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TOKYO EAST WAVES

  東京の東の一番端っこにある臨海公園から東京湾を飽きもせず眺めていることが多い。左の対岸には広大な「東京ディズニーリゾート」の施設がよく見える。ここは千葉県船橋の「三番瀬」のような遠浅の海であるため、大潮の時には広大な干潟が広がり東京とは思えない風景ができ、まるで地続きであるかのような「王国」が誕生する。反対に潮が満ちている時には短い波が彼方から繰り返し押し寄せ、それらは不思議な静けさを伴い、そのまま都心へと続くかのような余韻を残し、黙って海を見つめている私の身体を容易に越えていく。その度、私はまだ1980年代のそこにいるのではないかという妙な錯覚に陥ってしまう。

 「バブル」へと続く時代の東京とその近郊。当事者でありながら通過者になりきることの後ろめたさを覚えながらカラーフイルムによるスナップショットを続けていた。今、それらの写真を見ると、なんともいえない「気だるさ」と「物悲しさ」のような人と風景の交わりが垣間見えてくる。不思議な時代だったとも思えるが、時代のドキュメントとして綿密に記録していこうという意図もなく、自分の日常を照らしつつ淡々と「マキナ670」のシャッターを押していた。しかるにカラー写真群が少しも懐かしくないのは、これらの「出来事」が今の「東京」にきれいに重なってくるからだろう。 

   新しい写真集「 TOKYO EAST WAVES 」は、「河口の町」(1985年・太陽賞)、「周縁の町から」(1993年・木村伊兵衛写真賞)、そして現在も続編を撮り続けている「NEWCOAST」(1995年)の3部構成からなるものです。それぞれ写真集としての掲載は初となります。

 大西みつぐ写真集
「 TOKYO  EAST WAVES」

2024年3月中旬 ふげん社発行
寄稿:大山顕、土田ヒロミ
デザイン:宮添浩司
仕様:A4変型/PUR並製本/144頁
図版:110点
ISBN:978-4-908955-27-3   価格6600円(税込)

写真展は3月29日(金)から4月25日(木)  月曜休み
火-金 12時-19時・土日 12時-18時
目黒区下目黒・コミニケーションギャラリ「ふげん社」
会期中 トークイベント、町歩き撮影会 あり

マキナ670の蛇腹を持ち上げると、なんだか身体がシャンとしたものだ。
撮影後、フイルムが被らないようしっかり巻き封をする。そんな手間が懐かしい。
1986年。マキナ670を構える私。撮影 鈴木理策


私の作品履歴のうえで80年代のこれらの中判カラーをまとめて提示するのは初。


https://fugensha.jp/events/240329ohnishi/

写真集、写真展についての詳しいご案内は上記から。よろしくお願い申しあげます。  朝日新聞AERAドットコム、雑誌CAPAなどにも関連記事が掲載されています。




古くから様々な読者に支持されてきた「アサヒカメラ」も2020年休刊となり、カメラ(機材)はともかくとして、写真にまつわる話を書ける媒体が少なくなっています。写真は面白いですし、いいものです。撮る側として、あるいは見る側にもまわり、写真を考えていきたいと思っています。