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25セント 読書感想文

年に一度開かれるJapan Festa. そこで一冊の本を25セントで購入。
片岡義男氏の 缶ビールのロマンス。

中学生だっただろうか。
角川文庫から出されていた片岡氏の小説をすべて読んだ。
相当昔である。

彼の小説を読み、「大人」に憧れた。
主人公の女性も男性もとても色気のある、美しいと想像できるものだった。
表現の中のカタカナは省略されず、また、英語の読み方として表記されている。
例えば
エレヴェーター elevator    
ヴィデオカセット video cassete
リモート・コントロール remote control 
キチン  kitchen  
イアリング  earring 

いくつかの短編で構成されているが、いずれの主人公も20代から30代前半と言えそう。
しかし、大人である・・
当時の私だからそう思ったのではなく、今読み返しても素敵な大人たちだ。

短編のほとんどに、浮気をしている男性が登場する。
正直しょうもない。
昔も今も、そんな事情は変わらないが、セリフのそれぞれに
こんな男性なら仕方ない・・と思う節がある。
「章子」
と、私は言った。
ジンを飲んで
「なあに」
と彼女は答えた。
「連れて帰りたい」
「私をお部屋に連れて帰ってくださるの」
「そうしたい」

バーでの短い会話。飲み物はジンである。
やっすい缶酎ハイではない。

ストレートに言える彼は女性が「No」と言わないことをわかっている。
女性に散々飲ませて意識をなくさせるような姑息な真似をする必要がない男性だ。

今改めて手にして読んでみると、日本語の本来の美しさを感じる。
ことば一つひとつが丁寧で、ゆとりと穏やかな時間の流れを感じる。


カワイイ Kawaii が日本の代名詞化しているこの頃。
中学生が20代の男女を「おじさん・おばさん」と言ってしまう。

今の中学生がこれを読んだらどんな状況を想像するだろうか。
今の中学生も「大人」を想像し、憧れるのだろうか。






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