隣に人がいない

夏だ、海だ、怖い話だ。
クーラーで「涼」大量摂取の現代でもはやゾッとする感覚など涼しさのかけらも感じないけど、それでも夏の風物詩として怖い話は娯楽となっている。
私も日常生活で恐怖を感じる時は多々ある。しかもいつも似たようなことで。

あの時、電車の座席に座っていつも通りにスマホを片手で操作していた。ふと顔を上げた時、向かいの窓ガラスに映ったのは、7人がけの席にみっちりと人、でも私の両隣だけ空席になった光景だった。
あたし座ってるだけで人に距離を取られるようになっちゃった?

この瞬間が怖い。私の両隣だけ空くのが嫌われているように思える。
あれからラジオで「ドライバーの皆さん、安全のために車間距離をしっかりとってくださいね」と言うと、あの時私だけは安全運転だったなぁなどと思いついて満足している。自分の程度が低くて怖い。

あとは電車やスタバなど、座ると隣の人が即座に移動するということが良くある。
わざわざ移動する理由があったとなると、初めの頃は自分の体臭がきついのではないかと、袖で汗を拭うふりをして脇をかいだりしていた。そして普通に傷ついている。ホワイトモカの味なんかしない。

ただ人に話すと、その人もそういう経験はあるという。めっちゃわかるぅ〜と同意をされるけど、おそらく皆さんとは頻度が違う。
なぜなら私はすでに一席距離を取られ慣れているので、周りに人がいなくなってもホワイトモカの味はしっかり美味しいし、電車の椅子もふかふかに感じている。
ある日ほぼ満席のスタバで腰掛けた時、左右と前に座っていた人が一斉に帰って行った時はこのフルコンボによくわからない興奮を得たドン。

この前、映画の試写を見に行った。
自由席だったので、なるべく見やすい席で見たかった。
観客はまだそんなにいなかったけど、一等席にはすでにお兄さんがいた。
(そんな張り切っちゃって、よっぽど楽しみだったんだね…)ニチャアと微笑んだ私は、そこから一つ席を空けた右側に座ったところ、お兄さんは瞬く間に良い席を捨てて一番左の席に移動して行った。
こんなの初めて!一席空けても嫌がられる時の耐性まだないよ!
かなりショックを受けたからか、見た映画はちゃんと記憶にない。
座るの怖い。

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