読解力を高めるにはどうしたら良いのか?子供達が通う小学校のライティング授業を紹介します

 昨日のことですが、国際学力調査の結果が発表されたというニュースをオーストラリア、日本ともで見かけました。

 この記事が解説しているのは
・日本の高校生の学力は科学、数学において世界トップレベルを維持
・それに比べると読解力がちょっと低い。「脱ゆとり教育」の成果が期待されたがあまり見られなかった

 オーストラリアの結果も気になるので調べてみると、日本とは全く逆のパターンでした。つまり、高(読解力)低(数学、科学)。面白い。

 読解力だけみれば、日本をはじめアメリカ、イギリス、ドイツとも統計的には差がみられないほぼ同じレベルですね。

 しかもよく考えると、オーストラリアのような移民国家は母国語ではない言葉で教育を受けている生徒も多いです。なので、多くの人がネイティブスピーカーである国(日本、中国、韓国、ドイツなどか)とは、ちょと事情が違う。

 それを踏まえると、オーストラリアの今回の読解力レベルは大健闘と言えるんではないでしょうか。

読み書きに力をいれるオーストラリアの小学校

 じっさいに、私が知っている限り(娘たちの学校を見ていると)、読み書きにはかなり力を入れているようです。

 娘たちの通うオーストラリアの小学校、ノー・ホームワーク・ポリシーということで宿題は一年を通して全くありません。ただし学校の図書室で借りてきた本を(宿題の代わりとして)、低学年のうちからかなりたくさん読みます。

 そして学校の授業では、ライティング(書く事)をとにかくやる。

 いったいどんな文章を書くのか?子供達に授業の様子を聞いてみたので、ここからまとめてみます。

ライティング授業の様子

 次女のクラス(小1)では下の写真をみて、物語をつくって文章を書いたそうです。

 書きだしの手助けとなるように、(写真右側) Story Starter! で ”このオオカミが今何をしているのか” 簡単に話の導入が最初から与えらえます。子供達はまずそれを読み、その後に何が起こるのか?それに続くストーリーを自分自身で作っていきます。

 小学校一年生にしては、なんか難しそうですよね(どうなのかな?)。

 こんな感じの物語創作を、題材を変えながら授業の中でやるそうです。

ライティングにはジャンル毎の形式がある

 長女にもう少し詳しく聞いてみると、そもそもライティングにはいろんなジャンルがあってそれを体系的に学んでいる。じっさいに授業の中で文章を書くことがかなり多い。

 ジャンルについては(私が)解釈するところだと、

①Narrative (いわゆる物語)
②Information (情報を整理しまとめ、相手に伝える文章)
③Poem (詩)
④Persuasive (直訳すると”説得する”という意味で、自分の主張を相手に伝え納得してもらうための文章ということ)
⑤Debate (文章のなかで異なる主張を並べて論点を整理する)

と、色々あるようです。

 低学年では、次女がやった”オオカミの話”のような自由な物語、架空のストーリ(①Narrative)を書くことから始めます。

 そして次女が今ちょうどクラスでやっているのは、②Informationというライティング形式。

 これは他の授業で絶滅しそうな生物を習ったのに合わせて、自分が調べた動物・植物についてその情報を整理して文章にしているようです。こども版Wikipediaみたいな仕上がりになるのでしょうか。

 図やグラフを多用してプレゼンテーション風に情報を伝えるのも一つの方法ですが、それをあえて文章にして書くという訓練なのかなあと感じました。

 自分の意見を述べるエッセイ

 そして長女(小4)ぐらいの学年になってくると、自分の主張・考えがその中心となる③Persuasive、④Debateという文章形式を書き始めていきます。

 (Persuasiveというのは自分の主張を相手に伝え納得してもらうこと)

 長女が実際にこれまで書いた文章のテーマ

自分の好きな色について。理由とともに説明
・鶏小屋の世話係をクラスから二人決める際に、立候補する人はどうして自分が世話係に適任なのかを伝える(実際に先生はこの文章を見て世話係を決めた)
学校の制服はあったほうが良いのか無くてもよいか。自分の考えを述べる
・オーストラリアの国旗はどうゆうデザインが良いか?今のデザインから一部変えるなら、どこを変えたら良いか?

 そして、このPersuasiveライティングには決まった文章の構成というのがあり、ひとつの文章の中でそのルールに従えば良いのです

 もの凄く簡単に説明すると、ひとつのアイデアをもった段落(パラグラフ)を次の通り並べていきます。

①導入(背景と自分が主張するポイントを簡潔に言う)
②主張する理由1(例を示すなど)
③主張する理由2(別の視点から見てみる)
④主張する理由3(もうひとつ理由を示す)
⑤結論(自分の主張やその理由を(違った表現で)言い換えたりして、文章をまとめる)

 こうやって考えると、パズルのようにパラグラフを組み立てる作業だけなので、(書いている内容はともかく)Persuasiveライティングを作る事はそんなに難しくないはずです。

 ちなみに先ほどの鶏小屋世話係を決める文章ですが、これってオーストラリアの就職活動に近いんですよね。

 A4一枚におさまる文章で簡潔に、「どうして自分を雇った方がよいのか、どんなメリットがあるのか」雇用主に自分をアピールします。それに成功し自分に興味を持ってもらえれば、そこでやっと職歴やスキルなどがのった詳細な履歴書を手にしてもらえる。

 これぞまさにPersuasiveライティングですね。

まとめ

 今現在の日本の学校がどんな感じかは全く情報がないのですが。

 ただ自分の昔の記憶をたどると、ライティングと言えば ”夏休みの読書感想文” という印象が強いんですよね。

 思い出すのは、本を読んでも何を書いて良いのか分からず、ちっとも原稿用紙が埋まらなかった事(笑)

 そんな経験も踏まえて、オーストラリアのライティング授業の良さそうな点を考えてみると

・ライティング技術が非常によく体系だっており、誰にでも理解しやすそう
・文章構成が定型の場合、読む人にとっても分かりやすい文章が書けそう
・色んな題材で繰り返し反復練習するので、文章を書く基礎がしっかりできそう
・他の授業科目(社会や理科)と上手くリンクさせることで、いろんな相乗効果がありそう

 これらは私の素人考えであり、しかも日本の国語授業の現状はしりません。ただひょっとして、この辺りに日本の生徒の読解力を向上させるカギ、ヒントってないでしょうかね(?)

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