宋史日本國伝を読む(2)神代

 宋史日本國伝の「王年代紀」引用部分の神代部分を読んでみると以下の様になった。

初代:天御中主(あまのみなかのぬし) 古事記:造化三神の一
次代:天村雲尊(あまのむらくも) 先代旧事:彦火明の孫
3代:天八重雲尊(あまのやえくも) 記紀の読み間違い?
 日本書紀:皇孫、乃ち天磐座を離ち、且天八重雲を排分けて
4代:天彌聞尊(あまのあまねき?) 不明
5代:天忍勝尊(あまのおしかつ) 先代旧事の天忍日命か天忍男命?
 天村雲からここまで尾張連の系図くさい
6代:瞻波尊(?なみ 瞻が誤字くさい イザナミっぽい)
7代:萬魂尊(よろづたま)天八十万魂あまのやおよろずたま尊の可能性があるが天萬尊とかぶる。天八百日尊か?
8代:利利魂尊(とと-のたま?) 不明 誤字脱字かも。手がかりがない……。
9代:國狹槌尊(くにさつち) 日本書紀:神世2代
 神話が繰り上がった結果?
10代:角龔魂尊(つぬぐい-のたま?) 古事記:神世4代男神
11代:汲津丹(すひじに) 古事記:神世3代女神 日本書紀:神世4代女神
12代:面垂見尊(おもだる) 古事記・日本書紀:神世6代男神
13代:國常立尊(くにのとこたち) 古事記・日本書紀:神世1代
 神代の初代は最初ここだったのだろうか?
14代:天鑑尊(あまのかがみ) 先代旧事本紀:天合尊 神世4代別神
15代:天萬尊(あまのよろづ) 先代旧事本紀:天八十萬魂尊か? 神世5代別神
16代:沫名杵尊(あわなつき?) 高皇産霊尊か? 先代旧事本紀:神世6代別神 古事記:造化三神の一
17代:伊奘諾(いざなぎ) 日本書紀:神世7代男神
18代:素戔烏尊(すさのを)
19代:天照大神尊(あまてらすおおみかみ)
20代:正哉吾勝速日天押穗耳尊(まさかあかつかちはやひ あめのおしほみみ)
21代:天彥尊(あまつひこ と読んで「あまつひこねほのににぎのみこと」を差すのでは?)
22代:炎尊(ほのお 火火「ほほ」の誤記で、山幸彦を差しそう)
23代:彥瀲尊(ひこうがち 彦波瀲武「ひなぎさだけ」の脱字で、「ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと」を差しそう)

 宋史日本國伝は誤字が多いので、間違っている可能性も多々ある。

 日本書紀が唐が作った正史を参考にした史書だとすると、古事記は各家に伝わる神話がバラバラすぎたので、すりあわせたものと考えられる。

 天地の成り立ちは、「太上妙始経」を取り入れた可能性が高い。恐らく道教から持ち込まれている。陰陽二元論など他にも痕跡が見られる。陰陽二元論を神世のアウトラインに設定したのだろう。

 古事記はアウトラインを設定し綺麗に整理したものだ。その代わり体系に合わない神がはじき出されて居る。日向神話はどの伝承でも骨心にあたる様で、ここが存在しない神話体系は今のところ存在しないようだ。それ以外の部分に関してはバラバラである。古事記は出雲神話を組み込んだが、他の本における出雲の重要度はかなりまちまちになっている。

 そして、神話には古い神ほど作られた時代が新しいと言うセオリーがある。そして天村雲と邇藝速日にぎはやひとつながっていないのも重要な点になろう。これは天村雲が物部氏につながる前の系図なのだろう。

 しかるに造化神の後に尾張連・海部直に連なる神を入れ込んでいるのは恐らく、この神を祖先とする氏族の系図を元にしている可能性が高い。少し調べた感じでは尾張連・海部直とはつながらない別の系図の感じがする。

 尾張連・海部直とつながらず、天村雲とつながると言うアプローチで調べると額田部氏、渡会氏、忌部氏、藤原氏などが浮き上がってくる。一気に絞り込むのは難しそうである。奝然ちょうねんが藤原を名乗ったことから中臣氏の古い系図の可能性もありそう。

 ――という訳で、奝然がこの系図をどこで手に入れたのかを考える必要があろう。鍵になりそうなのは天彌聞尊なのかな?





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