マネタイズ
「起業して1年になるけれど、どうしてもマネタイズができない。
無料でサービスをやってきて、ある程度のユーザーは獲得できた。
だけどもそこからのマネタイズがどうしてもできない」
と僕はつぶやいた。
心の中で思っていただけのつもりだったが、ついつい口に出していた。
そんな僕を、秘書の晃子が見ていた。
彼女は美しい。美しいから雇った。
彼女がそばにいるだけで、僕は心が安らぐのだ。
彼女がいることで、僕はなんとかやってこれた。
ともかく会社の収益を上げて、社員をいっぱい増やすはずだった。
だけどもぜんぜん利益が出せない。
貯金を切り崩して会社の経費と秘書の給料をまかなっていた。だけどもそろそろ限界だ。
ずっと二人きりだ。社長と秘書。
「社長、私に名案があります」
晃子は目をキラキラさせて僕に言った。
「マネタイズすれば良いんでよね?」
「うん」
「明日、私、マネタイズします」
「え?」
分かっているのか? マネタイズとは何かを分かっているのか?
だけども彼女の自信に満ちた表情。
そしてその天使のような笑顔。
僕はそれにかけるしかないと悟った。
「わかった。もう僕にやれることは何もない。すべてをやり尽くした。君に託すよ。君の名案に、会社の明暗がかかっている」
次の日、晃子が出社した。
何だかコスプレをしている。
「社長、マネタイズしました」
と晃子は目をキラキラさせて言った。
「え、何が?」
僕は目を丸くして晃子を見ている。
「社長は仮面ライダー観ていないんですか? 仮面ライダーゼロワンに出ていた社長秘書のイズのコスプレですよ」
「え? だから何?」
「イズの真似。だから「真似たイズ」です」
まじかー。
まさかのダジャレか。
ダジャレに会社の明暗をかけてしまったのか僕は?
僕は頭を抱えた。
「仮面ライダーゼロワンってさぁ、令和元年の仮面ライダーだよね。令和元年だからゼロワンなんだよね。今は令和3年。もう旬じゃないんだけど」
と僕は言った。
「もう、シュンとしないでくださいよ」
と言って晃子は口を尖らせた。
またダジャレか?
いいけど。
かわいいからいいけど。
おわり。
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