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ちゃまの話

うちの旦那さんは毎夕のようにパチンコ屋さんへ出勤している。負けたらすぐに帰って来るし、最近はちょっとだけ賢くなってちょっと勝ったらすぐにやめて帰って来るようになった。以前はよく「あの時やめとけば勝ってたのに」などと言っていたので成長したもんだ。自分のお小遣いの範囲内でしか遊ばないし、ちょっとでも勝ったら私たち家族もいくらか分け前をもらえるし、昔「亭主元気で留守がいい」ていうCMもあったなあ。別に「行かないで」なんてうるさく言うつもりはない。

何年前くらいのことだったか。当時は“黄門ちゃま”というパチスロ機にハマっていたようで、うちに帰ってきてからもその話を家族に話して聞かせてくれるのだが、どうも要領を得ない。そりゃそうだ、私たちはパチスロのことも“黄門ちゃま”のことも全く知らないので、あれがああでこうでこうなって‥と聞かされても分かるはずがない。話し上手ならともかく、旦那さんは自分の記憶に残っている部分だけを話すので、脈絡も何もあったもんじゃない。

それでも私たち家族がなんとか理解しようと努力したおかげで、ちょっとだけ話が見えてきた。パチンコにしろパチスロにしろ、チャンスがやってきたらこういうセリフが出てくるとかこういう画面になるとかが決まっていて、どうやらその“黄門ちゃま”には、おじいちゃんと孫が登場して携帯電話で話すらしい。(後で調べたら、家康とその孫である黄門様が電話で話していたようだ。)

「もしもし、ちゃま?」

このセリフが特にうちの旦那さんのお気に入りだったようで、とにかく「もしもし、ちゃま?」を繰り返す。私たちが「で、その続きは?」と聞いても、「忘れた」と言い、「もしもし、ちゃま?」の後が続かない。結局覚えてなかったのだ。

そのうち「もしもし、ちゃま?」は旦那さんの持ちネタみたいになってしまった。そしてあまりに毎日のように「もしもし、ちゃま?」を聞かされた私たち家族は、ある時から旦那さんのことを“ちゃま”と呼び始めた。

旦那ちゃま、お父ちゃま、おじいちゃま、“ちゃま”は何にでもなれる。今のところは旦那ちゃま、あるいはお父ちゃまだが、そのうちおじいちゃまになるのだろう。


カァッーカッカッカーww

(東野英治郎的に)

今日は奇しくも”いい夫婦”の日、noteでも奥様や旦那様への日頃の感謝を伝える記事が目に入る。そんな中、旦那さんのちょっと恥ずかしいオモシロ話を更新している私って‥いや見方を変えれば私たちは笑いの絶えないいい夫婦、いい家族ってことになりますか?

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