造』。
「いき」とは何かを哲学的に解説するこの本には、「いき」の具体例が出てくるのだが、例えばこんな感じだ。

画像1

この浮世絵のような女性が「いき」の例なのだが、九鬼の挙げた中でも私が注目したいのはこんなところ。(言い回しは現代風にアレンジしてます)

①抜き襟で背中チラ見せ(背中なのがポイント)
②うすものを身に纏う(シースルーで肌は見えるけど、丸見えじゃない)
③薄化粧
④髪は少し崩してセットしすぎず、おくれ毛があると良い
⑤湯上りの浴衣(あっさりしたデザインのものを無造作に着る)

え、これって「抜け感」そのものじゃないの?
シースルーなんてまさに最新トレンドだし、無造作なまとめ髪やらナチュラルメイクも抜けそのもの。
あっさりデザインの浴衣を無造作に着るなんて、オーバーサイズシャツをフワッとさせる着こなしにそっくりだ。

あからさまなセクシーと違って、チラ見せしつつも品は失わず、頑張ってキメ過ぎないのがオシャレだという「抜け感」は、「いき」とよく似てる気がする。

++キメ過ぎないのがカッコいい

ということは、抜け感は日本人ならではの感覚。
単なるトレンドではなく、ほぼ定着した感すらあるのも納得できる。
抜け感が演出する「キメ過ぎない感じ」がカッコいいと感じるのは、日本人のアイデンティティと関係があるのかもしれない。

楽しい派手さで露出も多いアメリカンカジュアル。
イギリスの、カッチリしたトラッド。
ミニマムで合理的なフレンチカジュアル。
華やかさと匠の技のバランス命のイタリア。

それぞれの国で人気のあるファッションは、必ずお国柄が現れる。
そして、お国柄は歴史や宗教、環境によって作られる。
だから、ファッションを見ればその国がどんな価値観を大事にしてるのか何となくはわかるのだ。

キメ過ぎない抜け感こそオシャレでカッコいい。
今の日本は、そういう気分なのだろう。
想像力を掻き立てるチラ見せと、盛りすぎない抜け感メイク。
露骨すぎない表現と、察する力のバランス。
抜け感が必要なのは、ファッションだけじゃないような気がしてならない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✧山内の日々の気づきnote
https://note.com/misakinha
✧twitter
https://twitter.com/misakinha
✧山内三咲HP
https://misakinha.com/

❐お買物同行・Points of You コーチングセッションなどのご予約はこちら
https://misakinha.com/goyoyaku/







豊かな人生のために、ファッションのスパイスを。 学びやコーチングで自分の深掘りを。 私の視点が、誰かのヒントになりますように。