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地縁組織と筋トレ


◾️地縁組織の維持は大変

自治会や子供会、老人会などの地縁組織の衰退が止まらない。行事の廃止にとどまらず、子供会などは特に解散する事態に展開する例も出てきている。こうなる主な要因は「役員の担い手不足」であることは間違い無いだろう。
町内会は、行政からの依頼事項を受け止めることも多く、町内会長さんらの話を伺うと、結構な覚悟と時間がないと大変そうな印象を受ける。企業の定年退職年齢も上がり、一昔前であれば60歳くらいで地域役員の候補者が確保できたが、現状では70歳超えでも確保できるのかどうか、というところだ。
子供会は、一昔前であれば、専業主婦という無償で地域社会に貢献できる人材が大量にいたが、今や専業主婦は激減の一途となり共働きが標準と考えるべき時代となった。となると、子供会をマネジメントする時間を確保することが困難となり「役員になるのは無理だから、子供を子供会から卒業させる、あるいは入れない」ということとなる。
老人会は、およそ町内会と構造は同じで、超高齢社会に突入して、山ほど高齢者は日本にいるものの、企業活動(賃金労働)を卒業して、地域社会に参画する時間を捻り出せる人の数は多いとは言えない。
以上のように、地縁組織の担い手不足は構造的なものと言える。担い手不足になると「残された側の負担がさらに増える」という悪循環が起こる。するとさらに担い手になりたい人、なってもいいかなと思う人の数が減り、さらに担い手不足を加速していく。
僕は「なくても良い組織であれば無くして良い、やむなし」という現実主義的な視点を持っているが、よく言われるように、災害時の備えなどを考えると、ある程度、地理的に近い場所にいる方々とのご縁(地縁)は維持、再生すべきとも考えている。
このため以下、どうしたら地縁組織を維持、再創造できるのかという視点で議論を進める。

◾️負担軽減の是非

自分は職能柄、自治体職員とはお話をすることがある。すると、行政側も、行政からの依頼事項が多く、それが地縁組織の負担となっている自覚は広がってきているようだ。このため、様々な依頼事項、負担をどう減らすのかが課題となってくる。
しかし、ここで僕が問題提起をしたいのは「地縁組織が弱っているのはわかっているが、流れのままに負担軽減、活動縮小をしていいのだろうか(行政および公共を担う志をもつ人間は無抵抗ではいけないのではないか)。縮小廃止して良い活動とそうでない活動はあるのではないか」ということだ。

◾️介護予防をヒントに考える

話は飛躍するが「高齢者の介護予防」と「地縁組織の活力予防」を並べて考えてみたい。高齢者の介護予防(自立生活の維持に向けた注意や工夫)では、よく「栄養」「運動」「社会参加」の三つが重要と言われている。
特に「運動」に関していうと、「有酸素運動」と「筋肉トレーニング」の2つが重要とされている。前者は、ジョギングなど軽い負荷をかけて心肺機能や骨密度を維持、強化することが求められる。後者は、例えば国内で広まりつつある健康体操では、重りなどを手足につけて軽い負荷をかけながら筋肉の維持、強化することが求められる(週1回以上などの頻度も重要)。
何が言いたいのかというと、人体は、ある程度の負荷をかけて、継続的、持続的に使っていないと、能力が低下してしまい、自立生活にも支障が出るようなところまでいってしまうという構造である。ひょっとしたら地縁組織にも同様の構造が言えるのではないか。地縁組織も、ある程度の負荷をかけて、継続的、持続的に活動していないと、能力が低下してしまい、自律的な組織運営にも支障が出るようなところまでいってしまう。
つまり、高齢者が自立生活を維持するためには、意識的に軽く負荷のかかる運動や筋トレが必要なように、地縁組織が活力を維持するためにも、意識的に軽く負荷のかかる運動や筋トレに相当する活動が必要、と考えられる。

◾️機能維持の動機づけ

「いやいや、地縁組織は弱体化傾向にあるのに、そんなこと(負荷のかかる活動を最低限維持する)は無理でしょ」という人がいると思う。しかし、それは高齢者の介護予防も同じだと思う。高齢者にとっても、ほっておくと日々知力、体力あるいは気力が低下していくわけで、そうなるよりは「少しでも身体機能を維持し、自立して生活できる状況を維持したい。そして、〇〇(自分の生きがいなど)をしたい」という未来へのビジョンがあればこそ、元気であること(機能維持)に対する動機づけがあるのだと思う。
だとすると、地縁組織にとって「少しでも組織の機能や活力を維持して、成し遂げたい何か」を改めて問うことで、組織を維持、再創造する動機づけが実現しうるのではないだろうか。

※冒頭の写真は、UnsplashJonathan Borbaが撮影した写真。

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