三矢勝司

まちづくりコーディネーター。公共空間のマネジメント(計画、管理、活用)、新しい自治、都…

三矢勝司

まちづくりコーディネーター。公共空間のマネジメント(計画、管理、活用)、新しい自治、都市のあり方に関心を持っています。名古屋学院大学現代社会学部准教授。名古屋工業大学客員准教授。NPO岡崎まち育てセンター・りた創業者。岡崎市出身。

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都市再生とNPO

1 都市再生=デベロッパーがやること? とある社会学者から「三矢さんは都市・まちづくりを専門としているのに、どうして非営利組織(NPO)に詳しい(実践している)のですか?」との質問を受け、適宜回答をさせてもらったのだが、そのコメントが意外と大事なことを言っていた気がするので、備忘録的に残しておく。 自分のような1990年代に大学生を過ごした都市、まちづくりの人間からすると、非営利組織・NPOと都市再生はつながっていて当たり前だと思うが、一般の方々からすると、つながっていない

    • シネマ/まちづくり

      1 まちづくり助成の成果報告会 2024年4月13日、名古屋都市センターにて、まちづくり助成金の活動成果報告会&交流会が開催された。2023年の助成を受けたまちづくり団体は合計12団体であった(注1)。筆者・三矢は助成金事業の審査委員長として、ここに参加した。交流会の終わりの挨拶で述べたお話が、今後の参考になる話をまとめたものなので、ここに紙上再現しておく。 2 シェアリング・エコノミーを育もう 活動報告を伺っていると、様々な支援や協力を得て、まちづくり活動が発展的に

      • クラウドファンドとグラウンドファンド

        1 祝!クラファン成功  筆者・三矢は、縁あって愛知県春日井市にある高蔵寺ニュータウンの廃校リノベーションプロジェクト「ノキシタプレイス」のクラウドファンドを支援してきた。目指していた290万円に対して、3,499,626円の志が寄せられ、無事に2024年6月のグランドオープンへの弾みをつけることができた。ここまでの経過をメモに残しておく。 2 オールドニュータウンとしての高蔵寺  愛知県春日井市にある高蔵寺ニュータウン(since1968/日本で二番目に古い大規模ニ

        • 公園のコンディションを育む ー籠田公園と岡崎市公園協議会

          1 使われ過ぎる公園 2021年から23年の3か年、僕は岡崎市公園協議会の委員長を拝命し、各種の議論に携わってきた。任期を終えるにあたって、以下振り返っておく。最も思い出深いのは「籠田公園が使われすぎる問題の解決」であった。 ことの発端は2022年5月のゴールデンウィーク。当時、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きをみせてきた時期であり、それまでコロナを理由に取り止めがされてきたイベントの再開はもちろん、従来、建物内で行われていたイベントも安全をみて公園で行いたい、とい

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        都市再生とNPO

          地域まちづくりを覚醒させる7システム

          はじめに 2024年2月18日、建築士会主催「地域まちづくりサミット2024―愛知のまちづくりの現状と課題」が開催された(註1)。三矢は、全体進行とパネルディスカッションのモデレーターとして参画する栄誉を得た。事例報告では、有松(名古屋市緑区/歴史的街並み、伝統産業)、錦二丁目(名古屋市中区/エリアマネジメント)、豊橋(リノベーション)、幅下(名古屋市中区/歴史的建物活用)の4つがあり、その後100分におよぶ壮大なパネルディスカッションが展開した。当日、三矢が総評としてコ

          地域まちづくりを覚醒させる7システム

          QURUWA戦略-改訂2024に寄せて

          0 はじめに 2024年2月7日に、乙川リバーフロント地区公民連携まちづくり基本計画、通称QURUWA戦略の改訂案が開示された(註1)。3月7日までパブリックコメントが求められている。QURUWA戦略が2018年に策定され、2019年に改訂された。あれから5年が経ち、改めて基本計画を改訂するようだ。 筆者は、過去にQURUWA戦略をまちづくりの中間支援組織、岡崎まち育てセンター・りたの一員として微力ながらお手伝いしてきた身である(業務として携わっていたのは数年前のことだ)

          QURUWA戦略-改訂2024に寄せて

          エリアリノベーションの処方箋

          1 はじめに 1998年から2023年の20年間で日本の空き家は1.9倍(182万戸→349万戸)に増加しており、空き家問題は看過できない深刻な社会問題となってきた。これを受けて国は2023年に従来の空き家関連法を改正し、空き家対策の強化を図っている。  こうした状況を受けて、2024年1月21日名古屋都市センターにて、日本建築学会東海支部都市計画委員会主催で「空き家法改正2023-空き家からエリアリノベーションへ」と題した講演会が開催された。筆者・三矢は、各種の事例報告後

          エリアリノベーションの処方箋

          駅前と駅周辺エリアの価値を高めるー三郷駅前まち育てプロジェクト(2021→23)

          はじめに  近年、駅前再整備を巡り、車中心から人中心への転換が求められており、例えば国交相からも「駅まち空間(2021)」といった、駅とその周辺地区連動性、一体性を持ったまち育ての重要性が指摘されています。  こうした「まちとの一体性を目指した駅前再開発事業」の例として、岡崎まち育てセンター・りた(筆者は創業者であり、現在は理事)が携わってきた「三郷駅前まち育てプロジェクト(尾張旭市)(以下、三郷PJ)」があります。三郷PJは、三郷駅前再開発を基点として始まった市民参加

          駅前と駅周辺エリアの価値を高めるー三郷駅前まち育てプロジェクト(2021→23)

          都心部の公園政策に関する一考察

          (1)経済政策と都市(空間)政策 2023年12月5日、名古屋学院大学にて「オアシスライブセッション」が開催された。これは、学内にある「オアシス」という現代社会学部の学生と教員だけが出入りできるサロン的空間で時折開催されるミニ勉強会を指す。この日の話題提供者は三矢であり、コメンテーターに江口忍先生(現代社会学部教授)が登壇された。 三矢の話題提供から話が派生して、江口先生の指摘は、商業地域における都市施設のあり方にまで話が広がっていった。特に、名古屋のHisaya-odo

          都心部の公園政策に関する一考察

          ゼミ選びを考えている学生さんへ

          名古屋学院大学のHPで確認ができる ・シラバス(専門基礎演習=2年/現代社会演習1=3年) ・ゼミナールガイドブック が基本資料であることはもちろんなのですが。 大学のゼミ選びは、学生と教員の相性が重要であり、考え方とか大事にしている価値観が近しい人がエントリーしてくれるといいなと思いました。 そこで以下、三矢の特徴や大事だと思っていることを列記しておきます。「自分の考えとあっているかも」と思った方は、ゼミ選びの際の参考にしてもらえたらと思います(全部あっている必要はなく、引

          ゼミ選びを考えている学生さんへ

          「AIには何ができないか」を読む

          ビブリオバトル(註1)に参加するにあたり、自宅の本棚から「AIには何をできないか」という本を取り出し、発表をした。この発表のために準備した内容を以下に残す。 AI時代に知識を覚える必要はあるか この本の中核的なメッセージの一つが「ポピュラーと正しいは違う」「AIはポピュラーな情報を拾い上げることはできるが、正しい情報であるかは判断していない」である。 我々は何かを調べるときに、デジタル端末(スマホやPC)で検索をすること多い。若い世代ならSNS(インスタほか)で情報収集す

          「AIには何ができないか」を読む

          まちづくりの継続性を保つのは誰か

          1 行政の政策をめぐる継続性の危うさ NPOと行政の協働をめぐり、それぞれの強み、弱みを理解する必要がある。紋切り型に言えば、NPOは迅速で柔軟だが安定性や継続性に弱みがあり、行政はスピード感や柔軟性は欠けるものの安定的で継続的である強みが指摘されることが多い。 とはいえ、例えば都市計画コンサルやまちづくりNPOなど、複数年にわたって特定の都市政策、まちづくり事業に携わってきた方々であれば概ね共感してもらえると思うが、必ずしもこの構図は正しいとは言えない。実際に筆者は、2

          まちづくりの継続性を保つのは誰か

          問いのデザイン

          ◾️授業中の質問は「問いのデザイン」  まちづくりのファシリテーションの技術を巡り「問いのデザイン」という概念が取り上げられることがよくある。人々のアイディアを引き出し、あるいは合意形成をするにあたり、ファシリテーターが会合(ワークショップなど)の参加者に向けて発する「問い」は、人々の議論の論点を噛み合わせ、あるいは方向転換することに役立つからだ。  そのようなことを考えてみると、今年の春学期の授業中に起きていた出来事が思い出される。このコラムを読んでいる方々の多くはご存

          問いのデザイン

          地縁組織と筋トレ

          ◾️地縁組織の維持は大変 自治会や子供会、老人会などの地縁組織の衰退が止まらない。行事の廃止にとどまらず、子供会などは特に解散する事態に展開する例も出てきている。こうなる主な要因は「役員の担い手不足」であることは間違い無いだろう。 町内会は、行政からの依頼事項を受け止めることも多く、町内会長さんらの話を伺うと、結構な覚悟と時間がないと大変そうな印象を受ける。企業の定年退職年齢も上がり、一昔前であれば60歳くらいで地域役員の候補者が確保できたが、現状では70歳超えでも確保で

          地縁組織と筋トレ

          お菓子と取り引きの未来

          今回は全くどうでも良い話をすることを許してもらいたい。 ◾️お菓子を貰う 自分自身、大学教員の仕事に就いて3か月が経ち、ようやく異常に忙しい状態を脱しつつある。そんなある日のこと。いつものように講義を終えて、片付けをしていた時のことである。 とある男子学生がフラリとやってきて「お菓子がいっぱいあるから、先生にあげるね」とお裾分けを受けた。一瞬唖然としたが、有り難く頂戴した。ちなみに、僕が担当している講義は、100人、200人という規模なので、正直、一人一人と関係が築けてい

          お菓子と取り引きの未来

          (続)行政が主導する中間支援組織は失敗する-事業化の崖

          1 NPOと行政のパートナーシップ 前稿では、民間非営利組織と行政の活動領域、行動原理、存在意義の違いについて言及し、例えば、2000年代初頭に、NPO業界で通説とされてきた「行政が主導する中間支援組織は失敗する」を理論的に解説した。これらを踏まえて僕は、NPO、行政ともに公共(パブリックサービス)を担う主体として、相互理解し、経緯を払って、お互いの強みを活かして社会課題に向き合う仲間、パートナーシップを構築することが重要だと思っている。 実際に、「NPOと行政の協働」が1

          (続)行政が主導する中間支援組織は失敗する-事業化の崖