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組織が変わる「3つの対話」

■”変わる”とは?
あらゆる場面で変化が強く求められる時代ですが、組織に対する変化の要請もその質的な変化が見られます。従来型の生産性向上を目的とした組織から、知識創造が求められるようになるに従い、組織に求めらる変化も「いかにタイムリーに外部環境の変化を取り込み、新たな価値につなげられるか」という要請が強くなりました。

この「価値創造」を基軸とした組織の変化の形態としては、大きく3つの段階に分類できます。

一つ目が、外的な変化から学習し、それに適応していくキャッチアップ主体の変化です。こちらは比較的変化が緩やかで、必要に迫られた段階で中核能力を補強していけば事足りる場合に生じてきた変化であると言えるでしょう。3つの中では、外部の変化に対して最も鈍感であるとも言えます。

二つ目は、組織内の変化と外的な変化の絶え間ない相互作用による持続的成長モデルに基づいた変化です。こちらは外部環境の変化・成長のスピードが高まるにつれ、自らも変化・成長し続けることを前提とした「自己組織化能力」の獲得に至った組織に特有の変化と見ることができます。

そして三つ目に、「内部環境と外部環境」という2項対立の境界が曖昧となり、環境自体を取り込んだエコシステム的な変化と言えます。旧来の組織と外部との境界をシステム内で共有しているため、環境の変化の影響をダイレクトに受ける構造となるため、ある意味で外部の変化に最も敏感であり、それでも折れない相応の「しなやかさ」が求められると見ることができます。

今、多くの企業が、一つ目の変化、改善改良といったキャッチアップのみでは価値の発揮がしずらくなってきている事は言うまでもないでしょう。

またそれのみならず、オープンイノベーションや、外部リソースを取り込む形での「コミュニティ形成」や「エコシステム形成」として、この三つ目の変化が要請されている事も、多くの方にご納得頂けるのではないでしょうか。


■変化と対話
さて、いずれの分類にしろ、これらの変化に際して、伴う「痛み」を和らげ、むしろそれを建設的なきかっけとし、自らの望む方向に変化・成長を遂げるためには、組織はその「創造性」を大いに発揮する必要があります。

そして、組織が創造性を発揮するために不可欠なプロセスが「対話」なのです。

創造性と言うと一人の天才によるひらめきが神格化される向きもありますが、組織においては、創造の初期段階の、荒削りで新奇なアイデアを受け入れ「共に育む土壌」をマネジメントすることがなければ、価値へと転換する事ができません。

そしてこの「共に育む土壌」こそが対話の場であり、わざわざ時間をとってイベント的に行う方法のみならず、日常的・習慣的に行われる「文化」を獲得する事が、持続的な成長の源泉ともなるのです。


■3つの対話とは?
さて、この「対話」についても、組織においては以下の3つのパラダイムがあり、組織が真の意味で変化・進化を遂げ、DXやイノベーションを成功させるには、これらが三身一体で行われる必要があります。

①【自己認識】 自分との対話 「リフレクション 」(内省・振返り)
組織を構成するメンバーが各自に取り組む内省。外部に正解を求めるのではなく、自らの経験を振返り事で軸を見出し、未来につなげます。

②【心理的安全】 組織内での対話 「ダイアローグ」
組織を構成するメンバーがリフレクションを相互に開示しあい、そこにフィードバックを実践し合うことで、現在地を確認しながらチームや組織を進化へと向かわせます。

③【共創・構想】 社会との対話 「イノベーション」
組織内での充分な対話の文化を拡張した、顧客、得意先、取引先、外部関係者とのダイアローグが、イノベーションの原動力となります。

先の分類における第三段階のエコシステム的な成長を遂げた企業においては、この②と③との分類は不明確になると考えることもできますが、いずれにしろ、これらはどれかが独立して行われていても効果を発揮しづらいもので、各パラダイムを支える土壌が充分に育まれていることが、これからの組織開発には欠かせないものとなるのです。

これらの3つの対話を効果的に支える「仕組み」と「思考の型」として、私はストラクチャードダイアローグという概念を提唱しています。

質の高い対話が暗黙知を形式知化し、形式知の実践が新たな暗黙知を醸成する。この構造を理解し組織的に取り組むトリガーとなるのもまた対話の機会なのです。これを意図的に組織内にもたらす実働のなかで獲得してきた知見を、これからもnoteに綴って行きたいと思います。

参考文献:「知識創造経営のプリンシプル」野中郁次郎/紺野登 東洋経済新聞社

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