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死なない猫

死なない猫

あるところに、死なない猫がいました。

その猫は死にません。

ある日、猫は高いところから落ちました。

猫は死にません。

死を知らないから。

ある日、猫は車にひかれました。

猫は死にません。

死を知らないから。

猫はある日、王様の猫でした。

猫は矢に打たれました。

猫は死にません。

死を知らないから。

ある日、猫は海で溺れました。

猫は死にません。

死を知らないから。

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サンタなんていないんだ!

サンタなんていないんだ!

⚠︎この物語はフィクションです。

今年6歳になる息子のりゅうたは
サンタを疑っている。

『サンタなんていないんだ!友だちもみんないってるよ。パパもそう思うでしょ?』

『いや、サンタはいるんだ』

思いがけず、そう答えてしまった。

サンタがいると信じている子供は
いた方がいい。こんな時代だから
こそ。

『じゃあさ、パパ。サンタがいるって
しょうこ出してよ!』

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家が燃えた。家具も金も燃えた。無一文だ。

家が燃えた。家具も金も燃えた。無一文だ。

⚠︎この話はフィクションである。

今、燃えている自分の家の前にいる。

ガスの元栓がゆるんだところに、

コンセントの火花が散ったらしい。

マンションの窓から家具が飛び出している。

恥ずかしい。

飛び散った冷蔵庫には調味料しか入ってない。

管理人が

『お気の毒です。行く当ては、、』

と言っているのが遠くで

聞こえた。

放っておいてくれ。

もう辱めないでくれ。

夜中でも開いてい

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ファッションに興味のない男、『女にモテる技術』の影響で
革ジャンを買う。

ファッションに興味のない男、『女にモテる技術』の影響で 革ジャンを買う。

⚠︎これはフィクションである。

『女にモテる技術』って本を立ち読み。

その本では『外見を整えることは前提であり、女性は

一瞬でアリナシの判断をつける』とあった。

『なんだよ。まだファッションの話かよ』

本を投げ返そうとした時、自分の姿が鏡に映った。

もう二年は着まわしている服だ。

最後に服を買ったのはいつか覚えてない。

『たまには本の言う通りに動いてみるか』

本は丁寧に戻した。

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日々に退屈した男、最近農業を始めた男

日々に退屈した男、最近農業を始めた男

《この物語はフィクションであり、妄想である》

『毎日が退屈でさ、うんざりするよな』

『ああ。俺もだ』

『もう年だから新しいこと始めるのも面倒だよな』

『。。。』

『どうした?』

『実はな、最近畑を借りたんだ。』

『なんだよ?畑って農業でも始めるのかよ』

『農業ってほどじゃないよ。トマトを植えてみた

 だけだよ』

『そんなんで収穫できんのかよ』

『全滅だよ』

『くだらねー。そ

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あるバーに人生相談を受けてくれる作家がいると聞いた。その男はウイスキーを飲みながら言った『お前は悩みたいから悩んでいるだけだ』とね。

あるバーに人生相談を受けてくれる作家がいると聞いた。その男はウイスキーを飲みながら言った『お前は悩みたいから悩んでいるだけだ』とね。

〈この物語はフィクションであり、妄想である〉

風の噂で『あるバーに人生相談を受けてくれる作家がいる』

と聞いた。

バーなんて22年間一度も行ったことがない。

そもそも酒が飲めない。

一杯飲んだだけで頭が痛くなる。

だが相談したいことはある。

そのバーはある街の片隅にあった。

薄暗い階段を降りた先に年季の入ったドアが

ついている。

入るまでに随分と躊躇った。

『もしその男がいな

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『悩みたいから悩んでいるだけだって?』ふざけるな。僕は真剣に悩んでいるんだ!この小説家は僕をバカにした!

『悩みたいから悩んでいるだけだって?』ふざけるな。僕は真剣に悩んでいるんだ!この小説家は僕をバカにした!

※この話はフィクションであり、実際の人物や事柄とは

 関係がありません。

あの日のことをどこまで話しただろう。

ああ。ここまでか。

そう。

彼は席に着くやいなや言ったんだ。

『お前は悩みたくて悩んでいるんだ』ってね。

ふざけるな。

ベストセラー作家だか何だが知らないけど、

僕をバカにしているんだ。

『そ、そこまで言うことはないでしょ!

  僕は真剣に悩んでいるんだ。』

『分

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死ぬ前に後悔するのは『やってしまった失敗』ではなかった。

死ぬ前に後悔するのは『やってしまった失敗』ではなかった。

⚠︎この物語はフィクションである。

おじいさんが入院したと聞いて病院に来た。

じいちゃんにはお世話になっていたから、心配。

「じいちゃん?」

「おお。来てくれたのか」

「体は大丈夫なの?」

「昨日よりは調子がいい」

「まぁ、座れ」

「うん」

「今日は月曜だろう。学校は?」

「ごめん。最近学校には行ってない」

「そうか」

じいちゃんは素っ気無くそう答えた。

「怒らないの?」

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