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キャラクターデザインと現代アート。“好き”をとことん追求して行き着いた2つのものづくり

こんにちは!ミクシィ デザイン戦略室 中川です。
ミクシィグループのデザイナー組織「mixi design」のことをもっと多くの人に知ってもらいたいという想いから、mixi designの広報を担当することになりました。今後このアカウントを通じて様々な情報を発信していけるよう頑張りたいと思っています!

mixi designでは、様々な技術を持ったデザイナーが、幅広い分野のサービスで活躍しています。そんなデザイナーひとりひとりの個性にクローズアップしていくことでmixi designのリアルな姿を伝えられるよう、インタビュー記事を今後お届けしていきたいと思います。

今回インタビューの第一回目には、「モンスターストライク」のキャラクターアートを担当するモンスト事業本部デザイン室アートグループのマネージャー、平松佳和に話を聞いてきました。
アートグループは、モンストのキャラクターを生み出すチーム。平松はそのチームを率いるグループマネージャーをする一方で、ギャラリーに所属する現代美術家としても活躍しています。
そんなパラレルキャリアを歩んでいる平松に、これまでの経緯やモンストのキャラクターデザインと現代アート、それぞれのものづくりについて聞いてみました。

キャラクターデザインチームを率いる

——平松さんの業務について詳しく教えてください

まず、モンスト事業本部デザイン室アートグループは「モンスターストライク」に登場する全てのキャラクターのデザインからイラストの完成までの工程を担当しているチームです。

具体的な業務の流れとしてはまず、ゲームの企画をするゲーム運営部から僕たちのチームに「新しいゲーム内イベントを企画したので、イベントに登場させるキャラクターを考えて制作してください」といった依頼を受けるところからスタートします。
その時点では、例えば「哲学」をモチーフにしましょう、という風に大枠での概念のみを添えて依頼をされることが多いのですが、その概念をもとにメンバー皆でブレストしてアイデアを提案し合いながら設定書*を制作します。

*設定書:キャラクターの性格や特徴・服装イメージ・ポーズなど、キャラクターのストーリー設定から具体的にイラストを起こすために必要な要素を詰めて記載をしたもの

設定書が固まったら、外部制作パートナーも含めたイラスト制作担当者とミーティングをしてイラストの制作を進めてもらい、ラフ画・線画・彩色・仕上げという工程を経て完成させます。設定書の段階で固めたキャラクターコンセプトからブレずに、より良いイラストにするため、完成ギリギリまでチームの皆で意見やアイデアを出しながら仕上げていきます。

キャラクターの他にもゲーム内の背景イラストの制作や、キャラクターグッズ・書籍・アニメ・リアルイベントなど、モンストIPから派生する様々なコンテンツで使用する制作物の監修なども行っています。

僕個人としては、マネージャーとして、チームメンバーや他部署とのコミュニケーションを行い、チームがやりたいことや、より良い物を作っていくことを実現するための”環境を整える”という役割も大きいように思います。

現代美術家としての顔

——平松さんは、現代美術家としても活動されているんですよね

はい。ギャラリーに所属して活動しています。最近の活動としては、今年の春にアートフェア東京という日本最大級の国際的なアート見本市にも出展させていただきました。また今年後半にも個展を開く予定もあり、今はそれに向けて作品を制作しているところですね。
学生時代、東京藝術大学の大学院で美術を学んでいたのですが、その時の先生にとても影響を受けて、卒業後から美術家としての活動を本格的に始めました。

学生時代の作品

個展の様子

——なるほど。大学院で芸術を学んで来られて、ミクシィに入社するまでどんな経緯があったのでしょうか?

北海道の教育大学と東京藝術大学の2つの大学院に行きました。卒業後は東京で3年間美術講師をしていたのですが、実家の父の体調が悪く、実家が営む北海道のラーメン屋を手伝いながら、高専とカルチャースクールで美術講師をしていました。

そんな働き方を3年ぐらい続けた頃に、東京の友達から「新しくゲーム会社を作るんだけど、イラスト描く人として来ない?」と誘いを受け、上京して前職の会社に入りました。その時もアナログで現代アートを描いていたのですが、デジタルでイラストを描く事やゲーム業界への興味があったのですぐに決めました。その後さらに友人からの縁があり2015年にミクシィへ入社したという流れですね。

”好き”をとことん追求した先に見つけた働き方

——絵はいつから描かれていたのですか?

自我が芽生えた時には描いていたと思います。外で遊ぶよりも絵を描くのが好きで、授業中も教科書とノートに絵を描いているような子供でした。

大学受験の時には進路に迷うこともありましたが、好きな絵を仕事にしたいという想いから、北海道の教育大学に行って美術教師を目指していました。その後、北海道の教育大学・東京藝術大学のそれぞれの大学院に進学しましたが、学部時代は油絵を制作していたのでそこから脱却したかったという理由もあるのですが、さらに何も隠さずいえば、個人制作をずっとやっていたいという気持ちが一番大きかったですね。つまり社会に出たくないっていう…(笑)
ただ、その根底には絵を描き続けるためには何をすればいいのか、という考え方がずっとありますね。

——ゲームも小さい頃からやっていたのですか?

ゲームも好きでしたね。小さい時に「ATARI」というファミコンよりも前のゲーム機が家にあったのですが、その頃からずっとやっていました。

今でもモンスターハンターや、ファイナルファンタジー、ダークソウルなどをプレイしています。もちろん、モンストも1ユーザーとしてかなりプレイしていますよ。仕事でモンストに関わり始めた当初はランク30だったのですが、そこから今はランク400を超えていて、運極*しているキャラは200体います。

*運極:同種類のモンスター同士を合成することで合成元モンスターの「ラック」が上がり、この「ラック」が上限値99に到達している状態を「運極」と言う。

パラレルな創作活動で得られる相乗効果

——現代アートでの活動がモンストのキャラクター制作に活きていることはありますか?

モンストのイラスト制作では、レイヤー構成・色の塗り方など詳細なレギュレーションを設けています。特に色の塗り方については、小さな画面であるスマホで表示された時の見え方を考慮してグラデーションを使用せず、基本的にベースカラー、1影、2影、ハイライトの4色(多くても5色)という限られた色数で描いています。

少ない色数で光源や立体感、奥行き感を演出するためには、キャラクターがどういう形状になっているのか、光が当たった時には影がこう出来る、などの立体把握を高い精度で行うことが必要で、彩色はモンストのキャラクターイラストを制作する上でも難しい工程の一つなのですが、そこはアナログで絵画をする事で得られる強みが発揮できていると思います。

——逆に、モンストのキャラクター制作が現代アート作品に活きていることはありますか?

大学院の時からずっと白黒表現の鉛筆画の制作をしていたのですが、モンストに関わってからは色に対する考え方が変わり、鮮やかな色で表現することに注力するようになりました。現在はアクリルや色鉛筆で描いています。

大学の頃に油絵を描いていた時にも色を使って表現していましたが、その時の作品には色が濁っているところがありました。今は鮮やかな色を使いつつも、バランスのとれた一体感のある色使いができるようになったんじゃないかと感じます。

モンストのイラスト制作で、色数を絞ってどこを目立たせるか、ということに向き合っていることが、自分の作品にも良い影響を生んでいると感じます。

鉛筆画の作品

アクリル・色鉛筆の作品

デザインでも『ユーザーサプライズファースト』

——最後に、平松さんにとって『良いデザイン』とはズバリどんなものだと思いますか?

ユーザーが「こうきたかっ!」と驚くものを作りだすことが『良いデザイン』をすることに当たるのかなぁと思います。

モンストのキャラクターデザインでも、構図やパースのつけ方、キャラ性などに、今までに誰も見たことのないような独自の表現をすることを大切にしています。
その他にも例えば、モンストには「坂本龍馬」と「おりょう」という歴史上の人物をモチーフにしたキャラがいるのですが、史実上夫婦だったという2つのキャラクターイラストを並べると、背中合わせのポーズを取ってお互いが持つ剣が合わさるようなイラストになっています。


このように関係性の強いキャラクター同士には、イラストに共通性を持たせたり、逆に、全く別の世界観を持ったキャラクター同士に共通した要素を盛り込んで、ユーザーが「あれ、このパーツ見たことある、これってあのキャラクターと同じじゃないか?」と発見してもらえるような仕掛けをしていたりもします。

ミクシィ全体で理念として掲げている『ユーザーサプライズファースト』を大切にして、チームの皆でデザインアイデアを出し合っていますね。

——幅広く話を聞かせてもらいありがとうございました!

小さな頃から好きだった事をとことん追求し続けて、プロフェッショナルとして活躍している平松。そんな作り手のひたむきな情熱がモンストの魅力を形作っているのだと思いました。
モンストのキャラクターデザインと現代美術家という2つの分野でものづくりをしていることで、相互の創作物に良い影響が生まれているという話も印象的で、新しい働き方、キャリアの築き方を提示してくれているように感じます。

引き続きmixi designのデザイナーを紹介して行きたいと思います。今後もご期待ください!