見出し画像

サプライズ! 0次会

内容紹介
『サプライズ! 0次会』【シナリオ形式】

 京都・木屋町、高瀬川のそばを歩いている梶浦厚志と児玉弘恵。二人の母校である、すでに廃校になっている小学校を見掛けると、一週間後に結婚式を挙げることを報告するつもりで中へと入って行く。すると……
 サプライズ! 講堂に集まった二人の友人たちが結婚式前の「0次会」を開いてくれていたのだ。
 歓喜する弘恵!
 ところが事態は予期せぬ方向へと展開していく……。

画像1

サプライズ! 0次会(1/2)

○ 京都・河原町駅周辺

○ 木屋町通・高瀬川そば
   梶浦厚志(33)と美人の児玉弘恵
   (32)が手をつないで歩いている。

○ 元・誠実小学校・正門前
   昭和初期に建設された、かなり古い小
   学校。今は廃校になっているであろう
   ことは、容易に想像できる。
   展示会の看板が出ている。入場無料。
   梶浦と弘恵が立ち止まる。
弘恵「あれ? 今、こんなことしてるんや」
梶浦「懐かしい?」
弘恵「二十年なるんかー。私らが最後やもん
 ね。さすがに古くなったけど、今も健在や
 なんて嬉しいな」
梶浦「このスミさんなんかまだピンピンして
 そうや」
   ――正門右にある創立者の顕彰碑。
梶浦「一寸見て行こか?」
弘恵「え?」
   梶浦、弘恵の手を引いて中に入って行
   く。
梶浦「タダみたいやし。二十年目の報告に」

○ 同・外観

○ 同・エントランス
   展示会場は二階。その表示がある。
   が、梶浦は講堂の方へと歩いて行く。
弘恵「?」
   二人が廊下を歩いて行く。
   ――目の前の講堂が近づいて来る。
   ――そして、講堂の中に入る。

○ 同・講堂内
   梶浦と弘恵を彼らと同世代の多くの男
   女がクラッカーを鳴らして迎える。
   「梶浦厚志&児玉弘恵♡結婚おめでと
   う」の横断幕が飾られ、立食テーブル
   に料理が並べられている。
全員「(大声で)サプライズ!」
   感極まる弘恵。
   その彼女を見て微笑む梶浦。
   ――幸せそうな二人。

○ タイトル

○ 居酒屋・店内(夜)
   グラスを手にテーブルを囲む六人の男
   女。プレイボーイ風の市田幸一(33)
   と、亦野雅之(33)、的場和行(33)、
   加藤愛子(32)、酒井美咲(29)、村
   上涼子(29)。
市田「お疲れ! 乾杯!」
全員「乾杯!」
   全員で乾杯し、一杯を口にして、拍手
   する。
市田「今日は学んだな。場所、学校やし」
美咲「よう、言うわ」
市田「しかし、企画は良かった。ええアイデ
 アやったな。サプライズ0次会」
涼子「うん。結婚式の後の二次会もええけど、
 ああいう0次会もええわ」
亦野「丁度結婚式の一週間前やしな」
的場「サプライズや。まさか、思うたやろな」
涼子「弘恵さん、えらい喜んでたもんな」
市田「あのアイデアは俺やで。あいつら、結
 婚式は身内だけでジミ婚の予定やったし、
 二次会もやれへん予定やったからな。それ
 で梶浦に、俺らがコソーッとパーティー開
 いたろうて言うたんや」
涼子「まさか! いう顔してたもんな、弘恵
 さん」
市田「うん。まさしくサプライズや」

○ 四条通・回想
   梶浦と弘恵が手をつないで歩いている。
市田の声(オフ)「梶浦の奴がいつものデー
 トの様な感じで弘恵ちゃん連れて、四条通
 を歩いて来る」

○ 木屋町通・回想
   梶浦と弘恵が手をつないで歩いている。
亦野の声(オフ)「そして気まぐれの様に木
 屋町通に入ると目の前に現れたのは二人の
 母校。子供の頃に通った」

○ 元・誠実小学校・正門前・回想
   梶浦と弘恵が立ち止まる。
的場の声(オフ)「何の気なしに誠実小に入
 る」

○ 同・エントランス・回想
   梶浦が弘恵の手を引いて中に入って行
   く。
的場の声(オフ)「すると――」

○ 居酒屋・店内(夜)
亦野「何とそこが二人の結婚式0次会会場!」
市田「サプライズ!」

○ 元・誠実小学校・講堂内・回想
   ――幸せそうな梶浦と弘恵。
   出席者が飛ばしたジェット風船が色と
   りどりに。
市田の声(オフ)「ド派手に飛ぶジェット風
 船が二人を迎える」
亦野の声(オフ)「そして皆が一斉に祝福の
 言葉を投げ掛ける」
   出席者が口々に「おめでとう」「弘恵
   ちゃん綺麗よ」「幸せになってね」等、
   大きな声で叫んでいる。

○ 居酒屋(夜)
   時々、店員が料理を運んで来る。
美咲「あんな弘恵さんの嬉しそうな顔、見た
 ことなかった。パーッとピンクに染まって」
涼子「綺麗やったなわ。もともと美人やったけ
 ど、一段と綺麗やった」
的場「弘恵ちゃん、言うてたがな。(弘恵を
 真似て)人生で最高の瞬間ですう~て」
   美咲と涼子、笑う。
亦野「なあ」
市田「問題はその2人が別れる事になったこ
 とや」
亦野「おお!」
的場「あれこそサプライズや」
市田「サプライズやあるかい! 何であんな
 こと、なったんや?」
亦野「さぁ」
的場「さぁ、て亦野。0次会の料理係」
亦野「え? 的場、お前、俺が用意した料理
 のせいや言うんか?」
市田「そやな。それもある」
的場「亦野。お前、弘恵ちゃん、料理なんか
 何も出来へんの知ってたやろ?」
亦野「さぁ、そうやったかなぁー」
市田「梶浦の奴、俺らの中で一番の出世頭や
 けど、女のことは何も分かっとらんやっち
 ゃ。弘恵ちゃん、美人でそのうえ料理まで
 上手くて家庭的やて信じとったんや」

○ 弘恵のワンルームマンション・回想(夜)
   エプロン姿の弘恵が梶浦を迎え入れる。
   テーブルの上には豪華な食事が用意さ
   れている。
的場の声「そうや。それで弘恵ちゃん、梶浦
 を部屋に呼んで、手料理や言うて、ケータ
 リングの料理出して食べさせてたんや」

○ 講堂・回想
   テーブルにある料理は前のシーンのも
   のと全く同じ。
的場の声(オフ)「それと同じのがこの0次
 会の料理で出た」
梶浦「(テーブルの料理を見て)? ――」
弘恵「(その梶浦の様子を見て)――」

○ 居酒屋(夜)
亦野「サプライズ!」
的場「サプライズやあるかい。それで梶浦の
 機嫌が急に悪なったやないか。可愛そうに。
 男の純情、弄ばれよって」
市田「あれでせっかくのパーティーがいきな
 り不穏な空気に変わったやんけ」
亦野「そら確かに悪かった。けどな、的場。
 お前のあれも酷かったで」
的場「あれて? ゲームか? パーティーゲ
 ーム」
市田「うん。ゲームも酷かった」
的場「あれ、昔、先輩らやって大ウケしたて
 聞いたからやったんや」
亦野「昔て、バブルの頃やろ? 何でもアリ
 の時代やんけ」
美咲「そうやわ。せいぜい新聞紙を二つ折り
 にしていくやつとか、ほら、口にストロー
 咥えてそこに輪ゴム引っ掛けてリレーする
 やつとかにしといたら良かったんやんか」

○ 講堂・回想
   梶浦&弘恵、さらに五組ほどの男女が
   ペアになって立っている。
   そのペアに的場が一球ずつピンポン球
   を配って行く。
亦野の声(オフ)「それを、男女カップルチ
 ーム作らせて」
   的場が立っている男性のズボンの右下
   からピンポン玉を入れる様子を見せ、
   そこから右足を上に上り、股間を回っ
   て、左足の上から下へと指さして見せ、
   ズボンの左下からピンポン玉を出す様
   子を見せる。
亦野の声(オフ)「女に男のズボン、右から
 ピンポン玉入れて左から出させるようなゲ
 ームやりよって」

○ 居酒屋(夜)
的場「ドキドキするやろ? 折り返し地点。
 あれ? 玉が三つ?」
亦野「アホ! セクハラじゃ!」
市田「弘恵ちゃん一人、真面目にあのゲーム
 やってたやないか」
亦野「意外に手捌きがええ」
市田「梶浦の奴、俺らの中で一番の出世頭や
 けど、女のことは何も分かっとらんやっち
 ゃ。弘恵ちゃん、美人でそのうえ奥手で淑
 やかやて信じとったんや」
的場「サプライズ!」
亦野「サプライズやあるかい。それで梶浦の
 機嫌が更に悪なったやないか。可愛そうに。
 男の純情、弄ばれよって」
市田「あれでせっかくのパーティーがむっち
 ゃ不穏な空気に変わったやんけ」
的場「分かった分かった。俺がやったゲーム
 が悪かった、いうことで。反省会終わり!
 あとは俺らで楽しもう! 改めて乾杯!」
   亦野と的場、「おおー!」「ういー!」
   等と言いながら乾杯する。
愛子「もう、あんたら全然やな」
   男ども、「?」となる。
愛子「反省だけならサルの方が上手いで。や
 ろ?」
市田「ん? まだ何かあったか?」
愛子「ホンマ、本質から目ぇ逸らして――何
 で、あんな人がおってん?」
亦野「何で、て――俺ら会社の仲間以外にも
 あいつらかて、学校の友達とかおるんやか
 ら、な?」
市田「やっぱりそれ、やらなアカンか?」
愛子「当たり前や。何の反省会や」
市田「会社以外は俺が梶浦に交友関係と連絡
 先聞いて、招待した。弘恵ちゃんの方は―
 ―」

○ 講堂・回想
市田の声(オフ)「――彼女の同級生の萩原
 さんに任せといたらええて」
   スタンドマイクで萩原秀子(32)がス
   ピーチしている。
秀子「会社に入ってから、しかも会社同士が
 合併して、部署も全然関係なかったのに、
 紹介されて出会ったやなんて、運命やて言
 うけど、ホンマは梶浦さんは一学年上で、
 私は三年生の時から知ってたのに、弘恵は
 知らなくて、天然は生れつきやったんです」
   場内から、薄い笑いがあがる。
秀子「ホンマやったら運命の出会いはもっと
 早かったのに。でも良かったね、弘恵!
 おめでとう!」
   場内から拍手があがる。
   秀子が立食テーブルに戻って行こうと
   する。と、市田が止める。
市田「次、どなたか紹介して下さい」
秀子「次? あ!(弘恵に悪戯っぽく笑って)
 遠藤君、来てるわよ」
市田「エンドウサン?」
秀子「は、じ、め、て、の、人。ね? 遠藤
 くーん!」
   秀子、講堂入口に向かって手を振り、
   立食テーブルに戻って行く。
   入口から遠藤博(32)が入って来る。
弘恵「!?」



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?