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組織にはなぜ対話が必要なのか

「今まで通りのことを今まで通りに行っていれば将来は約束されている」
盤石なビジネスモデルと、効率的なビジネスプロセスを持った超優良企業であったとしても、こう言い切る事は難しいでしょう。なぜなら、環境は常に変化をしているばかりか、その変化がますます激しく、大きく、複雑なため予測が困難な時代になっているからです。

つまり、外部環境が変化しているにも関わらず、それほど変わらない日々の業務をこなしているだけだとすると、それは衰退の道を進んでいることを意味するのです。

「そんな事は言われなくてもわかっているし、もう聞き飽きたよ。けれど会社の現実を見ると、新規事業はいつも掛け声だけでうまく行ったためしがないし、イノベーションだのDXだのと新しい施策が投入されてもいつの間にかなかったことになっている。それどころか、今までならありえなかったようなつまらないミスが増えていたり、離職も増えてきているなかで、マネージャーへの圧が強まるばかり。若手は指示待ちばかりだし、経営者は言いっぱなしで何も実行していないじゃないか。こんな状態でまともな変革が起こせるなんて到底思えないんだよね。まぁ、すぐに転職をしようとまでは思わないけど、実は転職サイトにはそっと登録してるんだ。」

立場や会社規模に関わらず、このような閉塞感や無力感をいだきながら働いているビジネスパーソンは少なくないのではないでしょうか。
これらの現象について、一つ一つを見ていけば、当然様々な問題が見えてきくるでしょう。しかし、それらに対策を講じていったとしても、まるで「モグラ叩き」の様に次から次へと新たな問題が浮上し、モヤモヤが一向に晴れる気配を見せない、そんな組織が現在進行系で増え続けています。

なぜこの様になってしまうのか。紐解いていくと、根本には組織の最小単位である「人と人」の間に溝ができている様子が見えてきます。人と人とはそもそも自然とわかり合えるものではなく、認識の違い=分断があるのですが、これは放っておくとどんどん深まっていってしまうものです。

この分断にある意味で「橋をかける」ものが対話であり、様々な問題を解消に向かわせ、新たな価値創造に向かうための変革・変容に欠かせないものであると言えます。

対話(dialogue)は、単なる会話(conversation)や議論(discussion)・討論(debate)とも異なり、「対話参加者それぞれの現状に対する意味付けを確認し合い、その意味付けを更新していくことで、新たな未来を創造する取り組み」であると定義できます。
人の集合体である組織に対話を取りいれることは、変化する環境の中で、一人ひとりの意識や行動の変容を通じて、組織自らもそれに合わせて変化・進化していくために必要不可欠なものです。

しかし、この対話が有効に行われる文化を持った企業は極めて稀です。
なぜなら、冒頭の図にも示している通り、多くの組織には「対話」の機会や質に責任をもつ部門が存在しないことからも分かるのですが、組織運営のプロセスに組み込まれていない場合がほとんどであり、任意の活動でしかないからです。
更にこれを追撃するかのように、これまで「対話的なコミュニケーション」が偶発的に行われてきた飲食の機会や移動を共にするなどの「余白」が、リモートワークや様々な機会の自粛によって一気に奪い取られてしまったことにより、この対話の機会が一気になくなってしまったのです。

実際に、新たな施策を開始するスピードが鈍くなっていたり、組織として新たな取組を始めることが困難になっている組織も多くなってきています。これは、日本の多くの企業におけ「決済」の機能が、実は正規の会議の場ではなく、「タバコ部屋」に象徴されるような余白的なコミュニケ―ションの場や個別の「根回し」によって行われて来たところ、その機能がリモートワークでは担保できなかったことを意味しており、対話が奪われたことに起因する問題として捉えることができます。

以上のことから、今こそ「対話」の機会を組織内に構造的に取り込む必要があることはがご理解頂けたかと思います。

対話的な施策というといわゆる1on1をイメージしがちですが、1on1の問題については別の記事で指摘したとおりです。
1on1だけに頼らず、対話の機会を組み込むことを通じて、組織に創造性を取り戻すのに最適な手段の一つとして、私は「ストラクチャード・ダイアローグ」を提唱しています。

組織に絶え間ない進化をもたらすための対話について、また別の記事でも考えて行きたいと思います。

参考文献:「入門 組織開発」中村和彦 光文社新書

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