PSVの今季最初のトッパーの振り返りと現地観戦記

PSV 5-2 アヤックス
10` van den Boomen (0-1), 20` Lozano (1-1), 40` Brobbey (1-2), 49` Luuk de Jong (2-2), 52` Saibari (3-2), 60` Lozano (4-2), 72` Lozano (5-2)

試合の印象:
終わってみれば試合中の出来事のほとんどはPSVの集中力の問題に集約される試合でした。

試合を通じてアヤックスの出来は問題ではなく、前半のPSVが酷すぎました。

MFがボールを失っては、SBの裏、CBの横のスペースへボールを出されを何度もチャンスを献上し2失点。

喝が入ったのか知りませんが、本来のプレーを取り戻した後半は順位表通りのチームの対戦であることを自ら証明し、同点、そして逆転。

終わってみれば5得点をあげて、開幕無傷の10連勝を果たすのでした。

加えて裏ではフェイエノールト、AZの両ライバルがまさかの足踏みにより今週は一人勝ち。

前半戦は毎度快調に走り、年明けのトッパーを落としてずるずる落ちていくのがよくあるPSVのシーズンなので、優勝など時期尚早ですが、少なくとも、リーグタイトル争いの主導権を握ったと言えるのではないでしょうか。

チームを振り返って

前半の出来は今季ここまでで最低のプレーであり、シーズン終了後も最低と言えるようでないといけない酷さでした。

ピッチのいたるところで連携がずれ、攻めればマイボールをロストするか、タイミングが合わず速攻の機会を逃し、CBからやり直し。

守ればCBの裏に好き放題飛び出され、アヤックスの先制点はベニテスとラマーリョが処理を譲り合ったとしか思えない反応の鈍さから生まれたように見えました。

前半は、デストとロサーノが時々見せる個人技以外はすべてが酷かったために何が起きても後半はマシになったでしょうから、修正策が素晴らしかったと褒めたくありませんし、そもそも監督ではなくピッチに立った選手たちの問題が大きかったと思います。

彼らは本来これぐらいできるし、できないといけない選手たちです。

個人で気になったのはやはりティルマン。

直近スタメン争いに参じていますが、CLでも気になった目につく切り替えの遅さに加えて、この試合は相手の最終ラインへプレスに行く彼の判断と周りの判断とが全く噛み合わず裏目に。

フィーエマンが20mのパスをライン間に通すしかない状態に何度も陥り、帰陣してもパスコースを確実に切るでも、身体をあてに行くでもなく、切り替えの激しい試合での起用には厳しいものを思いました。

他の中盤の選手たちと距離が離れすぎるので、見かねた彼らの援護も間に合わず、戻りも立ち位置も変なので、中盤で守る際に常に数的不利を抱えた大きな一端をこの試合の彼は担ってしまったと感じます。

決定機の演出やゴールがついてきていればまだ目を瞑れたのですが、そこでも決定機逸のミスを犯したので、前半で見切られ交代となるのもやむなしでした。


試合後の脚光はハットトリックという目に見える結果を残したロサーノが掻っ攫うのでしょうが、後半に投入され、チームを甦らせたサイバリこそ、今日の勝利の立役者でした。

トランジションの高さを生かしスペースに立ち、結節点としてボールを動かし続けたり、前を向けば力強いドリブルで相手の中盤を退かせ、前半になかったすべてをもたらし、自身も逆転となるチームの3点目を決める。

これでレンジャーズ戦に続き、チームの命運がかかる試合でいずれもクラッチでまたチームを救う活躍を見せました。

昨季は後半途中で投入され、決定機を外した上にリードしている展開で無責任にドリブル特攻でボールをロスト、一人少ない相手に同点弾を与える起点となってしまっていた彼が、今季はこんなにも成長を見せてくれていることがとても嬉しいです。

彼がモロッコ代表として参加するために不在となるであろう、アフリカネーションズカップの時期が今から心配になるくらい、今の彼には大きな影響力があります。

このままスタメンを不動のものとしてほしい、というよりもボスは彼を攻撃的MFの1番手に据える決断を下すべきだと思います。

アヤックス、ついに最下位転落

この敗北で、アヤックスは消化数の関係はあれど週末を終えた時点で順位表の最下位に沈むこととなりました。

あまりに直接的で、公式発信に載せるには度が過ぎるためにクラブ発信のハイライトには残りませんでしたが、3点差で勝利を確信したゴール裏からこんなバナーが掲げられました。

エクセルシオール: ✔️
フォルトュナ: ✔️
フェイエノールト: ✔️
AZアルクマール: ✔️
FCユトレヒト: ✔️
PSV ✅ (追ってここから緑色の煙が上がるように発煙筒が焚かれる)
#2部への道
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インスタグラムを模したデザインで、今季のアヤックスのリーグ戦での苦戦、ピッチ外の大混乱ぶりを盛大にコケにし、スタンド中の笑いを誘うのでした。

なぜこれだけ高いセンスやがあるのに、遠征先では破壊行為や暴力行為に走るのか。

彼らを理解するのが一層困難になりました。

スタジアム騒然の緊急事態

30分過ぎ、私の席から見て右側のゴール裏が、試合そっちのけで観客がスタッフを呼びつけているのが見えました。

てっきり、またピッチに向けて物を投げた奴がほかの観客と喧嘩でも起こしたのだろうか?などと思ってチラチラ見ていたのですが、スタンドの運営スタッフ複数人が一か所へ集まり、そのうち一人は立ち膝をつきながら、一定のリズムで上半身を押し込む動きが見えました。これで状況を理解し、それ以後は無事を祈ることしかできませんでした。

多くの観客から、試合を止めろというジェスチャーと叫びが主審に送られ、無事に届き試合は中断。

その後、状況が無事に管理下に移ったとのアナウンスと、会場外へ運ばれていく急患の方へ会場中からの激励の拍手。

同節、元代表のドストがピッチに膝から折れるように倒れる事態も起こりましたが、彼もまた迅速な対処によってすぐに意識を取り戻し、担架で運ばれる最中に手を挙げ、無事をアピールするという結末に至ることができました。

ミクロシュやプエルタをはじめとした多くの悲劇を経て、現在ではこういった対処が当たり前に行える進歩に対し、心からそれに携わる関係者、試合を運営するスタッフたちに大きな敬意を払います。

余談:現地観戦の振り返り

家のソファでリラックスしてるんだか悶々として、一喜一憂する試合観戦も好きですが、街中に老若男女問わずチームのユニホームやマフラーがあふれる光景、そしてスタジアムへ向かう道中で、スタジアム内で、同じチームのファンというだけで、見知らぬ異国人の自分も少しだけ距離が縮まるような共通点を得る感覚にはやはり代え難いものがあります。

今回の観戦では、隣の席になったオランダのにーちゃん(普段はゴール裏に近い席で見てるけど、今日はチケットが取れなかったらしい)と、お互い名も知らず、名乗ることもなかったのに、プレーの一喜一憂を共有しました。

試合前はフェイエが負けて今日は大チャンスだの、今日はどこから来たのかなどを話し、試合中はゴールが決まれば叫び、その勢いで肩を組んで2人で飛び跳ねてしまうのだから、やっぱりフットボールっていいものだなと思います。


試合後は歓喜のスタジアムの空気を感じ、選手たちのピッチ周回を眺めていたのですが、だんだんと冷静になってきて、せっかくの現地観戦にわざわざ演出盛り盛りに山と谷を作るな!普通に勝て!とチームに少々呆れつつ、そういった不完全さに愛らしさを抱かずにはいられない、本当に罪深い存在だな、などを感じながらスタジアムを去りました。

いったんホテルへ戻りハイライトをチェック。

実は熱狂のあまりロサーノが3点も決めていたことに気づいてませんでした。

また、新調したアクションカムで収めた映像を眺め、狂喜する自分の様子に少し引きました。ちょっと頭おかしいんじゃないかこいつは。

冷静に現実を受け止めると、夕食を取りたくなり、19時にアイントホーフェンの中央、マルクト広場へ。

レストランのテラス席から、あのパラソル席の椅子、そういえばELで遠征してきた東欧のクラブのウルトラスと投げ合ってたなぁだとかを思いながら待っていると、オランダやベルギー特有のいい意味で頭の悪いポテトフライのチーズがけが運ばれてきました。

やはり欧州基準は量が多すぎると思います。

これをお供に、マリブコークを飲みながら、試合を思い出し余韻に浸る。
夕食の罪悪感も相まってなかなか堪らない時間でした。

そして感想が飛んでいかないうちに、断片出来ながらこの記事のメモをiPhoneに入力しては消す。

そんな勝利に浸る夜を満喫した今回の遠征なのでした。

<了>


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