中西后沙遠

ライター。福岡県福岡市出身、早稲田大学卒。女性誌・育児雑誌・進学情報誌などを経て、現在…

中西后沙遠

ライター。福岡県福岡市出身、早稲田大学卒。女性誌・育児雑誌・進学情報誌などを経て、現在は単行本のブックライター。聴こえない人の世界と、聴こえる人の世界の融和を目指して発信します。

最近の記事

風の音と、心の音~「聞こえないこと」の思索と物語

難聴児医療・教育界の93歳の長老、田中美郷先生が教えてくれたこと⑦ 初回のこのシリーズでは、半世紀にわたり、医師でありながら、そのワクを超えて難聴児の療育に携わってこられた田中美郷(よしさと)先生の思いや、そのベースとなった哲学に迫ります。 今回は、「難聴児の療育のために、長年にわたりホームトレーニング(両親講座)を行ってこられたなかで、田中先生が禁じていたこと!」についてお伝えしたいと思います。 田中先生が一時代を築いた“ホームトレーニング”という療育法は、『幼児難聴』

    • 風の音と、心の音~「聞こえないこと」の思索と物語

      難聴児医療・教育界の92歳の長老、田中美郷先生が教えてくれたこと⑥初回のこのシリーズでは、半世紀にわたり、医師でありながら、そのワクを超えて難聴児の療育に携わってこられた田中美郷(よしさと)先生の思いや、そのベースとなった哲学に迫ります。 今回は1970年代半ばに田中先生が出会った、言葉を知らない55歳のろう者の女性が、いかにして言語を獲得したかというお話です。 ▼言語を獲得せずに成人した55歳のろう者の女性が 「ものには名前がある」と気づくまで それは田中先生が帝京大学

      • 風の音と、心の音~「聞こえないこと」の思索と物語

        難聴児医療・教育界の92歳の長老、田中美郷先生が教えてくれたこと⑤初回のこのシリーズでは、半世紀にわたり、医師でありながら、そのワクを超えて難聴児の療育に携わってこられた田中美郷(よしさと)先生の思いや、そのベースとなった哲学に迫ります。 5回目の記事では、エミちゃんという難聴乳幼児が補聴器をつけ、いかに「ものには名前がある」ことに気付いていったか…、という小さな物語をお伝えしたいと思います。 ▼ものに名前があると気づくことが「言語獲得」の出発点 大学病院で難聴乳幼児

        • 風の音と、心の音~「聞こえないこと」の思索と物語

          難聴児医療・教育界の92歳の長老、田中美郷先生が教えてくれたこと④初回のこのシリーズでは、半世紀にわたり、医師でありながら、そのワクを超えて難聴児の療育に携わってこられた田中美郷(よしさと)先生の思いや、そのベースとなった哲学に迫ります。 ▼「思考の道具としての言語を身につけさせたい」 田中先生は、信州大学医学部付属病院耳鼻科で診療に当たられていた松本時代、その後、東京の北区十条にある帝京大学医学部附属病院耳鼻科で診療を担当された帝京時代を通して、難聴乳幼児の両親向けにホ

        風の音と、心の音~「聞こえないこと」の思索と物語

          東京都難聴児相談支援センターがまもなく、令和6年3月1日に開設されるそうです。新生児聴覚検査で「耳鼻科で精密検査が必要(要再検査)」と言われ、子どもが難聴と診断されたご両親や関係者の相談窓口。新生児に限らず、18歳迄の難聴児を持つご両親に全面的にアドバイス。悩みがある方はぜひっ!

          東京都難聴児相談支援センターがまもなく、令和6年3月1日に開設されるそうです。新生児聴覚検査で「耳鼻科で精密検査が必要(要再検査)」と言われ、子どもが難聴と診断されたご両親や関係者の相談窓口。新生児に限らず、18歳迄の難聴児を持つご両親に全面的にアドバイス。悩みがある方はぜひっ!

          風の音と、心の音~「聞こえないこと」の思索と物語

          難聴児医療・教育界の92歳の長老、田中美郷先生が教えてくれたこと③初回のこのシリーズでは、半世紀にわたり、医師でありながら、そのワクを超えて難聴児の療育に携わってこられた田中美郷先生の思いや、そのベースとなった哲学に迫ります。 ▼欧米の文献を読み漁る 1960年代、信州大学病院耳鼻科で、幼児難聴外来を担当された田中美郷(よしさと)先生は、難聴が発見された後の、「その難聴乳幼児たちの療育をどうするのか」という問題にぶつかりました。 そこで、何とかこの問題を解決する良い方

          風の音と、心の音~「聞こえないこと」の思索と物語

          風の音と、心の音~「聴こえないこと」の思索と物語

          難聴児医療・教育界の92歳の長老、田中美郷先生が教えてくれたこと②初回のこのシリーズでは、半世紀にわたり、医師でありながら、そのワクを超えて難聴児の療育に携わってこられた田中美郷先生の思いや、そのベースとなった哲学に迫ります。 ▼CORテストの開発で、難聴が早期に発見されるようになったけれど 第二次世界大戦が終わり、干支が一周りしようかという1957年。日本がサンフランシスコ講和条約に署名した6年後の春。信州大学医学部を卒業した田中美郷(よしさと)先生は、同じ信州大学

          風の音と、心の音~「聴こえないこと」の思索と物語

          風の音と、心の音~「聴こえないこと」の思索と物語

          難聴児医療・教育界の92歳の長老、田中美郷先生が教えてくれたこと① あなたの周りに、「聞こえない」人はいますか? 思いあたらないにしても、例えばお友だちが手話を覚えて、聞こえない人のボランティアをしていたり、「〇〇さんのお嬢さんが聞こえないらしい」という話が伝わってきたり。 あるいは、お父さんが年を取って「耳が聞こえない」と言い始めたり、というようなことは、あるのではないでしょうか。 『Silent』という「聞こえない」世界をテーマにしたテレビドラマ(2022年秋に放送)が人

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