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実践小説!!野宿&ヒッチハイクで九州一周6/6

パーティは何時まで続いていたのか分からないけれど、僕は弱いお酒を頑張って飲んだ事もあり、そうそうに寝てしまった。翌朝起きてみると、何人か荷造りを初めており、新たな旅に出て行く所だった。僕も荷造りを済ませ、オーナーにお礼を伝え、出発する事にした。出発の前にオーナーから君みたいなバックパッカーがよく泊まる事があるけど、「君のガッツもなかなか良かったよ。これからも気をつけて旅をしてね。」と言ってくれた。

 旅も終盤にかかっており、今日は船で、天草入りする工程だった。

 長崎市内のはずれから、船乗り場までの道をヒッチハイクした。 綺麗な長崎な町並みを楽しみながら、ゆっくりと歩きながら止まってくれる車を待った。

 一台のおばあちゃんが乗る車が止まってくれ、船乗り場の近くに住んでいるので、近くまで送ってくれる事になった。船の本数が少ないから、タイミングがあうと言いけどね〜と言いながら、短い道のりだったが、僕の体を心配してくれる優しいおばあちゃんだった。

 船乗り場についた頃には、ちょうど天草行きの船が出たところだったので、僕は2時間ほど次の船を待った。

 待っている間も、近くを散歩したり、船乗り場に併設してあるうどん屋さんで昼食をとった。

 天草行きの船に乗り込み、約1時間程度の船の旅を楽しんだ。旅も天草を渡りきれば、終了となる事を船に乗ってひしひしと感じていた。終わってしまう事への寂しさと、嬉しさの両方を感じていた。

 天草に入ってからは、天草のちゃんぽん屋を探した。ちゃんぽんは天草が源流という事を先ほどヒッチハイクしたおばあちゃんから聞いていたので、天草のちゃんぽんを食べてみたかったのだ。

 船を降りてから、町を歩き、開いているちゃんぽん屋を探して回った。途中、ウニ採りをしている夫婦と立ち話をし、聞いてみたが、日が悪かったのか、開いてるちゃんぽん屋は無いとの事で、ヒッチハイクを再開する事にした。

 今日は天草の中心部にある温泉を目的に決め、その近所でこの旅最後の野宿をする事にして居た。

 ヒッチハイクを初めてすぐに、二人の若いカップルが乗せてくれた。初めは、九州一周をしている事や、旅も最後に近づいている事を話すと爆笑していた。

 途中、天草の観光地となっている『おっぱい岩』にも案内してくれた。カップルや休みの日だったので、ドライブしながら、Facebookに上げるネタを探すためドライブをしている所との事だった。僕と一緒におっぱい岩の前で写真を撮り満足そうだった。

 「毎週、休みの日は二人でFacebookに上げるネタ探しドライブをしてるんですよ。行ったこと無い所に行くきっかけにもなるし、楽しいですよ」

 とカップルは言っていた。

 目的地の温泉まで、カップルは送ってくれ帰って行った。

 僕がお礼が言うと、むしろありがとうございましたと、今日は更

に面白いネタが出来ました。と嬉しそうだった。

 僕は目的の温泉に入り、この旅最後になるであろう宿泊先の公園を探した。

 温泉の近くには、大きな公園があり、海沿いで夕日も綺麗だった。 僕は、今日の宿を見つけ、一度コンビニで飲み物を買い、夕食を済ませ、今日の宿へ向かった。最後の宿は、芝生広場の上に屋根が付いている広いスペースだった。一日天気も良かった事もあり、芝生はまだ少し暖かさを保っており、海からの風も生暖かさがあり、寝心地は抜群だった。

 翌朝、外が明るくなって来るのと合わえて、僕も目を覚ました。 

 身支度を整え、最後の旅に出る事にした。最後の1日という達成感からか、寝心地の良い野宿からか、気分もよくやる気もみなぎっていた。

 今日は、残りの工程をすべて歩きで行くことを決めていた。

 約一ヶ月に渡った旅を振り返りながら、感じた事や考えた事をメモ帳に書きながら、歩いて反省をする事に決めていた。

 天草から、家まで途中の船を除くと約30キロ程度の道のりだった。僕は靴紐をキツく結び直して、歩きだした。快晴の天気の中、少しずつ歩いた。

 旅の初めは勇気がなくて、ヒッチハイクが出来なかった。ヒッチハイクは車が止まりやすい所でやるコツ。あまり遠くまでの目的地を書かないコツ。初めて出会った小汚い僕を泊めてくれた事。せっかくだからと近くの観光地を案内してくれた事。ご飯やコーヒーをごちそうになった事。これまでの旅を振り返った。

 旅の中で、出会う人出会う人すべてが、好奇心旺盛で、おもしろい人ばかりだった。ヒッチハイクの僕を乗せてくれるという事自体が、面白く好奇心旺盛な人と出会える事に繋がっていたのだと思う。

 小汚い格好でヒッチハイクをしている事でいろんな人が気にかけてくれた。道を逆に尋ねられて、地図をみて案内するとお礼と行って500円をくれたおばあちゃん。九州の人たちは、みんないい人ばかりだった。

 九州はどこに行っても素敵な所ばっかりだった。車で通りすぎるだけでは分からない、小さな町の面白い標識や風や空、それぞれに魅力があった。雨風をもろに受ける旅だからこそ感じられる風土の違いを知る事が出来た。

 

 天草から、僕の生まれ育った長島まで渡る最後の船に間に合った。船に乗る頃には辺りも夕暮れになっていた。

 夕日の中を船が割って走っていく姿に旅の最後を感じて、泣きそうになっていた。僕はデッキでずっと沈む夕日を見ていた。

 船が長島についてからは、泣きそうになる気持ちを切り替えて残りの約10キロの道のりを歩き出した。

 足の豆が潰れ、その潰れた所から新しい豆が出来ていた。足の痛みを楽しみながらも最後の道のりを歩いた。

 この旅を通して、色んな優しさに触れたのが僕の感情を一杯にさせていた。

 連絡先が分からない人がほとんどだけれど、この受けた恩を倍以上にして、これから僕と出会う人に返して行くことに決めた。

 1人から受けた恩を僕が二人に返していけば、世界はきっと良くなっていくはずだ。

 辺りも真っ暗になった頃、僕は家にたどり着いた。

 いつも見ていた家の近所の景色がいつもと違って見えた気がした。 

 家の庭にいる犬がすごく愛おしく見えた。

 両親は寝ており、僕は静かに部屋へと上がった。

 特に誰にも告げず出かけた僕の旅は終わりを告げようとしていた。 

 やっぱり思った事はやった方が良い。

 やる前に想像していた事とやってから気づくことには大きな違いがある。

 まずは思いついた事を、更に考えるんだ。そしてやるときには考えをストップするんだ。

やり始めて、もう戻れなくなったらまた考えたらいい。

 やる前はいいことを考えよう!

 やる直前は考えるな!

 やりだしたら考え抜け!

 僕は、使ってきたスケッチブックに、

 『九州一周達成/20日間/ヒッチハイク18台/野宿6回』

 と書き、真っ黒に日焼けした僕と、一緒に旅をしてきた道具達と共に、タイムセットをして写真を撮った。


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