「オメガ3神話の真実」の真実③ズレた健康観、土台から壊れた理論

批判シリーズ3作目になる。

①は主に"ω3の健康被害の考察"(第一章)に見られる問題について、②は脂肪酸研究の開祖(第二章の始め)を踏み躙っている件についてをまとめた

本稿は、この書籍最大の肝となるオメガ3の実際の害についてである。

しかしここまで嘘と出鱈目を並べておきながら

皆さん自身が、現代社会に蔓延する「オメガ3神話」が偽サイエンス(pseudoscience)であることを今回お示しした多数のエビデンスを再検討して見極めて頂きたいと思います。彼ら支配者たちが計画する未来を阻むためには、彼らの偽サイエンス(pseudoscience)を白日の下に晒すことが最も効果的なのです。

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抜け抜けとよく言えたものである。「どうせここまで大量に文献を並べたらバカな素人どもはいちいち確認なんざせずに全部鵜呑みにする」と高を括っているとしか思えないほどの、ド素人丸出しな引用方法と杜撰さなのにである

著者の主張がなぜこれほど頓珍漢なものになってしまったのか、その原因は著者の生命観にあると思われる。

1.独善的な生命観

もし、エゴマに代表されるリノレイン酸やDHAなどのオメガ3が必須栄養素であれば、大事に保管されているはずです。それが欠乏状態であれば、なおさら後生大事に保管するでしょう。しかし、エビデンスはその逆を示しています。オメガ3欠乏の状態でも、オメガ3を摂取した後には、そのほとんどを燃やして無くしてしまうのです。これは何を意味しているのでしょうか?それはオメガ3を含めたプーファは私達にとって毒性物質(生体毒)であるということです。

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「エビデンスはその逆を示しています」はこの後見事にブーメランとなって返ってくるわけだが、とにかくこの自分勝手な理屈でオメガ3を毒物扱いしたいらしい。本当に大事なものなら後生大事に守るはずだと。例えるなら「大事なお金は無駄遣いせずに貯金してるはずだよね…?皆そうでしょ?え?」みたいな個人の価値観をまるで無視した物言いである。生命現象を自分勝手に定義し、何ら公共性・普遍性のないその定義に照らしてただ感情的に否定しているだけである。

そしてこれはただ"毒"の定義が分かっていないだけにしか思えない。毒は一般に

  1. Poison(ポイズン)→広義の「毒物」人工的な化学物質も含める。

  2. Toxin(トキシン)→生物が作る「毒素」

  3. Venom(ベノム)→昆虫・爬虫類が「毒腺」で作る成分

とがあり(参考:日本BD)、特徴としてその脅威を致死量で定義可能であるが、著者がこの辺りを定量的に記述する様子は一切ない。根拠は「食事で摂取した場合、生体は優先的に代謝すること」のみである。従ってあらゆる既存の毒物の定義を満たさずに毒と一方的に定義していることになるが、"リアルサイエンス"とやらは公共の了解も文献による証明もすることなく断定することを許容するのだろうか?

もう一つ、著者がこれほどオメガ3を嫌う理屈がある。

必須栄養素とプロパガンダされたオメガ3を中心としたプーファは、大半が燃焼で消失します。これは、プーファは室温や体温でも容易に酸素と反応して毒性物質(過酸化脂質や炎症ゴミ)を大量発生させて、細胞や組織の機能・構造を破壊するからです。プーファをいち早くデトックスするために、リスクを冒してまでも脂肪を燃やします。

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プーファは即座に脂肪酸酸化(β酸化)の機構によって即座に燃焼されてしまう。私には、これが「プーファのエネルギー効率の良さ」を示しているようにしか思えないのだが、著者には「リスクを冒してまで早く排泄しようとしている」ようにしか見えないらしい。β酸化により得られるATP量は無視して、だ。

β酸化は最終産物として大量のアセチルCoAを生産するが、アセチルCoAは様々な代謝系に用いられる汎用性に富んだ物質である。アセチルCoAの担う反応には以下のようなものがある。

クエン酸回路への組み込み
・アルコール発酵エタノールブタノールイソプロパノールなど)
酪酸発酵
酢酸発酵
脂肪酸再合成
テルペノイドカロテノイドステロイドの合成

このうち、主要代謝系がクエン酸回路の組み込みであり、パルミチン酸 (C16) 1分子が、クエン酸回路、電子伝達系と酸化的リン酸化を経て完全酸化されることにより、A T P 1 3 0 分 子が合成される。この代謝は真核細胞ではミトコンドリア内で、原核細胞では細胞質内で行われる。
脂肪酸モル辺りのATP合成量が糖などより多いことが良く理解できる(グルコースの完全酸化では38分子程度)。

β酸化-Wikipedia

そして、生体がこれだけ早く排泄するはずのプーファを、著者の提唱する食事療法を実践して"糖のエネルギー代謝"を上げつつ、5年かけて"デトックス"しなければならないらしい。通常のバターよりプーファが 5 倍 の 含 有 量を誇るグラスフェッドバター"飽和脂肪酸が主成分だから"とわざわざ摂取し、"微量だから問題ない"などという詭 弁を並べ、実質的に脂質代謝の恩恵を受けつつ、である。

※ちなみにこの5年という数字にお得意の引用はない。細胞のリン脂質膜の話だとしても、著者が引用する論文では数週間で入れ替わっていることを報告している。

2."必須"の意味の履き違え

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