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【FC29】 「民俗」って何? 神楽の笛の魅力

音楽の事を様々な角度から探求するトーク番組「フルートカフェ」へようこそ。生命の息吹を伝えるフルートの音色と共に、無意識の世界に広がる壮大な冒険へ一緒に参りましょう!

このシリーズはスタンドFMとYoutubeと両方で配信しています。

今日は民俗神楽と私が関わっている”江井神楽”の話をします。


民俗とは?

民俗の”俗”。俗世の俗です。民俗芸能とは民間の風俗・習慣・信仰に根ざして伝承されてきた芸能の事を言います。ところが、私が”みんぞくかぐら”をやります、と言うと、大体、”民族”の方を思い浮かべるようです(私も最初そうでした)実際、”民族神楽”と誤表記される事も多いですので、今度、ちょうど江井神楽のイベントをやるのですが、その前に一度 “民族”と”民俗”の違いを整理しておきたいと思います。

民俗と民族の違い

英語で言うとわかりやすくて、民族はEthinicity 民俗はFolkです。とはいえ、”神楽”をとってしまえば、違いは日本語でも一目瞭然なので、”神楽”がついた瞬間に”アレ?なんだったっけ?”となるのは面白いな、と思ったりもします。

民族とは?

民族(みんぞく、英語:Ethnicity)とは、言語・人種・文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団。大雑把に言うと、例えば、”日本全体”というようなイメージなので、私達日本人全員が共有する神楽は、少なくとも私は知らないし、おそらく存在しないので、”民族”神楽といった時、違和感があるはずなのですが、それだけ、”民俗芸能”の認知が低いのだろうと思います。

民俗芸能の魅力

民俗芸能は、土地土地に伝わる、その土地にしかないオリジナルの芸能。民俗神楽もその一種で、例えば、私の関わっている江井神楽も、隣の集落とは違う、オリジナルの旋律や舞があります。”そこにしかない音”と言うのが、猛烈に面白いと思って、取り組んでいるのですが、もちろん、100% 自然発生的にその土地で生まれ、発展したと言う訳ではなくて、例えば神楽で言えば、ルーツは伊勢神楽が伝わったもので、それが土地土地で変化していったものです。

御神楽と里神楽

宮中の御神楽に対して”里神楽”と呼ばれる事もあります。江井神楽も”里神楽”と言う事ができるのですが、私にとっての江井神楽の最大の魅力はその”民俗的”要素なので、私は民俗神楽と呼んでいます。今はグローバルの時代で、広い視野でたくさんの情報を得る事ができます。こういう時代だからこそ、その土地にしかない”民俗的”な視点も大切だとと感じています。どちらか一方ではなく、両方と言うのがポイントですね。

江井神楽の復興

江井神楽は約30年前に奉納されたのを最後に途絶えていたものが、2017年に復興し、私も笛の復興で関わっています。民俗神楽は、時代の流れの中で、職業音楽家が関わって独自の発展を遂げたものもあります。例えば、山形の黒川能がその代表です。

江井神楽の舞台は福島県南相馬市。復興した時に参加してくれた子ども達は東京電力による原発事故の影響で、北海道に避難していた子ども達も参加してくれて、避難先の北海道で太鼓を学んだと言う事で、復興後の江井神楽には北海道の太鼓が入ったりして、それはそれは格好良いものでした。

所が、その直後、パンデミックになり、お祭りもできない状況が数年続きました。その頃私は能楽師の一噌幸弘先生の元で能管を学んでいて、(今も稽古に通っています) 一噌先生がずっと江井神楽の事を気にかけてくださっていて、地域でお祭りが出来ないのであれば、自分達でやったら良いのでは、と提案してくださいました。

今ならタイミングも良いだろうと思って、企画したのですが、当時参加してくれていた高校生はもはや社会人になり、今は神楽に参加できない、との事。私の夫は獅子舞の舞手なので、とりあえず、笛と舞はなんとかなるのですが、それ以外は振り出しに戻ってしまいました。

新生・江井神楽

でも、転んでもただでは起きない、と言うのが私達音楽家の習性で、一噌先生のせっかくのご提案を無駄にしたくない、と言う気持ちもあって、先生にお願いして、江井神楽に能の手組みを加えた、新生・江井神楽を完成させ、ライブをする事にしました。

9月30日に、南相馬市の銘醸館にて、一噌幸弘先生をお迎えして、民俗神楽の笛の魅力をお届けするトーク&ライブを行います。今の時点では笛2本と舞という、究極にシンプルな形ですが、当日までに地元の方で参加しても良いよ!と言う方がいたら、何か増えるかもしれません。

復興における課題

民俗神楽はかつては、お祭りの時に集落全員が集まり、神楽を奉納する習慣がありしたが、そのためにほぼ強制的に神楽を練習させられていた状況もあり、100%やりたい人が集まってやっている状況でなかった事が、途絶えた一つの原因です。

復興させた時に決めた事は、”楽しそうだからやってみよう”と言う人以外は参加しない事。逆にやってみたい!と言う気持ちさえあれば、誰でも参加できる形にしようと決めました。江井神楽の伝統も継承しつつ、その中でどうやって”民俗”のカラーを出していくか。それは、その時その時参加する仲間で、その場で生み出しながら進めていく形で良いのでは、と考えています。

その一つの答えが、一噌先生との江井神楽です。これから状況により、色々なバリエーションが生まれると思いますが、まずは第一歩。いずれ、東京でも江井神楽祭を開催したいので、その時は是非遊びにいらしてください。

民俗神楽の魅力と笛の宇宙

9月30日福島県のイベントもどなたでも歓迎です。最寄り駅は常磐線 原ノ町駅。笛大好き人間は是非ご参加ください。

9月30日(土)19:00 Start
福島県 原ノ町市 銘醸館 二番蔵
出演:宝玉流一噌派神楽師 宝玉宮雪(ほうぎょくきゅうせつ)
能楽師 一噌流 笛方 一噌幸弘
予約¥3,000 当日¥3,500 学生¥2,000 小学生以下¥1,000
問い合わせ チームカノン 03-6427-9156


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