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【clusterワールド・イベント】ステージと演出を作りました②~演出編~

これはその②の記事です


▼その①の記事はコチラ▼

ファッションショーで使ってもらえたワールドを作ったよ!
そのイベントで再生された演出も作ったよ!

という話です。

前の記事ではワールドの制作について書きました。
この記事では演出について書いていきます!

 


★まずはこれ見て

見てください。
この動画の中で写っているものが、この記事で解説されます!

記事の中でも動画のスクリーンショットを参照させていただいています!


ワールドと演出のザックリ構成要素


演出を構成している要素から説明します。

そうしたいのですが、まずはじめに諸々の前提について。

今回は音楽付きファッションショーのイベントであるという制約があったため、特別に考えることいくつかありました。
その中で、やらないと決めていたことを以下に書いておきます。

▼衣装の色味を損なう演出をしない
具体的には、
ポストプロセスによる極端な色調変更をしない
アバターやステージに差すリアルタイムライトも白色のみ
環境光も彩度をいじらない
です。

▼ステージ・ランウェイを歩くモデルさんに演出をかぶせない
結果的に一部どうしても重なってしまう演出はありましたが、可能な限り演出は"背景の一部"となるように調整しました。
照明やパーティクルで演者が見えないことだけは避けたいと思ってました。
イベント参加者が撮った写真を色々拝見するに、かなり効果的に機能してたと思います。良い写真たくさんだった。

▼余計なものはワールドに入れない
11の楽曲をすべてワールドに組み込む。
モデルさんもテクスチャ枚数・サイズなど描画を損なわない現状のclusterで綺麗に見える上限ギリギリラインを攻めて作られた衣装で登場。
さらに終演後に11着の衣装をほぼそのままワールドに展示する。
などが事前に決まっていました。

それだけでワールド容量は数十MB使用確定、ワールド入室時のメモリも相当量消費する
⇒ワールド自体も込みで、全体の演出は容量、負荷が低くなる作り方を求められました。フルスクラッチ以外選択肢はなかった。

メモリを消費しそうな複雑なアニメーションによる演出をたくさん作らない。
パーティクルも可能な限り共通のものを使用して、タイムラインで曲ごとに色や速度を変える。
などなどで対応した(つもり。結局パーティクルはそこそこメモリを食ってしまったようだった)。

一方でチープな見栄えにしたくなかった。
ので、最終的には、ポストプロセスやリアルタイムでステージ付近に差して演出と同期するスポットライトを参加者ごとにローカルでON/OFFできる仕様に。
クオリティの担保と端末負荷へのサポートを両立した(つもり)。


スマホ単体で一人で再生した場合30fpsで全編見れます。
参考値
メモリはもうちょっと削りたかったけどPCで2800MBくらい、スマホだと1800MB前後。
set pass call について、カメラが置いてあるので厳密に参考にならないかも(本番環境とUnityプレビューで大幅にズレがある気がしている)ですが、低負荷状態で全編150以下で見れるくらい。さらにUnity上でのカメラによる数値を除外すれば90~120くらい。

(参加者100人満席想定のイベントだったので、ずっとビビりながら色々対策やってました)

 

というような前提で作ったものでした。
やっとここからステージを彩る構成要素の説明です。

 

◆照明(オブジェクトとしてのライト)

合計で31機あります。

ランウェイ上部に3
ランウェイ左右にそれぞれ5ずつ
ステージ上部に二層、6+4
ステージ後ろに8

です。
曲ごとにこれらの動きを作ってました。

今回はランウェイがあったのでサイドライト無しでしたが、ライブ会場バージョンにするときは付けたいなと思っています。

参考資料はこの書籍と、これまでリアルで観てきたライブ、そしてYouTubeに粛々と蓄積している「ライブステージ参考」という再生リストにある大量の動画。

 

全体の数というよりは、層状に照明群を重ねているのがとてもよかったというのが感想。

演者を照らす照明と、視界に動きを付けるための照明と、背景を彩る照明とで役割を分けられてとてもよかった。

パフォーマーの後ろに2〜3層くらいあれば、なんとなくの情景を作る事ができるんだなと思いました。今後も色々試したい。

 

◆リアルタイムライト

会場にいる全員(パフォーマーも込み)にかかるDirectional lightが一つと、ランウェイ上部に会場+アバターにかかるSpot lightがあります。
   
この2つのライトは、開演前や曲間では強度を0にしてあります。
なので曲が終わったタイミングなどは、演者もお客さんもグレーの環境光のみを受けて薄暗い感じに見えています。
(気づいた人は少ないかもしれない)

曲が終わってステージから去っていく時に、薄暗くなってシルエットっぽく見えるのがとってもお気に入り。
環境光をどこまで落とすか悩みましたが、アーカイブを見ているとこのくらいでちょうどよかったかなと思ってます。

 

◆ワールド内の装飾

ワールド編でも触れましたが、こやつらです。

ゆらめいている色は簡単に変えられる仕様になっているので、曲ごとに変更しました。
5曲目の黎明の時は極端にスクロール速度も上げました。

他にも色々な所が同期して光っています。

 

◆パーティクル

曲をまたいで共通に使えそうなものと、曲ごとにオリジナルで作ったものがあります。

前者の共通パーティクルで賄えそうな演出は、曲中に色や速度、その他パラメーターをアニメーションで変えて実装しています。

(こまかいことですが大事な点として、パーティクルオブジェクトのActiveを切り替えるのではなく、Emissionのオンオフをアニメーションでコントロール。パッと消えるパーティクルはさみしい)

演出を作るうえで目安として、同時に視界に存在するパーティクルは多くても3〜5種類に留めようというのは意識していました(ただし例外あり)。

動きは上から降ってくるもの、下から上に上がるもの、ステージ奥から手前に向かって飛んでくるもの
の3種類が基本。
それぞれテクスチャやメッシュのバリエーションにより形状が違うものを用意しておいて、動き × 形状 の組み合わせで目が飽きない状態を目指しました。

 

★とてもよいメッシュを作ったよ
かなり極端なマジックシルエットになるように。


これを使って、パーティクルの設定で回転やサイズを random between 2 constants にしてあげて、発光させるなどマテリアルを調整すれば。

ぱっと見では、全部共通の1種類のメッシュで作られてるように見えなくなるように目指しました。
「複製されている感」はかなり薄れさせられたんじゃないかと思います。

パーティクルにメッシュを使うと負荷は上がるので、絶対に instance しましょうね。

 

◆特殊オブジェクト

いくつかの曲では、特別な物体がでてきます。
これも参考資料をかき集めてなんとか自作。

ベッドはタイムライン中でキーを打って動かしています。sitするための椅子はベッドにconstraintで追従(ねこったさんに教えていただいた方法が良さげだったので採用)。

 

ハートはシェイプキーでコントロールしています。
右向きに割れるのと左向きに割れる形があります。

 

 

演出に使ったものはだいたいこのくらいです。

これらを組み合わせてそれぞれの曲の演出を作りました。

 

 

全体の構成

 
11曲、ずっと飽きさせない!
驚きや感動が連続する20分を!


これを目指しました。
一方で、テンションはクライマックスに向かって徐々に上がっていくように調整しました。
いただいたセットリストがすでにそうなっていたのもよかったです。

それぞれの曲や演出はぶつ切りだけど、一編のストーリーとして観ても成立するようなものにしたいと思って、ひたすら構想を練りました。
どのくらい練ったかというと、たぶん1か月以上。

曲のこのあたりを使う、というのを11曲つなげて共有して頂いていた、計20分弱のmp3ファイルを、脳内で曲順繋がって聴こえるようになるくらいまでは聴き込みました。
ひとりの制作、かつ演出は基本おまかせいただいていたので絵コンテまでガチガチに作ってはいないですが、「この曲はこんな景色!」というのがある程度頭の中に見えてきて、それを一旦文字に起こすまでしてから制作開始しました。

それぞれの曲の演出について書きます。

 

各曲の演出

先のYouTube動画のスクリーンショットを参照しながら、適宜Unityの画面なども引っ張ってきて解説したいと思います!

1 MOON LIGHT

配信アーカイブより

スクリーンが開いて、奥から舞い降りてくる。
曲のイントロ、指パッチンの音と同時に照明ON。

会場の作りや演出のおよその見所、視点をどこに向ければいいのかなどを観客に覚えてもらうのが1曲目の役割。

そしてもう一つの役割が、これはなにか特殊な演出込みのショーなんだ!と気づいてワクワクしてもらうこと。
POKKYさんの最高の動きも込みで、達成できたと思います。

配信アーカイブより

サビと同時に奥の階段がパーティクルになって弾けています。
さっきまであったものが、しれっとなくなっている。
いつのまにか会場が少し変わってるというアハ体験っぽいものを散りばめたかった。

全体の色は白基調に抑えました。
演出カラーと衣装カラーの関係性は対比。

 

2 midnight beat

配信アーカイブより

いわゆるファッションショーっぽい形式でモデルさんが歩く形。
上手から現れてきて、ランウェイを歩いて下手にはけていく。

この曲で、はじめて照明に色が入って、一曲目よりも視界は華やかに。

会場手前は青基調の照明で海をイメージ。
会場奥はビビッドな色で、遠くの夜に光る街並みをイメージ。

https://youtu.be/-dU40pmks8I

サビになるとランウェイ横の照明にさらに一色ピンクが入って華やかになります。

演出カラーと衣装カラーの関係性は同系色。

 

3 Step at 2:00 am

https://youtu.be/-dU40pmks8I

もう一回追い打ちでインパクトのある演出を、ということでステージ屋上からベッドに乗って現れる。

背景の照明がベッドを避けるように動いたり、後ろの方から追い風のようなイメージでパーティクルを吹かせてみたりしました。
ランウェイ横の照明も波打つように明滅したり動いたりしていますが、機械的でツマラナイ動きに見えないように、全部手動で調節しました。

 

ブラックアウト、ホワイトアウトは脈絡のない演出側の都合で入れてしまいがちなのであまり好きじゃないのですが、この曲は、
明転して気づくといなくなっている=夢の中で遭遇した存在、目が覚めると会うことができない
みたいな感じにしたかったのでホワイトアウトを使いました。

演出カラーと衣装カラーの関係性はどちらかというと対比。

  

4 アマオト

この曲でパーティクルの種類が増えて、おっ!と思ってもらえるようにしました。

ステージ奥、観客からに影響を及ぼすことのない背景には雨が降るパーティクル。
「月面に雨が降っている」というのが個人的に好きでした。
会場内にも降らせて良かったんですが、濡れたくなかったので没に。なんか足元すべりそうかなって。

 

サビで会場を包み込むように発光するパーティクル。

サビのパーティクルは何を隠そう、この曲のモデルさんを完璧に勤めてくださった hkさん がライブ会場の演出でよく使われるようなものを意識して特別に作りました・・・!
モデルさんの身体にかぶさらないように、ランウェイやや上部から発生させて、回転しながらゆっくり下降してくるように調整。

動画をみてください。hkさんの動きが完全に演出と同期していて女神です。

演出カラーと衣装カラーの関係性は同系色。

 

5 黎明

おはよう真夜中さんのキラーチューンなので、極端にド派手に。

この曲はもう「ライブ」になってもいいのでは、という狙いで、思いっきり盛り上げました。
パーティクルの嵐が吹き荒れる奥から堂々と登場する姿が見たかった。

(アイデア段階では、イントロで吹き荒れるパーティクルのメッシュを「黎明」という漢字の部首を分解したものにしようかなと思ったりもしたのですが、ちょっとキヌさんの影響大きすぎると思ったのでやめました。自分のイベントや曲だったらリスペクトを込めてやっていたかも。大ファンです。)

演出の流れに関しては、POKKYさんが完全に意図を理解してくださっていて、完璧な動きで合わせてくれました。


テンポが早く、サビ終わりから退場までの時間がほとんどない中、振り返ったり回転したりパフォーマンスをしながら会場奥へと去っていくという神業を披露したPOKKYさん。

演出カラーと衣装カラーの関係性は同系色。

 

6 Einsamkeit

黎明の盛り上がり後に落差を感じないように、この曲も特殊演出。
ハートの中から登場・ハートの中へ帰っていく
というのは、曲が短くて歩く時間を長くとれないという点でもうまく機能したと感じています。

ハートの周りに地味に赤いパーティクルが出続けていたり、会場全体に金色のキラキラパーティクルが漂っていたり、ド派手なハートとバランスをとって全体が馴染むように色々仕込んでいます。
上部の照明はステンドグラス風の衣装と合わせたような色味で、イメージとしてはこの動画がずっと頭にありました。

演出カラーと衣装カラーの関係性は同系色。

 

7 シャルデンヴァンクリーフ

サイバーな衣装と、曲のエレキギターの音、MVで使われているイラストと、「緑色ライト、システムオールグリーン」という歌詞
これらを頭の中でミックスしてパーティクルと照明に落とし込んだ感じでした。

演出カラーと衣装カラーの関係性は対比。

 

8 イヤーマフ

会場に雪を降らせるところ、じわじわとコッソリ降らせ始めてもよかったのですが、イントロの音の印象と合わせた演出にしました。

サビ前Bメロ部分は、かなりくっきりと絵が浮かんでいたので、特別に動きもリクエストしました。

「分かってるよ」が繰り返されるところで、ランウェイ左右の照明が交互にライトアップするので、それを背景にする方向(光っていない方向)を向いてほしいです。できればふらふら歩いて道端の石ころをけっているように。

サビに入る瞬間に、赤っぽい色のついた雪がステージから会場に舞い散るので、それをモデルさんが吹き飛ばしているような動きをしてほしいです。

の二点。完璧でした・・・。

 

サビの会場色合い。
夜を表す紫のライトと、道端の電灯をイメージした中央の黄色。白い雪と、赤く色づいた雪。
非現実感のある心象的な雰囲気が不思議と現実感のある衣装を立たせるような感じで好きでした。

演出カラーと衣装カラーの関係性は対比。

 

9 夜歩く

衣装がシックなトーンでまとめ上げられていることもあり、思いっきり夜の街並みを表現するように色を入れました。
単純な繁華街というよりは、いろんな景色が走馬灯のように流れて行って、形は残らず色だけが目の裏に焼き付いているみたいな、そんなイメージ。

色は華やかだけど、パーティクルや照明の動きはかなり穏やかで、少しずつテンションを落としていくようにしました。

 

次の曲とのつながりがあるので、スクリーンを閉じて、その間に消えていくように退場。POKKYさんドンピシャで間に合って凄い。

 

もしかすると「そういつも」の違和感で気が付いた方がいるかもしれないですがネタバレ。
ここの照明(写真中オレンジ色)の色は、MVの背景に合わせて頻繁に切り替わっています。

演出カラーと衣装カラーの関係性は対比。

 

10 Night Song

この曲も、動きをモデルさんにリクエストしました。

曲が始まったらスクリーンの横からヒョコっと出てきてください!!!!

とお願いしていたところ、猫日和きゃりこさんが想像の100倍かわいく出てきてくれました(事前の確認時にみんなで盛り上がっていた)。

その後、モデルさんの動きに合わせるようにリアルタイムのスポットライトの位置や角度が動いてます。かなり調整に気をつかいました。

 

曲が盛り上がるのに合わせて、カラフルな柔らかいパーティクルで会場を包みました。
「寄る辺も無い夢の傍」に見守ってくれるような妖精?のような不思議な存在が枕元に現れて、魔法をかけてくれる。みたいなイメージでこの曲の演出を考えていたので、ここで会場が色づくのは大成功だったと思いました(直前までモノトーンで行くか悩んでいた)。

演出カラーと衣装カラーの関係性は、前半調和、後半対比。

 

11 Leben

スクリーンが開いて、奥から舞い降りてくる。
曲のイントロ、指パッチンの音と同時に照明ON。

そうです。絶対に1曲目と同じ演出で最後の曲を始めたかった。

いろんな曲の衣装や演出を観てきた後に、もう一度原点に戻る。
だけれどもそれはちょっとだけ違う印象で、どこか不穏。
みたいな感じでスタートしたかった。

ききょうぱんださんの振り付けが素晴らしすぎて、僕は何度観てもウルっとしてしまう。

Bメロから会場に色が入るのですが、ここはどことなく不均衡感のある色味で作っていきたかったので結構苦労しました。

 

サビ入りの、ガラスが砕ける音と同時にパーティクルがはじけて、スクリーンや奥の足場が消失。
会場の色は、右側と左側でアシンメトリーに。

パーティクルもアシンメトリーに。
向かって右側、上手側はピンクの花びら
向かって左側、下手側は青のガラス片

「花が舞うような演出が欲しい」というおはよう真夜中さんからのリクエストと、W@さんと一緒に作られていたイベント、そしてkomatsuさん作のMV

このあたりを踏まえた上で作ったクライマックスの演出でした。

この辺の立ち位置で曲を終えるので、本来ならスクリーンがあった方がいいはずですが、
サビに入るまで曲が十分あることと、
目を凝らさないとよく見えない「どこか遠くの存在」感が出てそれもよさそう
と思ったことからこの点は修正なしでGOでした。

ききょうぱんださんの動きが本当に最高。
(化け物だぁ)ってずっと一人で言ってました。

 

暗転して終了。


何事もなかったかのように、ただのステージだけが残ってイベント終演。

クライマックス直後の喪失感。

でした。

 

以上です。

 

やりたいこと、やれることは全部やりました。
関わることができて、本当に良かったと思っています。

事前のリハ(もろもろの確認)で、一人で作っているものの中に、衣装とモデルさんが加わった時の感動。
仕上がってきたゲネプロで「これはすごいことになる」と確信した瞬間。
本番、お客さんが入ってさらに想像以上にすごいことになったのを見届けたとき。
打ち上げと称して関係者のみなさまとアーカイブを見たとき。

どれも最高の時間でした。

 

関わってくださった方、観に来てくださった方、本当にありがとうございました。

 

 

 

制作したワールドは以下のリンクから見れます!
今月中(2024年1月)は、イベント当日に流した演出も再生できるようにしています。



そして、本ワールドはこれからも様々なイベントで使ってもらいたいという思いで作りました。

ご興味ある方はお声掛けください。
試しに壇上に立ってみたいなどもご気軽にどうぞ。

(特別な場所、ということで公開しているワールドでもステージには登れない仕様になっています)

 

 

メモ
細かい実装方法や作り方の部分には触れられなかったので、またどこかでまとめるか話すかしたいなと思っています。
書き出したら一生終わらなかったと思う。
なにか知りたいことなどあったら教えてください。


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