見出し画像

面白い本・好きな本|生物進化から宗教、デザイン、美を考える[進化論の進化、進化思考、進化を超える進化]

ヒトができるまでの細胞分裂は、たったの41回

ヒトの細胞は全部で2兆個。お腹の中にできた赤ちゃんは、ひとつの細胞が細胞分裂で2つに、2回目の細胞分裂で4つ、3回目で8つ、、、と倍々に増えて成長していく。最終的に、10ヶ月後には2兆個の細胞まで増えて、お腹から生まれてくる。

2×2×2×2×、、→ 2の41乗 > 2兆
→赤ちゃんになるまで41回の細胞分裂が必要

10ヶ月で41回なので、1ヶ月に約4回。つまり、生命が誕生してから週1回の細胞分裂で、10ヶ月後には赤ちゃんが生まれる、という計算。ちなみに、大人の細胞の数は37兆なので、生まれたばかりの赤ちゃんが、5回細胞分裂すれば20歳の大人になってしまう。

1週に1回の細胞分裂で0歳の赤ちゃんへ
4年に1回の細胞分裂で20歳の大人へ

2兆×2の5乗 > 37兆
→20歳の大人まで5回の細胞分裂が必要

オリンピックW杯の開催頻度の分裂だけで、赤ちゃんが大人になってしまうなんて、、やっぱり生命って神秘的。もちろん生物学としての正しさは置いといて、細胞の量を数学的に把握するための便宜的な計算というだけだけど。。

ということで、この神秘的な生物進化について、「宗教」デザイン」「美」という側面から考えてみるのもいいのでは?という話。

物覚えが悪く、まったく進化してくれない息子

ヒトの細胞の数え方は思ったより適当

ヒトの細胞の数が37兆個と言ったけど、ほんの10年前までは60兆と言われていたという。では、60兆という数値は何を根拠に算出したか?

計算はとっても簡単。ヒトの平均体重60kg、細胞ひとつの平均重量1ng、よってヒトの細胞総数は60兆個、という単純なもの。

60k(10^3)÷ 1n(10^−9)=60兆(10^12)
^はべき乗

想像以上にざっくりした概算値。。iPS細胞とか、ゲノム解析とか、mRNAワクチンとか、最先端の生命科学分野だと思っていたのに、ヒトの細胞の数が10年前までこんな軽い感じで決まっていたんだ、という驚き。

宗教|進化論はいかに進化したか

ダーウィンの『種の起源』は『神学書』

科学と宗教の対立進化論と創造論は水と油。『種の起源』が出版されてから160年経った今でも、対立は続いているので、『種の起源』=『神学書』のはずがない。しかし、これが最大の誤解だと、著者はいう。

生物は神によってつくられた
でも、生物は進化もする

これが『種の起源』での主張。なので、当時キリスト教会からも支持され、『神学書』として扱われていた。《種の起源=進化論》ではない。だけど、《種の起源≠進化論》でもない。どこが「=」で、どこが「≠」なのか?そこを丹念に整理しているのが、この本の最大の見どころ。

「進化」は「変化」であって、「進歩」ではない

もうひとつの大きな誤解がこれ。ダーウィンの言う「進化」とは「変化」することであって、「良くなる」「優れる」という意味は含まれない。この誤解がいつまで経っても無くならないので、優生思想もなくならない。

ちなみに、羽が発達して〜、とか、しっぽが退化して〜、という「発達」「退化」はともに「変化」なので「進化」に含まれる。「進歩」の対義が「退化」ではなく、「発達」の対義が「退化」となる。

Wikipedia|種の起源に掲載された樹形図


デザイン|進化思考

生物進化を手本にした10年に1つのデザイン名著

生物の進化は、DNAのコピーエラーによる「変異」と、自然選択による「適応」を何世代も繰り返して起こるもの。そして、これはデザイン分野にも当てはまるのではないか?というのが著者の主張。

大胆な発想が「変異」となり、そのアイデアを吟味することで「適応」し、その葛藤的な往復運動が思考を高めていく。

厳密な生物学の話ではなく、生物進化のイメージを参照すると、デザイン思考の助けになるのでは?というくらいの軽い感じで。

進化思考| 太刀川 英輔


変異(HOW):偶発性を起点にした9つの発想

生物の変異のパターンを参考に、「欠失」「融合」「交換」「擬態」「増殖」など、9つのパターンで、大胆な発想の掴み取る。

進化思考| 太刀川 英輔


適応(WHY):自然選択を起点にした4つのリサーチ

過去と未来、内部と外部、という2つの指標から、内に掘り下げる「解剖」、周囲との関係を考える「生態」、過去の文脈を探る「系統」、未来を想像する「予測」の4つに整理する。

進化思考| 太刀川 英輔


美|進化を超える進化

人間は生物学的な人類を超えて超人類になる

進化を超えて超人類になる要素は4つ。「火」「言葉」「美」「時間」。特筆すべきは「」が含まれるところ。

美を所有したい欲求が世界をつなぐ

美意識はモノだけでなく、振る舞いにも影響を及ぼす。人間の行動が集団によって強化され、文化が醸成される。文化の交易が、宝物などの経済圏を生み世界をつなぐ。シルクロードのように。

自然界と人間界を分ける「建築」

人間は「建築」をつくり、危険な自然界と境界をつくり、自然を支配する存在となる。その究極系が「都市」である。美を創造し、自然を征服したいという人間の衝動が最大スケールで表現されたもの。それが「都市」である。

地球の存続すら危うい今、未来の人類に対し「良き祖先であれ」とする本書のメッセージは、とても印象的。

都市の風景と初日の出


関連記事

映画|歴史、宗教、人種、経済、政治、科学技術、環境

本|生命

旅|アート、食、歴史


この記事が参加している募集

人生を変えた一冊

ノンフィクションが好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?