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うたうおばけ、いました

くどうれいんさんのエッセイ、
『うたうおばけ』を読んだ。


ずるい。
悔しい。
羨ましい。

その3言に尽きる本だった。


なにがそう思わせたかって、語彙力と表現力がもうおばけなのである。
それこそ、歌うように軽やかに言葉を操る、うたうおばけだと言っていいかもしれない。
(実際、うたうおばけはくどうれいんさんのお友だちのことなので、本人ではないのだが)


読んでいる時のわたしの頭の中は、

あ、わたしもその感情知ってる、
そう、知ってるけどまだその言葉にはできてなかっただけで、知ってるんだけど……

のオンパレードだった。

これが冒頭の通りずるくて悔しくてたまらないのである。


これまで自らその言葉を取り出すチャンスがあったのに、そのときスルーしてしまった自分が悔しく、そしてその気持ちを自ら言葉という形に昇華した事実がただただ羨ましかった。

そして、これからはただそこにあるだけの自分の気持ちや考えを、可能な限り近しいかたちで表現することができるようになりたい、とも思った。



とまあ、ここまでずるい・悔しい・羨ましいという稚拙な感想を披露してきたわけだが、羨ましいことを「羨ましい」とはっきり言える自分は、意外と悪くないなと思う。

自分の気持ちを拗らせずに素直に捉えられるようになった自分は、前より少し素敵な大人になれているような気がするから。




最後に。
うたうおばけにはひとつだけ迷惑していることがある。

あなたに出会ってからというもの、バナナを見るたびに「ビニニ……」とつぶやいてしまうようになった。
バナナをただバナナとして捉えていたかつての純粋なわたしを返してほしい。

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そして結局のところ、ほぼずるいと悔しいと羨ましいしか感想を言葉にしていないな。

このままだと、またおばけにボコボコにされてしまうかしら。

望むところだ。

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