病院

病院を老人の遊園地にするな、と私も思っていた。ところが自分が老人になると心境に変化があった。病院にはなかなか捨てがたい魅力があるのだ。勤め人の時代は病院に時間を獲られることが嫌だった。ところが現役を引退し時間に余裕ができると、実に非効率的な病院システムにイライラするどころか、非日常的な病院の時間も悪くないと感じるのだ。逆にたっぷりある時間的余裕を読書やコーヒーで過ごすのが有意義だとさえ感じる。病院を訪れる様々な人を観察するのも面白い。今どきの大病院にはカフェの一つぐらいはあるから、軽食やスイーツも楽しめる。病院は老人のプライベートクラブのようなものだ。

そうか、現役時代には我を忘れて這いずり回っていたのだな。自分では何かしら達成感を持ちながら働いていたが、自己満足に陥っていただけだたのか。まぁ生活の為だと言い訳するが、実は社会の体制に流されただけだったのではないか。流されて、それが正しいと褒められ、お金も入るから、この道で正しいのだと走って来たに違いない。しかしながら、俗世間から少し外れてみると新たな世界が見えてきてしまう。社会も老人なんかに感心は無いので、私は勝手にいろいろと考えることができる。自分と言うものを日々取り戻し始める。時間感覚にも変化が出る。そういうことなのだ。

病院を遊びの場にするな、そういった批判が聞こえてくるような気がする。病院は病気を治す場で、お金もかかるのだから、さっさとやることやって帰りなさい、用もないのにウロウロする所ではない。その通りでありますが、治療はものの5分で、待ち時間が1時間以上あるからそうはいかないのですよ。待ち時間をイライラして過ごすより、別荘に来た気分で過ごすほうがよいでしょう。現役の忙しい方たちはいらいらしているようですが、それは体に悪いですよ。病院で病気になってしまっては元も子もないですよ。だから病院は遊びに行く所なんですよ。


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