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わたし、ドリフ大好きなんですよ!

物心ついてから一番最初にお腹を抱えて笑ったのは、ザ・ドリフターズだと思う。

8時だヨ!全員集合!の、あのドリフ。

え?何年生まれ?今いくつ???そんなクエスションマークが飛び散らかると目に見えているからか、そもそもそんな話題にならないからか、友達にも付き合っていた人にも言ったことがない。

小学生だったわたしは、ケラケラと。いや、ゲラゲラと。もうお腹がよじれるとはこのことで息ができなくて呼吸困難になるくらいとにかく笑った。

きっかけは、何気なく見たテレビの特番かなにかだったと思う。そのとき受けた衝撃的な面白さにハマり父がレンタルビデオ屋でドリフのDVDを全巻借りてきてくれた。わたしはそれを何度も何度も飽きることなく観て、そして何度も何度も飽きることなく同じように笑った。

自分の笑い声で周りの音がなにも聞こえなくなる経験は、人生でそう何度もあることではないだろう。今でもコントの冒頭を観ただけでオチが何かわかってしまうくらい......もう、ほとんど暗記だ。

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ある番組で、志村けんの人生が生い立ちからなぞるように紹介されていた。いかりや長介に弟子入り志願をしたときのこと。靴も買えず裸足で街を歩くくらい貧乏だった下積み時代。そしてドリフターズのメンバーとして活躍し、いちコメディアンとして人気絶頂になっていくまで。

時より当時のことを思い出しながら本人がインタビューに答える。「なぜそう思ったのか、どうしてそうしたのか」。わたしはやっぱり、ひとつずつ想いを紐解くように人の人生に触れることが好きらしい。

テレビに向かって興奮気味に、「志村けんが一番面白い! 」と勢いよく言い放つ。自分の目がキラキラしているのがわかる。

久しぶりに観る画面の中の当時の彼は、いつだって楽しそうだった。笑わせることが楽しくて楽しくて仕方がないとばかりにコントを全力でする姿に、観る人は自然と笑みを浮かべ思わず声に出して笑ってしまう。

人を笑わすという好きなことをただ夢中にしている彼は、舞台の上で誰よりも楽しそうだった。その姿は、間違いなく小学生だったわたしを惹きつけた。


「人の笑顔や笑い声が好きなんでしょうね。」


ただ好きという気持ちだけで駆け抜けてきた人の言葉は、朝露のように誰にも汚されていない澄んだ透明な色をしていた。

人の心を動かすのは、いつだって自分が夢中になったことだ。その熱量と勢いに人は惹かれる。なんか楽しそうだと、ついていきたくなる。

「人を温かい気持ちにしたいのなら、まずは自分の中に蓄えること。持ち続けていること。」


50年間も、ずっとひとつのことを追求し続けてきた人が胸に留めている気持ちは、とてもシンプルで、それでいて見失いやすい何度でも立ち返るべきものだった。


「わたし、ドリフ大好きなんですよ! 」

聞かれてなくても、今度、誰かに言ってみよう。たぶん、あのときのわたしの笑顔は、誰に何の気を遣うことなく心から無垢に笑う「自分らしさ」のひとつだから。そして、いつどんなときでも、誰の前でも、ドリフが大好きな自分でいたいのだ。人に合わせた、人に求められた無難な"好き"を察して言葉にしなくていい。

忘れたくない、自分らしさは見つけるものじゃなく思い出すもの。そして続けることだと、思うから。

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