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わたしがオーダーで地下足袋を販売しているワケ

実は、今の仕事をいろいろやる前は、レディースの高級スーツ仕立て会社に務めていました。その技術を生かして“オーダーを楽しむ”ことができるお揃い服を作りたいと「Atelier Lien*」を立ち上げました。その後、日本の伝統文化である地下足袋の良さに魅せられ、地下足袋もリリース。
ブランドオリジナルの生地はもちろん、そのほか好きな柄や色で、洋服と同じように自分だけの“世界で1足”を叶える地下足袋の販売をしています。
(現在、洋服の制作はしていません)


地下足袋との出逢い

京都にある有名なブランドで、地下足袋を購入したのが、初めての出逢いでした。それまで、地下足袋って・・・大工さんや、お祭りの時に履く、アレ?というイメージ。しかし、私がそこで見た地下足袋は、ポップなカラーや幾何学模様。店頭に並ぶ地下足袋を見ているだけで、心トキメク素敵な時間でした。
可愛いだけでなく、まず試着して思ったのは、とても楽。ということ。しかも、もともと足袋というのは、後ろにある「こはぜ」を留めて足首周りを固定するのですが、わざとこはぜを留めずに、裏地が見えるように履いてもいいので、ファッションとしていろんな履き方だ楽しめるというところに魅力を感じました。
その時店にあった地下足袋の形は2種類で
●これぞ足袋!とわかる親指の部分だけが別れている「先割」(さきわれ)
●一見スニーカーのような、指の別れがなく、丸いタイプ「先丸」(さきまる)

先割は、足袋らしくて、可愛いのですが、普段の生活に履くには、奇をてらい過ぎているような気がして、仕事にも履いていけるように、スニーカーのような「先丸」を購入。


一緒に店にいた娘も、「私も欲しい」といい出しました。地下足袋は、運動靴のように底が厚いわけではありません。しかし、しっかりと指で歩く感覚を育てるには、とてもいい履き物で、現在は子供の足の発達にとてもいいと見直されてきています。さらに紐靴と違って、紐を結べない小さな子でも、こはぜなら留められます。
娘の分も購入しようと思いましたが、子供サイズの先丸が見当たりません。
店員さんに聞いてみたら、先丸の子供用は元々ありませんでした。
「先丸のこどもサイズはございません。今後も、販売予定はございません。」とのこと。トキメク地下足袋に囲まれて、お店でウキウキしていた私の気持ちは、その時なんだかスッと冷めてしまった感覚をいまでも覚えています。
「・・・無いなら、自分で作ろう!」
そう思い、早速オリジナルブランドの地下足袋の製作・販売に向けて動き出しました。ブランド名も『Atelier Lien*』として再スタートすることになりました。

「先丸」を作る


そもそも、「子供用の先丸」が件のブランドで何故作っていなかったのか。もしかして、採算が合わない?何か工程に問題あり?業者さんに聞いてみると、この時初めて明らかになったのです。

「型(かた)がないんですよ。元々。」
発注できる地下足袋は、17cm~29cm。そして、先割は全てのサイズがありますが、先丸に関しては、22cmからしか存在しなかったのです。
「ママとおんなじ丸いのがいい」という娘の思いを叶えるために、自分で作り始めたのに、
一番の目的である子供用の先丸の型がないなんて・・・
ショックではありましたが、”ファッションとしての地下足袋”そのものへの思いも強く、まずは今現在ある型のみでできる商品の製作・販売をスタート。しかし、やはり「自分で作ろう!」と思い立ったきっかけである『子供用の先丸』をなんとかして実現したい、という気持ちを抱えたまま、今まで走り続けてきました。

もう一つの思い「日本人、だからこそ」


最初は娘の願いを叶えたいという小さなきっかけからスタートした地下足袋製作でしたが、活動していく中で、この良さをもっと多くの人に知ってもらいたいという思いが大きくなっていきました。
足袋の形は、実は海外のハイブランドが注目してデザインに取り入たものが人気だったり、「和」の文化自体も海外から評価されているものがたくさんあります。でも、日本人である私達こそが、伝統をもっと身近に楽しむべきなんじゃないか?と思うんです。

「伝統だから守ろう」という遠巻きなものではなく、実際に普段の生活で「使う」「楽しむ」。地下足袋にはそれができるし、それに伴う「良さ」がちゃんとあります。
だから、もっともっとオシャレな地下足袋を作りたい!

それに、単純ですが、
伝統のものを普段のお洒落に取り入れられるって「カッコイイ!」って思います。現代の私たちの日常に馴染む形で、色々な世代の人に楽しんでもらえるものを作って、「今日は足袋にするか、靴にするか」
そんな選択が当たり前になったらな、と思います。


読んでくれてありがとうございます。 ふと思った時に、心のままに書いています。 よかったらまた読んでください。