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読書感想「昨日星を探した言い訳」

いつのまにか今年もあと2ヶ月を切ってしまいました。

世間はコロナによって新しい社会の形を見直されつつも、なんとか一年間に幕を下ろそうとしています。

今年はいろいろあって、個人的に一番大きな出来事だったのは、仕事を辞めたことでした。

今もまだふらついた感じに生活していますが、その中でも本を読んだり小説を書いたりと、気長に生きながらえている次第です。

今日は久々に本の感想を書いていこうと思います。

最近読んだ本でかなり良かったのが、河野裕さんの「昨日星を探した言い訳」でした。

背を向けて進むのではなく、真っ直ぐに見上げられる正しさが欲しかった。(本文417頁より)

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「いなくなれ、群青」をはじめとする「階段島シリーズ」でお馴染みの河野裕さんでしたが、そのシリーズがとても好きだったこともあり、今作もかなり楽しませてもらいました。

恋愛小説として刊行されているようですが、読んでみると「階段島シリーズ」に通じるものを多く感じました。

自分の信じる正しさに向かって真っ直ぐに突き進む茅森の姿に憧れ、自分の本心を裏切ってでもそんな彼女の姿勢を守ろうとする坂口。

むしろ恋愛小説として当てはめるなら、純度が高過ぎて、ちょっとの傷でも壊れやすい、脆くて美しい恋心、とでも言えるかもしれません。

ただ、倫理や思想、障害、社会的価値観など、「恋愛小説」という枠で収めるにはあまりに濃い内容でした。

考えさせられる場面がいくつもあり、人それぞれに守りたい感情、大切にしたい思いを秘めていて、多種多様な人種がいるからこそ、それら全ての人を平等に扱うのは難しい。そして、すべてを平等に扱い、倫理だけに基づいた「正しさ」ばかりを突き詰めた先に、はたして本当の幸福があるのかどうか…。

正直、正解のないテーマだと思います。
でも、答えを導くには様々な方法があって、形があります。
一つの答えが否定されたなら、また別の答えを探せばいい。この繰り返しこそが、世界を正しい方向に回転させる鍵なのかもしれません。

河野さんの小説は、ミステリーとはまた違った風に、物語の中で点と点が結びついていくような気がして、いつも感嘆の声が漏れてしまいます。
僕の拙い理解力でも、何か手触りのある発見を得られるので、やっぱり凄いなぁとつくづく思いました。

と、久々の読書感想はこんな感じでした。

今後は読書感想だけでなく、雑談的な内容でnoteの更新頻度を上げるために頑張りたいと思います。……ガンバリマス。

それでは、またいつか。

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