見出し画像

まず動く、みんなで動く。 アメリカ留学事件簿

アメリカに来て、1番感激したのは行政の初速の速さ。
何か起こった時、初めの第一歩をどう動くか。もっと言うと、平常時からいかに緊急時にすぐ動ける仕組みが整っているか、について日本とは比べ物にならない強さを感じた。

留学中のある事件とおまけのやらかし事件、そしてそれに対する行政の対応について書き記しておく。

事件① 行方不明者発生

ある日の夜のこと。身に覚えのない電話に出ると大学のある市からの自動音声だった。行方不明者が発生したので、捜索に協力してくださいとのこと。

よく見るとメールも立て続けに来ていた。内容は電話と同様、捜索に協力してくださいとのこと。

1件目は年齢と性別、場所についてのみ。詳細はのちほど、との記載があり、詳細が確定する前にまず発信していることがわかる。
(メール訳:警察が〇〇大学付近に住む、行方不明の83歳の男性を探しています。詳細は後ほどお知らせします。)

1、2件目のメール

2件目も同様の内容で、3件目にやっと詳細が、しかもかなり細かい情報提供がされている。

3、4件目のメール

人種、服装や所持品などの特徴から名前まで記されていた。
(メール訳:警察が〇〇大学付近に住む、行方不明の83歳の男性を探しています。白人の男性で、青い長袖のシャツに黒いスウェットパンツを履いています。眼鏡をかけており、足が悪く、名前は〇〇と言います。どうか捜索にご協力ください。)

4件目には同様の内容で、5件目にはすでに見つかったとの連絡が。

その頃には電話の内容も切り替わり、見つかりました、とのこと。

最初に連絡を受け取ってからわずか小一時間だっただろうか。
暗くなり、捜索が困難になる前に、そして足がおぼつかないと書いてあった行方不明者が怪我をしてしまう前に、見つけ出すことができた。

一方日本では「本日の捜索は打ち切られました」「警察は明日も、人数を増やして引き続き捜索にあたる予定です。」というニュースをよく聞く。

行方不明者が発生したその日の夜から、翌朝に捜索が再開されるまで、空白の時間のリスクが高すぎる。

なぜ捜索するのは警察だけなのか。なぜ最初から捜索員人数を最大限にできないのか。なぜ行方不明者の詳細が発表されるのは事件発生数日後なのか。

もちろん2次被害が発生してしまう可能性も否定はできない。そのリスクへの、決断への、責任を取ることは決して容易ではない。
それでも何もしない、できない、知らないことほど無力なことはないのではないか、と改めて思った。

事件② 学生寮の火災報知器作動

こっちは勝手にプチにしてしまっていいのかわからないが、プチ事件。

ある日の夜23時ごろ。

私は友達とノリノリでバナナを揚げていた(笑)
課題が全然終わらなくて、その場のノリで揚げバナナ作っちゃう〜?ってな感じ。

早速揚げていくと、途中で煙がモクモクではじめた。換気扇は最初からつけていたが、さすがのオンボロ寮、全くもって効果をなしていない。

やばいやばい、急げーーーなんて言ってるうちに、

ジリジリジリジリジリジリーーー!!

終わった。火災報知器が反応してしまった。
続々と部屋から出て、外に出る寮生たち。

その寮の一角は男子運動部の寮でもあったことから、翌朝に朝練を控えて寝ていたであろうボーイズたちも怪訝そうに外に向かう。

やっべ。
でも火災が起きているわけではないことを知っているし、説明責任としてその場に残るべきか。

と思っていた矢先、でっかい体の警備員たちが全力で走ってくる。

とりあえず火事じゃないことを伝えるべく、恐る恐る話しかけるも、
「いいからとりあえず外に出て!」と追い出された。

外でみんなと待機すること5分。
原因を突き止めた警備員たちが寮から出てきた。

「2階のキッチンで調理してたのは誰だ?」

最悪だ。寮生100名ほどが見守る中、友人とともに前に進み出た。

まずは事情聴者。何をしていたか。

「バナナをあげていて...」

「… バナナ?!」

焼けこげたバナナはもはやチキンナゲットのようだった。(そう、この記事のヘッド画像はそいつたち) 揚げバナナを食べないアメリカ人にとって、意外すぎる答えだったのだろう。

いかつい警備員たちの、これでもかというくらい眉毛と目が離れた顔を今でも覚えている(笑)

「ちゃんと換気扇は、回してたんですけど、間に合わなくて...」

激怒を覚悟で発言したが、一言目は予想を裏切るものだった。

まず、何事もなくてよかった。」

「我々の仕事はみんなの安全を守ることであり、全員が無事だったことが何よりだ。わざとじゃないなら、何も悪く思うことはない。ただし今回で学んで次回以降はもっと気をつけること、それは今後の安全のためにもお願いしたい」と。

その頃には、火災報知器から自動的に通報を受信したパトカー3台と消防車1台がかけつけていた。

おっきな消防車 (泣)

想像以上に大ごとになり、申し訳なさでいっぱいだったからこそ、警備員の優しい言葉に救われた。

なんだよ誤作動かよ、無駄足じゃん、気をつけろよ、
じゃなくて、誤作動でよかった。みんな無事でよかった。

自分の不注意を棚に上げるわけではないが、ふと振り返ると彼らの立ち振る舞いは当然のような気がした。

しかしその当然は、少なくとも私の知る日本では当然ではない。

私の通う大学でも同様の誤作動が年に2、3回あったが、警備員さんや寮の管理人さんはとにかく生徒の不注意を叱る。

火災報知器が鳴ったところで警察や消防が駆けつけることはない。

この前は新しい大学寮で、誤作動でなった火災報知器のアラームの止め方がわからず、警備員さんたちが数十分あたふたしていた。

平和ボケなのだろうか。
平和に越したことはないが、万が一に対応できる力がないと、日常の平和が仇となりかねない。

アメリカでは、まず動く。そしてみんなで動く。

費用だの人手不足だの大人の事情があるのだろうとも思う。だとしても、同じ世界で実行している、そして実際に市民を守っている都市がある。

他国から自国を捉え、怖くなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?