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結局、初音ミクはDTMを殺したのか。米津玄師の紅白出場を踏まえて。

 2019/1/6加筆修正

 DTMというのはデスクトップミュージックの略で、歴史は古く80年代ごろから、家庭向けコンピュータを利用して音楽を作る、鳴らすという高価な遊びとして、発展してきました。

 あくまでひっそりと楽しまれるもの、コンピュータの性能、ソフトの性能も低く、個人的な範疇での趣味でした。
 もちろんDTMからプロになる人もいたにせよ、なんだかんだ2000年前半くらいまでは、メインの音楽シーンとは良くも悪くも外れた流れの中にあったはずです。なんだかんだ生バンド主義がありましたし。

 打ち込み系J-POPの筆頭である小室さんや浅倉さんはどメジャーなんで、日本の音楽はそもそもDTMを受け入れる素養があったのかもしれません。ただし、この二人のプロダクションは大規模なものですが。

 しかし、10年ほど前、初音ミクの登場によって、DTMの扱いは大きく変わり、良くも悪くも脚光を浴びるようになりました。数年前には世界規模でEDMというコンピュータを利用して作られるポップミュージックが流行し、現時点だとやや落ちついて根付いた、という流れの中にあります。


 僕自身、そこまでボカロに詳しいわけではないアラサーですが、ここ数年から2019年までのDTM(あるいはパソコンを利用した音楽制作)を巡る状況はざっくりとこんな感じです。

犯人は初音ミクか?

 今でこそですが、発表当初はいろいろありましたね。音声合成にオタク向けの絵を乗せるなんて安直、とかすぐ廃れるとか、グーグルから検索はじかれてる!とか・・・すべて遠い過去ですね。

初音ミクは音楽業界をひっくり返す!と息巻く人が嘲笑されたりもしました。

しかし、今こそ検証すべきは、

本当に初音ミクがDTMを殺したのか?

ということです。

 2010前後頃でしょうか、記憶曖昧ですがブームが落ち着いて、初音ミクがDTMを殺したというようなことがネットで言われていた時期がありました。

 しかし、DTMを巡る変化は、国内では初音ミクの影響はそれなりにあるにせよ、結果的には音楽そのものを巡る状況が大きく変わったから、という風に考えるのが現実的だと思います。

ボカロPの頂点

 このタイミングでこの記事を書いたのは、なにより米津玄師が紅白に出たからです。紅白全部は見れてないんですが、米津玄師とサザンの勝手にシンドバッドが一番よかったですね、個人的に。

 米津さんは、ハチという名でボカロPをやっていて、そこから個人名義での活動をスタートして今に至るのですが、一応ボカロPを引退宣言はしてないですよね?
 引退していない以上、実質的に現役ボカロPが紅白に出たわけで、これをどう捉えるか、なんですよ。


 ボカロP、ボカロ文化の勝利と捉えるか、そもそもメジャーを背負える才能がたまたまボカロをやっていただけ、と悲観的に捉えるか。そもそも勝ち負けで捉えるもんじゃないですが。

 今、この状況の中で、初音ミクはDTMを殺したと言っていた人達の意見を聴いてみたいですね。

米津玄師がトドメをさした?

 両方の側面があるのでしょうね。つまり、音楽を創る、ということからすれば、もはや手段とか方法論に垣根なんてなくなったのだろうと思います。それぐらいDTM的手法、ボカロが普通の存在になった。

だって、もう米津玄師がメインストリームなんだもの。

 10数年以上前だと、バンドサウンドにシンセが乗ってるとオシャレ!新しい!みたいな感じでしたけど、いまさらそんなのアタリマエになってますしね。
 打ち込み系とバンド系みたいな区別も不要になって、両方出来ないと・・・という感じでもあります。


 なので、初音ミクがDTMを半殺しにして、米津玄師がトドメをさしたということでいいのかなと思います。

もう少し、穏やかに言うと、初音ミクが壁を壊して、その穴から入ってきた米津玄師が世界を広げた、というか。

むしろ良かった?

 少なくとも、機材オタクやシンセオタクがひっそりと楽しむようなものではなくなってはしまいました。
 今の音楽製作のあり方とDTMでの製作の仕方には実質的に垣根がありませんし、そうした音楽がもはやメインストリームですので。

 少年少女達のモノになってしまったことに、オジサン達はなかなか納得できないものです。しかし、そのくらい技術は進歩したし、時代も変わってしまった。
 楽器の習得は大変ですので、気軽に音楽を作って楽しむには、DTMはまぁ楽器よりは若干ラクかなと思うので、今後も広まってほしいですけどね。(自分のサイトのオトトミミでも、そういう視点を持って運営していきたいものです)


 僕自身はそうしたオジサン達が培ってきたDTM文化とボカロ文化の隆盛のハザマを体験できた世代かなと思います。
 DTMは古い歴史を持っているので、今では使えないものもあるかもしれませんが、それらは過去においてきて、いま利用できるものだけ次の世代に継承していけばいいんじゃないかなと。

 浅くボカロを見てきた人間ですら感動的だったのに、ボカロを見て聴いて育ってきた人達はもう爆発してるんじゃないですかね。

2019/1/11追伸 ダブルラリアットが来月で10周年ということにビビッた(-o-;)

文: ミウラ義幸

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