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真ん中で考えるための知識☞小麦でつくるパンについて

「小麦で作るパンは体に悪い。」
そういった情報を目や耳にしたことがあるかもしれません。
結論から言うと、「小麦について正しく知らなければ、体の健康を害する可能性はあります。けれど、正しく知れば、心の健康を助ける味方になります。」

これは、私が学ぶパン学校での、東洋医学の先生からの教えによるものです。
詳しくお話ししていきます。

⚫︎東洋医学における小麦

•生薬名:しょうばく
•性質と作用:甘微寒
(甘=緩める、微寒=やや熱をとる)
肝と心へ作用する

→肝へ作用して興奮した熱を若干取り除き、心へ作用して緊張を緩めホッとさせる、ということです。こういった、体よりも精神面や心に作用する側面の大きいことが特徴です。

この精神面や心への作用を踏まえて小麦を見てみると、「小麦には依存性がある」とする見方に対しても、違う視点から眺め直すことができます。

今の日本で生活する多くの方が、自身の望むと望まざるとに関わらず、ごく自然に肝気が昂るような環境に身を置いています。肝気が昂るとは、興奮や緊張が生じてストレスが強い状態のことです。
例えば、通勤通学での満員電車・照明や映像広告などの光が溢れる街中・過度な人混み…。個人では避け難いストレスも少なくありません。

では、そのような状態で小麦を食べるとどうなるでしょうか?
興奮や緊張が緩み、ストレスが和らいで、ホッとするのです。
肝気が昂る→小麦を食べる→ストレスが和らぎホッとする…→肝気が昂る→~

つまり、肝気が昂るような生活環境にあることで精神面や心に変調が現れ、その結果、体が自然と小麦を求めるようになるということです。小麦自体に依存性があるのではなく、小麦を食べたくなるような生活環境が小麦への依存を生んでいる、ということなのです。
言い方を変えれば、今の日本では、知らず知らずに小麦の助けを必要としている人が少なくない、とも言えるのではないでしょうか。

「正しく知れば、心の健康を助ける味方になります」については、こういった理由によります。

では、「正しく知らなければ、体の健康を害する可能性はあります」について、
小麦の体への影響はどのようなものなのでしょうか。

今から1,000年あまり前に書かれた東洋医学の書物には「小麦は粉にすると微毒あり」との記載があるそうです。
小麦粉による健康への影響については、小麦のほとんどが輸入品であることや、それに付随する農薬の問題、小麦の形状による脱穀の問題など、様々な点で考える必要がありますが、ここではそういった問題は別にして、食べるものとしての小麦(粉)自体についてお話しします。

小麦粉に微毒があることを、食べることで得た経験から知ったであろう先人たちは、どのようにその壁を乗り越えたのでしょうか。

それは、発酵です。小麦粉を発酵させパンにすることで、より安全で安心して食べられる主食になったようです。さらに、その発酵過程において、酵母菌だけではなく乳酸菌も取り入れることにより、毒消し作用を高めていたとのことなのです。

乳酸菌が関わることで毒消し作用が高まるのはなぜなのか?
それは、五味(酸味•苦味•甘味•辛味•しおから味)の中で、毒を消す作用が最も強いものが酸味だからです。酸味は「あらゆる作用を内向きにする=抑制し、働きを無効化する」ので、乳酸菌発酵により酸っぱいパンにすることで、小麦粉の微毒を抑制し無効化することができる、ということです。

そして、さらに付け加えると、乳酸菌は「グルテン(小麦のたんぱく質)を消化できない問題」にも活躍します。なぜなら、パンづくりの過程において、乳酸菌がグルテンを消化吸収しやすい状態にまで分解してくれるからです。

小麦を主食とする地域で、昔からの製法で作り続けられてきた酸味のあるパンは、命を繋ぐ食べものにするべく試行錯誤した、先人の知恵によるものなのです。

⚫︎日本人とパン

小麦粉が持つ微毒を抑制した乳酸菌発酵のパンならば、日本人の主食になり得るのか?
東洋医学の教えから学んだ答えは、「なり得ない」です。

なぜならば、私たちのご先祖様の多くは、長きに渡りお米を主食として代々の命を繋いでこられているからです。つまり、現代だけの話ではなく、日本の地で何代にも渡り食べられてきたものによって、私たちの体はできているということです。
日本の山から湧く水を飲み、日本の土に育つ作物を食べて、それらを消化吸収し必要な栄養を得るのに最適な、胃腸の構造や腸内細菌になっているのです。
そのため、日本人の主食として白米に代わるものはない、というのが東洋医学での考え方です。

では、パンはなんなのか?
パンは「おかず」だそうです。
現代の生活環境では避け難い「肝気の昂り」を鎮め、ストレスを和らげるために、おかずとしてパンを食べる。
体の土台となる主食としては白米をしっかり食べて、その上で、ホッと安らぎたい時にパンを食べる。
「小麦は粉にすると微毒あり」を知った上で、何をどのくらい食べるのかを考える。

正しい知識を持っていれば、心身のバランスを保つためにパンが果たす役割は大きいと感じます。

⚫︎まとめ

小麦は、現代人が抱える精神面でのストレスを和らげる作用を持っているので、上手く取り入れれば、心の健康を助ける味方になります。
ただし、小麦を粉にすると微毒があるため、それを踏まえた上で食べるもの(小麦粉を材料としているもの)やその量を考えることが大切です。

伝統的な製法で作る酵母菌+乳酸菌発酵のパンであれば、体への負担を少なく食べることができます。
また、日本人の主食は、世の中の流行り廃りに関わることなく白米以外にないため、パンはあくまでおかずとして食べることも、心身が健康であるためにとても大切なことです。

今後も、偏らず傾かずを大切に、学んだことを発信していきます。
皆さまの参考になれば幸いです。


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