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Vol.28 企業の倒産からは学ぶことが多い【2010年 JALの例】

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【倒産年月】2010.1
【社名】 (株)日本航空インターナショナル
【業種】旅客運送、貨物事業
【負債額】1兆5279億円
【倒産形態】会社更生法

JALの倒産から10年あまり・・・早いものだ

個人的には、JALの倒産は寝耳に水な衝撃的なニュースであった。「社会インフラである航空業界?しかも2大大手のひとつが?」∑(゚Д゚)
時が経ち徐々に記憶が薄れてきたものの、メディアでJALの実体が洗いざらい暴露され、その闇が明るみ出るたびにボロクソに叩かれていたことを記憶している。

経済を勉強するようになり企業の倒産問題についても学びはじめた中で、JALの倒産についても触れる機会があったのだが、根の深い問題が当時は山積し、なるべくしてなった倒産であったと改めて納得しました。

倒産は「収入」「支出」、収支バランスが崩れることで起こりますが、JALの場合には異常なほどの「高コスト体質」が根本要因となりました。

倒産する2年前に起きたリーマンショックで売上がガクッと落ちたところで従来からの高コストが重くのしかかり、その後は体質改善を図るも追い付かず自滅するような形で倒産に至ったのである。

「高コスト体質」はJALの闇

では、なぜその体質が出来上がってしまったのか?
説明していこう!

■「官僚的体質」から抜け出せなかった

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背景を説明します。
戦後、日本の航空機はGHQによってすべて運航停止されていたが、1950年に解除され1951年に政府主導により半官半民の体制で「日本航空株式会社」が設立されました。
それから1985年に民営化推薦政策により日本航空も1987年に完全民営化されたのですが、その後も官僚出身者が残り続けたため、官僚体質が変わることがなかったのです。

官僚体質のデメリットは以下のようなものだ!

【先例踏襲が第一】
  画一的なレールを好み規則を疑わない
【形式的に則る】
  新しいアイデアやイノベーションを必要としない
【創意工夫の欠如】
  マニュアルを重視し変化に対し臆病である
【派閥意識が強い】
  権力争いし互いに協力し合わない
【縄張り意識が強い】
  権限や利害など既得権益にこだわる
【地位や権利の利用】
  高圧的で命令には絶対に従わせる

一言で「創造性のないプライド高い臆病者」

といったところであろうか。

競争原理が働く民間であれば結果に対し責任をともなう事が多いので、結果がでなければ減給や降格、最悪クビなどがあり得るが、「官僚的体質」は責任をあいまいにする事なかれ主義であるため、画一的かつ覚悟のない中途半端な経営になりがちである。
言い過ぎかも知れないが、世間一般的なイメージもそんな感じであろう!

一方で官僚的体質の良い面もあるのだろうが、個人的には主だったメリットを思い浮かばない。百害あって一利なしです。

■無謀かつ無策な放漫経営

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JALが行っていた事業政策です。

・無謀な事業の多角化を進めていた
 (ホテル事業、教育事業、IT事業、レストラン事業、出版事業など)
・計画性なくジャンボ機を大量購入していた
・赤字路線の就航など政府からの干渉が続いていた

高度経済成長期やバブル期のイケイケな時代においては需要も伸び盛りなので上記のような展開は正当性があります。しかし景気が悪くなりだし需要が収束し始めると、拡張した事業展開が仇となり、コスト負担が重くなり始めるため徐々に経営を圧迫していきます。

こうした場合、事業をシュリンクし最適化する必要があるのだが、「労使との対立」「元来からのやり切れない体質」「政府からの干渉」が要因となりすべてが中途半端に終わり、JALは抜本的な改革が進められなかったのである。

「政府からの干渉」・・・闇深い一面ですね(~_~;)

話は変わるが、JALは飛行の安全性を守るため多額の資金を機材整備に費やしていたそうである。「安全の担保=資金」という発想である。いかにお金をかけないで安全を担保するかが企業としてのウデの見せ所なのだが・・・お金をかけることが必ずしも安全性を担保できる事につながらないでしょうし・・・当時は相当に思考停止していたようである。

■職員間で相互不信を強めていた

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労働組合との対立が激化!

JALは労働組合の力が強く、しばしば経営幹部と対立していました。幹部はエリート意識が強く、現場を知らないのに現場を見下し、逆に社員の方は「現場を知らない奴らのいう事なんか信用できるか!」鼻息荒く対立を深め相互不信に陥っていたのです。

また、JALでは予算を使い切る風習(?何それ的な不思議な風習)があり部署間で予算取りの競争があったことから、同じ会社内でも幹部同士もまた気軽に話せるような環境ではなかったと言います。

倒産すればそれまで仲が悪くても、まとまりそうなものである。しかし倒産後は、お互いに責任を擦り付け合うかたちで相互不信が顕在化し、より対立を深めてしまったのである。

◼️利益を出してはいけない企業風潮

前述したとおり、JALは労使との対立が顕著でした。利益が出れば、当然のごとく労使がつけ上がり賃上げを要求してきます。また、実質上のフィクサーである政府からも路線拡張の要求が強くなるので、そうした要求を撥ねつけるためにも、JALは利益を出してはいけない企業であるという認識が社内ではびこっていたのです。

いろいろ問題が出るわ出るわで可哀そうになってきたので、ここら辺で勘弁しときます(´;ω;`)

■まとめ

・JALの倒産理由
 【根本的要因】
   高コスト体質
 【間接的要因】
   ①官僚的体質
   ②事業の多角化
   ③ずさんな事業運営
   ④労使との対立
   ⑤職員間の相互不信
   ⑥政府からの干渉

今回はJALの倒産例をピックアップしてみたが、参考になったであろうか?

ご存知な方も多いだろうが、JAL再建には私が敬愛する京セラ創業者の稲盛和夫さんが携わりました。わずか1年で1800億円の営業利益を上げ、2012年には再上場を果たし、世界で最も高収益な航空会社となりその再建スピードは世界の度肝を抜いたのです!

再建のメインは「社員の意識」

バラバラだった社員の心を一つにまとめ上げることで再建を果たしたのである。その共通意識はJALフィロソフィーと呼ばれ現在も絶えることなく語り継がれています。

シンプルであるが強く心を惹きつけるフレーズが並び、他業種であっても引用できる内容です。是非皆さんも一度参照してみて下さい。

JALフィロソフィー・企業理念
http://www.jal.com/ja/outline/conduct.html

では、また次回 ('ω')ノ


引用文献:JALの奇跡「稲盛和夫の善き思いがもたらしたもの」
     大田嘉仁 致知出版社

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