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新型コロナの緊急事態宣言の中で父の葬儀を行った話

 今年の松の内も明けない深夜に、弟から父危篤の電話がかかってきた。夫に相談して、朝1番の電車で九十九里方面の実家に向かうことにする。

 父は1年ほど前に余命宣告を受けていた。直腸癌のステージ4だった。

 ただ、昨年4月にストーマを作る手術をしたあとは血色もよく、食欲もあり、近所にも気ままに出掛け、余生を楽しんでいるなーと思っていた。昨年末には、急遽もちつき機でついた餅を我が家に送ってきたりもしていたのだ。今思うと何かを察していたのかもしれないが。

 さらに大腸癌のステージ4の5年生存率も約20%という記事をネットで見掛けていたので、「この調子だとコロナで緊急事態宣言が出ている間にはきっと亡くならないだろう」と油断していた。正直言って。

 始発の電車で実家に向かう途中、きょうだいグループのLINEに連絡を入れると弟から電話がかかってきて、父はすでに心停止していた。死因は癌でなく、心不全だった。おかげで斎場で顔を合わせた棺の中の父は、癌で闘病していたにも関わらず丸々としていた。

 しかしながら実家に向かっていた途中の私は、父の葬儀やその後の対応を行わなくてはいけない母や弟が心配になり、その足をゆるめることなく実家に向かった。心配の度合いと言ったら、実家に向かう途中の電車の中や亡くなったその日の晩まで胃薬を飲んでいたほどだ。

 前置きが長くなった。
 結果として私は、父の葬儀のあれこれを取り仕切る立場となったのだが、新型コロナによる緊急事態宣言の元での葬儀は、やや特殊だったと思うので簡単に記しておく。

費用や規模を圧縮することができた

 斎場は対策がキチンとしていて、入退場時のアルコール消毒はもちろん、斎場の玄関やホールの入り口にも「コロナ対策で親族の席しかありません。焼香が終わり次第ご退出ください」という旨の内容が書いてあった。

これは玄関の貼り紙↓


 そんなわけで、弔問客は焼香し、縁の深い方々は棺の中の父の顔を見て、ロビーのお悔やみスライドショー(無料。これがなかなか好評であった)を眺めた後で、すぐに退席していった。


 また、通夜振舞いは親族のみにテイクアウト弁当、火葬待合も親族のみに個々で配膳される弁当がメインとなった。


 そんなわけで、以前の葬儀のように不特定多数の会食を用意する必要がなくなったのは、葬儀の費用縮小に大きく貢献した。

 それにも関わらず、通夜に謎の女性が来た。実家のご近所の方や叔母の名前を大声で連呼して知り合いっぽいが、足がふらふらして酒臭い。香典を持ってきたかも怪しい(現金なことを言ってごめんなさいね)。
 私から「コロナ対応で親族以外は早めにお引き取りいただいている」と言っても「わかった」と言うだけで帰らない。最終的には名前を出されていた叔母夫婦に対応いただいたが、どうやってお引き取りいただいたかは不明である。
 これはお引き取りいただくのが難しかったパターンだが、こういった通夜振舞い狙いの弔問客は比較的簡単に追い返すことが可能である。

 ちなみに昔(と言っても私の記憶にあるのは祖父が亡くなった時だから、少なくても30年ほど前まで)の実家の付近の葬儀は、町内から手が余るほどの人が総出で来て、その日の式次第が終わると、みんなで好きなだけ店屋物を注文して飲み食いして帰っていた。その支払いは全て葬儀を出した家が行う。それが葬儀の終わる最終日まで続くのだから、いろんな意味でとんでもない話である。

 実家の付近ではさらに、火葬に立ち会ってご焼香した方々に葬儀を出した家が500円玉を配るというしきたりもある。こちらはコロナ下でも行われていたが、さすがに以前より人数はかなり減って20人弱で済んだ。祖父の葬儀の時は100人弱はいたような…

 まあそんなこともあり、葬儀費用は予想の半分の額で済んだ。お香典のプラス分と県民共済の死亡保険金でプラマイゼロというところだろうか。これでコロナ禍前と同じ対応であったら、どうなっていたのだろう…。気が遠くなる。

規模縮小のための意識合わせが多くなった

 規模を縮小できたのはよいが、親戚間でどこまで縮小するのかの意識合わせを何度も行わなくてはならなかった。

 例えば。

 叔母のところの甥から「生花を出したい」という話があったが断ったので、母から以下のことをお願いされた。

・他の甥姪から生花などが出ていないことを斎場に確認し、出ていたら断る

・叔父に「親戚一律で甥姪からの生花などは出さないようにしてほしい」と連絡する

 こんな意識合わせが花輪や卒塔婆、通夜振舞いや火葬待合などで何度もあり、そのたびに気苦労が半端なかった。

会える機会が限られている人には、できるだけ会っておくべき

 これは心から痛感した。
 昨年11月、私はいったんコロナの感染数が終息したのを見計らって父に会いに行けたのだが、私の子供を含めた孫たちと私の妹は一昨年から父に会えず、そのまま父を見送ることとなった。
 また、孫たちに至っては受験生がいることもあり、葬儀にも参列できなかった。なんだか申し訳ないことをしてしまったように思う。

どうしてもやらなくてはいけないことは早めにやっておく

 これはコロナと関係ないかもしれないが。

 上の子の入試出願の直前に父が亡くなったため、出願の準備を全く行わないまま実家に向かうことになってしまった。
 受験料の振込とか願書の作成とか、慌てて実家で思い出して、夫に連絡して対応してもらうことになり、迷惑をかけまくった。

喪主や家族を労ってくださるのが一番


 これ以外の葬儀やそれにまつわる話は別途書こうと思うが(書く書く詐欺にならないようにしたい…)、新型コロナの中で葬儀を行うとこんな感じになった。

 ともかく、葬儀を行うのは身体的にも精神的にも疲れる。私は葬儀が全て終わって帰京した後も、疲労で1週間使い物にならなかった。(この件でも再び家族には面倒をかけた)

 もしもご不幸があった方が身近にいた場合、いろいろと労っていただけるとありがたい。そして当事者の方は無理をしないよう。

以上です。

記事を読んで「美味しいコンビニスイーツとかアイスをおごってやるか…」というお気持ちになりましたら、よろしくお願いいたします。 すごく美味しいモノに巡り合えたら、こちらで紹介するかもしれません…!