Mishima Hiroshi

株式会社オフィス三島 三島鍼灸指圧治療室 鍼灸指圧師  愛知県鍼灸マッサージ師会会員 …

Mishima Hiroshi

株式会社オフィス三島 三島鍼灸指圧治療室 鍼灸指圧師  愛知県鍼灸マッサージ師会会員 八事整形会・八事整形医療連携会会員  俳人協会・現代俳句協会会員 藍生俳句会・いぶき俳句会会員  名古屋市高年大学鯱城学園講師 元愛知大学オープンカレッジ講師

最近の記事

俳句と“からだ” 200 まなざし(黒田杏子先生追悼) 

藍生俳句会の月刊俳句誌『藍生』に連載した「俳句とからだ」。丁度200回で終了した。これは黒田杏子先生の逝去によって藍生俳句会が幕を閉じたからだ。 黒田杏子先生にはたくさん書く機会を頂いた。ただ感謝するのみである。数日前、藍生俳句会の事務局から完全に会が終了する旨の連絡があった。黒田杏子先生の生涯のパートナーで写真家の黒田勝雄氏のご挨拶も同封されていた。この文章は「俳句とからだ」というタイトルにもっも相応しい内容になったと思っている。 今後会員はそれぞれの俳句の径に散ってい

    • 俳句と“からだ” 199  歳時記 鮓 

      俳句初学の頃、先輩から「馬手に歳時記、弓手に字引」と教えられた。ともかく小まめに歳時記と向き合い、辞書を引けという指導だ。 比較文学研究者前島志保氏の書評によると、東聖子・藤原マリ子編『国際歳時記における比較研究――浮遊する四季のことば』(笠間書院2011年)において、歳時記には「①一年中の季節に応じた祭事、行事、自然現象など百般についての解説を記した書。②誹諧で、季語を四季順に整理、分類して解説した書物。季寄」の二種類があるとされている。また同書中の東聖子「『増山井』にお

      • 俳句と“からだ” 198  季語 紫雲英

         『俳文学大辞典』(角川書店)には次のように記載されている。 季語とは連歌・誹諧・俳句において季を表す詩語。古くは「四季の詞」「季の詞」「季詞」といい、「季語」という言いかたは大須賀乙字(『アカネ』明治四十一年六月号)に始まる。 このように、季語は伝統的詩歌において用いられる季節を表す言葉である。したがって有季俳句、無季俳句に関わらず季語を勉強することは詩歌に関わる者にとって必須の課題となる。そこで今回、自分なりに季語に対峙してみようと思う。  鋤き込みし紫雲英に

        • 俳句と“からだ” 197 『語りたい兜太 伝えたい兜太』

           董振華が聞き手と編集を担った『語りたい兜太 伝えたい兜太』(コールサック社)が上梓された。黒田杏子監修のもと、中国出身で日本在住の董が金子兜太に深く関わった13名へ行ったインタビューをまとめている。同社から再刊され話題を呼んだ『証言・昭和の俳句』(聞き手・編者黒田杏子)の形式を踏襲し、各人各様の兜太観が対談によって燻り出され興味深い。ぜひ一読を勧めたい。  特に共感した部分を紹介しよう。 関悦史は「岡本太郎とか丹下健三とかみたいに昭和史と絡み合うように大成して、そのことで

        俳句と“からだ” 200 まなざし(黒田杏子先生追悼) 

          俳句と“からだ” 196 賢治と米

          「悦凱陣(よろこびがいじん)」は四国香川県琴平にある酒造の醸す銘酒である。ラベルを読むと原料米が「花巻亀の尾」とある。地名と米の名前から即座に宮澤賢治(1896~1933)が想起された。賢治の人生は稲と深く関わっていたからだ。 生きかはり死にかはりして打つ田かな 村上鬼城 1893年、山形の農民阿部亀治が、冷害で倒れた稲の中に3本だけ元気な稲穂を見つける。彼はそれを譲り受け4年かけて新品種を産み出す。これが「亀の尾」である。倒れ難く害虫に強く早く育つという利点がある。彼は

          俳句と“からだ” 196 賢治と米

          俳句と“からだ” 195 季語と心情

          季語は季節の物事および季節感を表す言葉である。俳句に詠み込まれることで 「作者と読者との共通理解の媒介」(尾形仂)となる。 原爆図中口あくわれも口あく寒  加藤楸邨  掲句は句集『まぼろしの鹿』(1967年刊)に収められている。戦後8年を経た昭和28年(1953年)の冬、広島を訪れ原爆図と対峙して詠まれた。「原爆図」と前書きがあり、「原爆図唖々と口あく寒鴉」など26句が記されている。「原爆図」は丸木位里・俊夫妻の筆による「原爆の図」で原爆投下直後の阿鼻叫喚を描いた作品群だ

          俳句と“からだ” 195 季語と心情

          俳句と“からだ” 194 『鈴木しづ子100句』

           戦後俳壇を駆け抜けた俳人鈴木しづ子の生涯はさまざまな伝説に包まれている。  鈴木しづ子 俳人。生没年未詳。大正14(1925)・1・4生れとも。戦時中は神奈川県川崎市の岡本製作所、戦後は東京府中の東芝に勤め、昭和23年(1948)に職場結婚。一年余で離婚し、米軍基地周辺で働く。俳句は同18年から松村巨湫に師事し、『樹海』に拠る。句集『春雷』(昭21)、第二句集『指環』(昭27)には奔放な私生活を詠む句が多い。同28年、岐阜県各務原から失跡。「肉感に浸りひたるや熟れ柘榴」(

          俳句と“からだ” 194 『鈴木しづ子100句』

          俳句と“からだ” 193 髙田正子著『黒田杏子の俳句』後編

           黒田の7冊の句集には〈花を待つ〉を詠んだ句が21句ある。髙田は「当然のように〈花を待つ〉を季語として受け止めてい」た。ところが髙田の所持する歳時記には〈花を待つ〉を季語の見出し語とした本がないという。試みに手持ちの数種の歳時記を確認したがその見出しの季語はない。 髙田が抽出した〈花を待つ〉で最も古いのは平成7年(1995)刊の『一木一草』にある。  花いまだ念佛櫻とぞ申す 季語は〈花を待つ〉そのものではなく〈花いまだ〉であるが「紛れもなくそのこころが汲めるので抽い」たと

          俳句と“からだ” 193 髙田正子著『黒田杏子の俳句』後編

          俳句と“からだ” 192  髙田正子著『黒田杏子の俳句櫻・螢・巡禮』

           髙田正子著『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』が出版された。黒田杏子の誕生日2022年8月10日を発行日とする記念すべき大書である。黒田杏子の俳句を弟子の髙田正子が季語を中心としたキーワードで丁寧に読み解いている。本書は藍生俳句会結社誌「藍生」に「テーマ別黒田杏子作品分類」として2019年1月号から2021年12月号まで連載された文章の再構成である。 髙田の文体は静謐で精緻、平明で自然体である。しかし、その筆の奥に深い読みが記されており油断ならない。冒頭の「『はじめに』代え

          俳句と“からだ” 192  髙田正子著『黒田杏子の俳句櫻・螢・巡禮』

          俳句と“からだ” 191  小川楓子句集『ことり』

           小川楓子(1983年生まれ。金子兜太の「海程」、山西雅子の「舞」に参加)の第一句集『ことり』が話題となっている。2022年2月刊行、早くも6月に増刷とのこと。句集の登場に黒岩徳将、相子智恵、大塚凱ら若い俳人達による読書会がZoomで行われた。その評価の高さが理解できる。旧来の俳壇に見られた結社縦割りの評価ではなく、作品自体が横断的に評価されるという風通しの良さの表出である。俳壇にはびこる権威主義を超えてこのような評価のあり方が一般的になれば新しい才能が参加しやすくなるのでは

          俳句と“からだ” 191  小川楓子句集『ことり』

          俳句とからだ 190 人にはどれほどの土地がいるか

          連載 俳句と“からだ” 190 三島広志(愛知県) 人にはどれほどの土地がいるか  2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻した。6月14日現在、戦火が世界に拡大する懸念を抱えたまま戦争状態が続いている。両国の歴史的経緯には詳しくないが、今の時代に武力による侵攻が易々と行われたことに驚きと怒りを禁じ得ない。 侵攻を機会にウクライナ民話『てぶくろ』やロシア民話『おおきなかぶ』が読まれているという。『てぶくろ』は森の中に落ちていた手袋にネズミやキツネ、オオ

          俳句とからだ 190 人にはどれほどの土地がいるか

          俳句とからだ 189 表語文字と表音文字

          連載 俳句と“からだ” 189 三島広志(愛知県) 表語文字と表音文字  先月号に諸葛菜のことを書き、同時にたくさんの植物名を上げた。諸葛菜以外の植物名はカタカナで表記した。それには理由がある。NHK放送文化研究所のホームページ「放送現場の疑問・視聴者の疑問」に次のように書かれている。 Q 動物や植物の名を、カタカナ ひらがな 漢字と色々書いていますが、その基準はどうなっているのでしょうか。 A 動物や植物(含む野菜)を表す漢字が常用漢字表にあれば漢字。なけれ

          俳句とからだ 189 表語文字と表音文字

          俳句とからだ 188 諸葛菜

          連載 俳句と“からだ” 188 三島広志(愛知県) 諸葛菜  初夏になると路傍の草が開花し街を楽しませてくれる。仕事場へ行く途上、ナガミヒナゲシやオオイヌノフグリ、スミレ、セイヨウタンポポ、マツバウンランなどの草を目にする。お気に入りは諸葛菜。姿が大根の花や菜の花に似ており紫の花を咲かせる。同じアブラナ科だ。 諸葛菜は春の季語である。但し、手持ちの講談社日本大歳時記と新版角川俳句大歳時記、成星出版の現代歳時記には掲載されているが、平凡社の俳句歳時記や河出書房新社の新歳時

          俳句とからだ 188 諸葛菜

          俳句とからだ 187 平井照敏編『新歳時記』

          連載 俳句と“からだ” 187 三島広志(愛知県) 平井照敏編『新歳時記』 2021年9月、河出書房新社から平井照敏編『新歳時記』(全五巻)が復刊された。既に1989年発行の文庫版全五冊を所有しているが紙が劣化し読み難いので新版全五冊を買い揃えた。この歳時記は好評で初版の後、改訂版(1996)、復刻版(2015)と発行、今回は軽装版初版となる。 平井照敏(1931~2003)は加藤楸邨門の俳人であると同時にフランス文学、特に詩の研究者としても知られる。俳句結社「槙」を主

          俳句とからだ 187 平井照敏編『新歳時記』

          俳句とからだ 186 西川火尖句集『サーチライト』

          連載 俳句と“からだ” 186 三島広志(愛知県) 西川火尖句集『サーチライト』 西川火尖の第一句集『サーチライト』(文學の森、2021年)は2006年からの277句を収めている。西川は1984年京都市生まれで「炎環」(石寒太主宰)所属。 詩歌俳同人「Qai」(2018)結成、「子連れ句会」運営など精力的に活動している。受賞歴に「炎環みらい賞」「北斗賞」がある。句集名のサーチライトは探照灯のことで一方向に強い光を照射し遠くの敵などを捜索する光源だ。句集全体をサーチライトが

          俳句とからだ 186 西川火尖句集『サーチライト』

          俳句とからだ 185 連用形から名詞へ

          連載 俳句と“からだ” 185 三島広志(愛知県) 連用形から名詞へ 俳句結社誌から原稿依頼をいただき投稿したところ、編集長から「ほのめき」という言葉に関して問い合わせがあった。スーパー大辞林3.0(三省堂)と広辞苑第七版(岩波書店)に当たってみると、どちらも「ほのめく」という動詞は納められているが、「ほのめき」は見出し語になっていない。 精選版日本国語大辞典(小学館)には次のように掲載されていた。 ほの・めき【仄-】 〘名〙(動詞「ほのめく(仄-)の連用形の名詞化)ほの

          俳句とからだ 185 連用形から名詞へ